AUNJ WORKSHOP
日本産Cirrhilabrus 魚類の幼期
 

写真・説明:加藤昌一・平田智法・宮本育昌(50音順) 編集:余吾 豊

 クロヘリイトヒキベラ Cirrhilabrus cyanopleura (Bleeker, 1851) 
 担当:平田智法(四国西南部からの記録)



 
クロヘリイトヒキベラ Cirrhilabrus cyanopleura
(Bleeker, 1851)


本種の分布域は本州中部以南、生息水深は数m〜30mで個体数
は比較的多い。幼魚においても本属中ではイトヒキベラに次い
で観察する機会が多いものと思われる。
しかし、成魚幼魚共に色彩変異が多く、成魚には体側に黄斑を
持つものと持たないもの、その中間的なものがある。
また、幼魚から雌、雌から雄への色彩の変化もなだらかで区分
が難しい。明確な婚姻色は観察されていない。

○四国西南部のデータ
出現状況:繁殖行動の観察例が少なく、明確な産卵期は不明で
あるが、4〜8月頃と思われる。
幼魚は水深数mから30mのサンゴ域・死サンゴ域・転石帯・
礫域・ガレ場で観察された。
着底直後と思われる1.3cm TLの個体は6月から12月に、2cm
TLぐらいの個体は7〜2月に、3cm TLぐらいの個体は周年観
察された。
しばしばイトヒキベラ・ツキノワイトヒキベラ・クレナイイト
ヒキベラ・ピンテール・クジャクベラ・カミナリベラの幼魚と
一緒に観察された。

水中での色彩:2cm
TL以下の体色は一様に暗色で尾柄部の黒斑は確認しにくい。
八丈島での観察では確認可能。また、明るい環境ほど体色の暗
褐色が明るくなる傾向がある(加藤の観察による)
腹部の色彩は多くの場合、背側から観察することが多いため目
立たない。

水中写真での色彩:浅いところで撮影された個体の体色は褐色、
深いところの個体は赤色の傾向があった。
尾柄部の黒斑は小さい個体程大きく(体長比)、不明瞭な縁取
りを持つことがある。
この黒斑は4 cm TLぐらいの個体まで観察される。3cm TL
以下の個体ではこの黒斑中に淡緑色から淡青色の顆粒状斑が見
られる。
吻端は白色から黄色、または赤色。
虹彩は赤色であるが内側が黄色のことがある。
小型個体の尾鰭基部は青色の縁取りが見られ、腹部は淡色から
青灰色である。
体側には小斑の縦列があるが、点と点との間隔は小型個体ほど
狭く、2cm TL以下の個体では不明瞭な縦線になる。
3〜4cm TL以上の個体では、頭部・腹部を除く体側前半部が暗
緑色に黒ずむ(加藤・宮本の観察による)

類似した幼魚:小型の幼魚はイトヒキベラに似るが、本種の方
が体高が高くずんぐりしている。
また、体側の縦線は本種の方が目立たない。

左下や上中央の画像は、四国西南部で観察されるものに比べ、
サイズの割に縦線や尾柄の黒斑がはっきりしているように思い
ます。地域差があるのかもしれません。


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