AUNJ WORKSHOP
日本産 Cirrhilabrus 魚類の幼期
  

写真・説明:加藤昌一・平田智法・宮本育昌(50音順) 編集:余吾 豊

 ゴシキイトヒキベラ
Cirrhilabrus katherinae Randall, 1992
 担当:加藤昌一

ゴシキイトヒキベラ
Cirrhilabrus katherinae
Randall, 1992

本種の分布域は、日本では伊豆大島・三宅島・八丈島・小笠原・四国柏島(高知大学理学部標本:BASK 61787&61788:遠藤広光氏私信)・沖縄県水納島・久米島・石垣島・西表島。生息域は45m以浅の岩礁域で、稀種。
雄は背鰭および尻鰭には暗色帯があり、背部が緑色である事が特徴。
体側は褐色、腹部は白色。雌および幼魚の体背面は一様に明るい褐色、腹部は白っぽくその境界は明瞭。背鰭および尻鰭の暗色帯は無い。

○伊豆諸島八丈島のデーター
出現状況:幼魚は水深20〜30mの潮通しの良い斜面の岩礁域で観察された。
八丈島で多く見られるイトヒキベラ・ニシキイトヒキベラ・スジベラの幼魚などと混泳している。
3cm TL前後の個体は7〜9月、4cm TL以上の個体は10〜12月に観察された。
1〜5月には潜水観察をする範囲では幼魚・成魚共に確認されておらず、この期間どこに生息しているのかは不明である。
6月以降、突然、成魚が出現し、繁殖する。
観察例は少ないが、繁殖行動及び7月以降の幼魚の出現を考慮すると、繁殖時期は6〜8月頃と推測される。

水中での色彩:幼魚の尾柄部の黒斑は、小さく不明瞭ではあるが、確認は可能。
雌および幼魚の体高は、イトヒキベラ属の他種に比べて低い。背面の明るい褐色と白っぽい腹部の境界は、水中でも観察できる程に明瞭。
雄の背鰭および尻鰭の暗色帯は帯状には見えず、鰭全体が濃い暗色に見える。
体側背部の緑、中央の褐色、腹部側の淡色の3色が際立って目立つ。
婚姻色はこの特徴が明瞭になり、青白く輝いているように見える。

水中写真での色彩: 幼魚の尾柄部の黒斑はとても小さく、輪郭は縁取りがなく不鮮明で、4cm TL前後になると消失してしまう。
3cm TL以下では尻鰭の暗色帯はなく、3cm TLを越えるころから現れる。
吻端には小さな白斑があり、体背部の輪郭は黄色く縁取られる。
雄の特徴である背鰭および尻鰭の暗色帯は、通常では不鮮明で薄く、婚姻色では際立つ。

類似した幼魚:本種はイトヒキベラによく似るが、胸鰭基底部に鉤状の暗色斑があること、側面の明るい褐色と白っぽい腹部がはっきりと分かれる点で識別可能。



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