AUNJ WORKSHOP
日本産 Cirrhilabrus 魚類の幼期
 

写真・説明:加藤昌一・平田智法・宮本育昌(50音順) 編集:余吾 豊

 トモシビイトヒキベラ 
Cirrhilabrus melanomarginatus Randall and Shen, 1978
 担当:加藤昌一(八丈島からの記録)

トモシビイトヒキベラ Cirrhilabrus melanomarginatus
Randall and Shen, 1978


本種の分布域は、伊豆半島以南から西部太平洋。生息水深は20m以浅でやや稀。
雄の背鰭軟条部が鮮やかな朱色に見えることから、1995年八丈島産の標本に基いてトモシビイトヒキベラと和名が提唱された。
幼魚は頭部の黄色が際立ち、体側の水色縦帯が明瞭であることから、他のイトヒキベラとの識別は容易。
成魚は雌雄ともに体色は緑色を帯び、雌雄の区別も容易。婚姻色も明瞭。

○伊豆諸島八丈島のデーター
出現状況:八丈島では、インデックスで紹介した10種すべてが確認されている。
本種は水深20m以浅の岩礁域に周年生息。同水深ではニシキイトヒキベラとイトヒキベラが生息数において圧倒的に優占しており、前2種と比較して本種の個体数は少ない。
繁殖時期は7〜11月の高水温期と推測、婚姻色となった雄の求愛行動がしばしば観察されている。
幼魚は水深20m以浅、潮通しのない穏やかな場所に多く、岩礁域のくぼみや小さな亀裂に単独で生息。
2cm TLぐらいの個体は7月から9月、3cm TL以上の個体は10月、4〜6cm TLの雌のサイズは11〜12月に多く見られる。
6cm TL以上の個体は1〜6月までの水温の低い時期(16〜21℃、冷水塊シーズンを含む)に安定して見られ、同期間中 6cm TL以下の個体は見られなかった。

水中での色彩:3cm TL前後の体色は褐色。ニシキイトヒキベラやクロヘリイトヒキベラに比べて明るい。尾柄部の黒斑はそれほど目立たない。

水中写真での色彩: 3cm TL前後の小さい個体では尾柄部の黒斑が大きい。この黒斑は成長と共に小さくなり、5〜6cm TL前後になると消失する。
黒斑には縁取りはないが、体側の水色縦帯が黒斑に達して、縁取りのように見える事もある。
体側に6〜7本の水色縦帯。このうち、背面、中央、腹部側の3本の縦帯には規則正しく白斑が並ぶ。
水色縦帯は3cm TL以下の小さいステージほど明瞭で、そのために縦帯上にある白斑が見えにくい個体も見られる。
3cm TL以上の個体では水色縦帯が薄れ、縦帯上にある白斑が目立つようになる。その後成長と共に水色縦帯は更に薄れ、5〜6cm TLで消失。規則正しく並ぶ白斑は残る。
幼魚の特徴である頭部の黄色部は、成長と共に縮小。6cm TL以上の雌のステージでは、黄色部は吻部に限られる。

類似した幼魚:水深20m以浅に生息するイトヒキベラ・クロヘリイトヒキベラ・ニシキイトヒキベラの幼魚群に混入することなく、常に単独で見られる。
体色および生息環境の違い考慮すれば、識別は容易である。

※伊豆大島での出現は2例。うち1例(右画像)は、通常より小さいサイズで成魚の色彩に変化する途中と推定される(宮本の観察による)。


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