研究室の海から No.002/ Page 3

「ゼブラガニZebrida adamsii の単独生活と効率的な配偶者獲得」   
野崎龍彦(文・写真)

 ゼブラガニはラッパウニ、イイジマフクロウニ等、数種類のウニに外部寄生して単独で生活しています.その名のとおり体色は濃紫色と黄白色の縦縞模様で、ラッパウニの体色に特に合っています.カニはウニの棘を刈込み、幅1Bくらいの溝をつくりそのみぞの間に隠れています.このカニがどのようにしてオスとメスが出会うのか、またなぜ単独生活しているのかを研究しています.繁殖期になるとオスのカニが自分の乗っているウニを操作してメスの乗っているウニに近づき、乗り移って交接します.実際にどのようにウニを操作しているのか、またメスをどのように認識しているのかをしらべています.



「テンジクダイ類の繁殖生態」
奥田 昇(学術振興会特別研究員)(文・写真)

 テンジクダイ類の繁殖生態を研究しています。室手湾では沢山のテンジクダイ類が観察できます。テンジクダイ類の特徴はなんといっても、雄が卵を口内保育するという珍しい習性を持っていることです(下の写真はオオスジイシモチの産卵シーン)。今夏の繁殖シーズンは、この魚を注意深く観察してみてはいかがでしょう。雄の口内に卵を発見できるかもしれませんよ。
手前味噌ですが、近日中に海游舎から出版される「魚類の社会行動1」でテンジクダイ類の潜水調査にまつわるエピソードを綴った科学読み物を執筆しました。今から9年前、オオスジイシモチの潜水観察を行っていたときのこと、雄親が口の中で育てていた我が子を食べてしまうというショッキングな出来事に出くわしました。さて、雄親はなぜそのような行動をとったのでしょうか?その訳が知りたい貴方は今すぐ書店に走りましょう。



「ニジギンポの繁殖生態」
柴田淳也(文・写真)

 イソギンポ科ニジギンポ(Petroscirtes breviceps)は、温帯岩礁域に広く生息する魚です。この魚では、1繁殖期中に積極的に求愛する性が季節的に変わっていることがわかりました。4〜11月下旬までの繁殖期中のはじめから5月まで、そして9月から終わりまででは、雄が自ら積極的に雌を自分の巣に誘導するが、5月から9月は雌が、雄の誘導やその他何らかのアクションを受けることなしに、自ら積極的に雄の巣へ行き雄に受け入れてもらうために腹部を誇示する姿勢をとるということが観察されました。そして、求愛する性の季節的な変化が、ある時点における、繁殖できる状態にある雌の個体数とその時に巣を持つ雄が産卵を受け入れることのできる雌の数との比(実効性比)が季節的に変化するためではと示唆されました。



「イシヨウジCorythoichthys haematopterus の繁殖生態」
 曽我部篤(文・写真)
 
 イシヨウジは体長約13センチの細長い魚で、浅所の砂礫底にいます。ヨウジウオ科に属する本種は、同じ科の他の魚(タツノオトシゴなど)と同様に、オスが腹部にある育児嚢で抱卵するという珍しい卵保護様式を持っています。
 現在はこの魚を用いて繁殖生態学的な研究を行っており、イシヨウジの産卵時間に合わせて日の出とともに潜水調査をしています



「イチモンジハゼ(Trimma grammistes)の両方向性転換に関する研究」
 武田悟一(文・写真)

 私が研究しているのはイチモンジハゼという体長3cmほどの小さなハゼです(ガンガゼの針と大きさを比べてみてください)。このハゼはホンソメワケベラのように性転換をすることが知られているのですが、なんと、オスからメスにも、逆にメスからオスにも自由に性を変えることができるのです。なぜこのハゼがこのように自由に性を変えることができるのか、ということを明らかにしていきたいと思います。



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