2186:原
6月中旬に西表島に行ってきましたが、当地で見たヤジリハゼの雌雄差について疑問があります。
この時期、ハゼ類は繁殖期に入っていて、巣穴からペアで出ているもの、婚姻色を出しているもの、卵でお腹の大きいものなどが多数見られました。件のヤジリハゼも、単独で巣から出ているお腹の膨らんだ個体がいて、これはメスではないかと判断しました。一方、そのすぐ近くの穴に単独でいた個体は、お腹も膨らんでいないので、オスの可能性が高いのでは・・・・と推測しました。
ところが、後で撮影した画像を拡大してみると、メスと思われた個体は、第1背鰭の第1・第2棘が糸状に長く伸長していました。他方、もう1個体のほうは背鰭も小さめで、棘も伸長していません。ハゼに限らず、背鰭が大きかったり、棘が伸長するのは、オスに共通する性徴と思っていたのですが、このように逆転して性徴が現れるという
例は他にもあるのでしょうか?
それとも、メスと思ったのは、単に食い過ぎのオスを見間違えただけなのでしょうか?
ちなみにその個体の画像は以下にアップしてあります。
http://www.fishwatcher.jp/DIARY/2004/diarytop2004.htm
2189:原
> では、ビリンゴでは?原さん、調べてみませんか?僕は
> ちょっと忙しいです。時間を下さい。
ちょっくらインターネットで検索かけてみましたが、メスが強く婚姻色を出すこと、3〜4月ごろが産卵期で、オスが巣穴の中に産卵させた卵を孵化まで守ることぐらいしか分かりませんでした。
ウキゴリ属の中には、同じような生態のものが多いようですね。ジュズカケハゼのメスの婚姻色画像が掲載されていましたが、おそろしく派手で、何も知らなければオスだと思ってしまいそうですね。
以下の論文が閲覧できれば、面白いことが分かるかもしれません。
・道津善衛.1954.ビリンゴの生活史.魚類学雑誌 3巻p.133-138
・酒井光夫・後藤晃.1982.北海道の淡水魚に関する研究-I.ビリンゴ
Chaenogobius castaneus (O'SHAUGHNESSY)の産卵習性,成長及び分布.
北大水産学部研究彙報 33巻1号p9-23
そうすると、ヤジリハゼもメスのほうが求愛する可能性が高いっていうことなんでしょうかね。オスが巣穴で卵を守るという例は、ハゼ類では少なくないと思いますが、求愛する側が逆転するまでの理由にはなっていないような気がします。サビハゼも、かなり長い間オスが卵を守りますが、確かにメスが求愛らしき行動をとることもありますね。でも、婚姻色はオスだけに出るような気がしてるんですが・・・・。
2190:余吾
原さん、こんにちは。
う、う、う、レスが早いな。ご自分のBBSよりも早いぞ。
バタバタしているのですが、面白いから、つい乗ってしまう。
道津先生の文献は捜してみましょう。手に入ればお送りします。
酒井・後藤は持っていますのでお送りします。雌の求愛が盛んだと書いてあります。
以下、原さんが感じたとおりに、背鰭の長い方がメスとすればの話です。
雄が守るかどうかの話ではなくて、雌が一繁殖期に多回産卵をするかどうかが問題になりそうです。雄がふ化まで守っている期間と雌が次の卵を用意する期間はどちらが長いかの差が問題となると考えてみて下さい。
もし、雌が多回産卵をし、ふ化までが長く、雌の次回の産卵がそれより早い場合を考えてみましょう。雄が複数の卵群(クラッチ)をケアできれば、状況は違いますが、もし、一つのクラッチで雄が精一杯ならば、繁殖可能な個体はメスが多くなり、個体群中の実効性比は、雌に偏ります。
もう一点の問題は、好適な産卵巣が不足しており、一部の雄だけがその場所を確保できるとすると、雌が一回産卵でも、実効性比は雌に偏ります。産卵巣にあぶれる雄が出てくるからです。
サビハゼではどうでしょうか?ヤジリでは?
2194:原
平田さん、こんにちは。興味深い情報ありがとうございました。
> 1:沖縄のヤジリハゼは本土のものと違う。別種の可能性が高い。
> ヤジリハゼ Vanderhorstia lanceolata は和歌山県産の標本をもとに記
> 載された。
魚類写真資料データベース写真資料データベースにはたった5カットしか掲載されていないのですが、それにしても違いすぎますね。とくに西表産のものは本土産とインドネシア産との違いよりも、差が大きいように思えます。西表産のものは背びれは無地ですが、他は第1背鰭基部後半に2黒斑がありますね。
また第1背鰭全体に褐色の水玉模様がある個体もあります。西表で僕が見たヤジリと思わしき個体はすべて背鰭が無地でしたが、同じ西表産なのに水玉模様が入った個体の写真も報告されています。
僕は西表以外でヤジリハゼを見たこともありませんし、西表でもそうたくさんの個体を見たわけではないので、もうお手上げです。(笑)
> 3:両タイプとも属の再検討が必要。よって現在同属とされる他種と比較は
> 無理かも。
ヤツシハゼ属ではないかもしれないのですね。この属って、ヤツシハゼも地域変異や個体変異が多そうだし、なんだか怪しいですね。
> 西表産の標本があるそうですので、背鰭の雌雄差については確認してくださ
>るそうです。
背鰭の長いのがオスのほうだったら興ざめですね。ドキドキ・・・・。
> 高知県で私が撮影した本種2ペアのうち1ペアには個体間に背鰭の明確な差
> はありませんでしたが、もう1ペアの雄と思われる個体(腹部の膨らみにより
> 推定)は棘が糸状に伸長しているようでした。
メスではなくてオスのほうが伸長しているんですね。だとすると、僕としては西表のヤツは別種であってくれないと困るなぁ。(笑)
2199:瓜生
原さん、こんばんは。
サビハゼの雌雄差ですが、形態的には同じと思われますが、雌の第1背鰭の方が少し立派なような気もします。
ただ、婚姻色に雌雄差が出ます。
雄は顎の下が黒くなり、雌は胸鰭と尻鰭が黒くなります。
求愛時、体側誇示をするときは当然、雌の方が目立つはずです。
さらに、雌の熱烈求愛は他のハゼ類では少ないのではないでしょうか?
雄の卵保護は約20日間で雌の産卵周期については余吾さんからいただいた論文に「1月25日に最初の産卵が確認され、その後3月10日、4月20日にも産卵が観察された」とあります。
ただ、これは同一個体の話かは不明です。
2228:原
画像ストックから探し物をしていたところ、去年の10月にも西表でヤジリハゼを撮っていたことに気づきました。こちらは、同じ穴にいるのを撮っているので、まずペアに間違いありません。さっそく拡大して調べてみると、やはりお腹の膨れている個体の背鰭第1棘が伸びていました。
http://www.fishwatcher.jp/image/yajirihaze.jpg
こうなると、やはりメスのほうが背鰭が伸張しているというのことで間違いなさそうです。平田さんの撮られた本土産は、雌雄で逆となるとやはり別種の可能性は高まりますね。ぜひ、高知産の画像も見てみたいものです。
2230:平田
画像、拝見しました。
原さんの以前の画像や今回の画像、矢野さんや岩田さんのお話などを総合すると
西表産の「ヤジリ」は雌の背鰭棘が伸長する事で間違いないようですね。
私の高知産画像はペアをワンカットで撮影したものがありません。
ペアを組んでいた雌雄のカットを合わせて2ペア紹介します。
岩田さんとお話しいた時、この種はEilatia 属に分類されるべきではないか、と
おっしゃってました。高知で見られるこの属の未記載種は雄が伸長します。
ペアを組んでいた雌雄をそれぞれ撮影した画像を合わせたもので、2ペア分です。
yajiri_pr01 は全長5cm TLぐらいと思います。♂と思われる下の個体は背鰭をたたんでいますが、伸張した背鰭棘が確認出来ます。(矢印)
yajiri_pr02 は全長4cm TLぐらいと思います。第一背鰭鰭膜周辺部には透明域があるため棘が飛び出て見えますが、実際は出ていません。
♀と思われる上の個体は、近づいてきたヤツシハゼを威嚇しているため色彩が
鮮やかになっています。 平田智法