今年の4月から、久しぶりに南薩での調査を再開しました。
最初に訪れたのが、1980年で、その後、何度かの休止を挟みながら、すでに25年が経ちました。
主なフィールドは鹿児島県川辺郡坊津町です。僕が一番良く潜る荒所は「オキゴンベ」で詳しく書いています。荒所の海は、坊津町歴史資料館輝津館(きしんかん)の下にある入り江で、何時も波静かな浅い安全なところです。船も殆ど通らないし、釣り人も少なく、いつもシーンとして、落ち着けます。岩盤が張りだし、生け簀の鉄枠が沈んでおり、ウミヒルモが生えた砂底の所々にクロイトハゼのマウンドが見られます。
クロイトハゼのマウンド June 15, 2004
穏やかな海、油緑の森、海への楔となる岬、小砂利の浜辺、深い入り江、苔むした石垣、一直線の国道226号、西表島の川を連想させる嘉瀬川、優美な開聞岳、噴煙を静かに上げている硫黄島、茶畑の緑の連なり、おっとりとした人々とその穏やかな話しぶり、何度、訪れても心が開放されます。
頴娃町側から開聞岳を望む
加地佐川の河口。知覧町と頴娃町の境。
九州自動車道では八代ー人吉間の連続するトンネルが堪らないので、八代から国道を通ったり、水俣まで進んで、そこから大口市を経て、えびの、あるいは栗野辺りまで国道を走って、そこから高速に乗るようにしています。時には吹上浜を経由して枕崎から頴娃町を目指したりもします。人吉や栗野辺りの新緑の美しさも格別です。宗像から宿舎のある揖宿郡頴娃町までは約
400 km、ロードスターでは5時間もあればよいのですが、荷物のあるときはホンダ・ストリートという軽のバンで行くので9時間くらい掛かります。とにかく、上り坂ではまことに情けない走りなのです。
登板車線など走ったことは無かったのに・・・・・・・・・・。時速 90km で、5000 回転を越えるため燃費も相当に悪いのですよ。
丸木浜のある坊浦全景
坊津町は3つの入り江があり、南から、泊浦、坊浦、久志浦と繋がり、その北は笠沙町へと接しています。
東は枕崎市、知覧町、頴娃町を経て、指宿市へ繋がります。潮通しの良い沖の孤立礁、岸からエントリーの出来る岬沿いの緩やかな傾斜面、或いはタイドプールなど様々な海岸地形に恵まれ、ポイントは多く、その殆どが深い入り江に近いので、風によってポイントを変えることが可能です。
丸木浜のタイドプール
丸木浜の巨大タイドプール九州大学の宿泊所があるのが揖宿郡頴娃町(いぶすきぐん・えいちょう)水成川です。かねてより魚類研究の基地として内田恵太郎先生門下が夏を過ごしていた松ヶ浦や、平田さんなど鹿児島大学水産学部の面々が合宿をしていた塩屋などからも近いところです。
水成川。須之部荘のごく近くからの風景。なんとも、のどかです。
宿舎へ続く木立のトンネル。落ち着ける場所です。
九大の宿舎は、講師である須之部さんが開拓し、その後、病棟であった旧宿舎が取り壊された後、中園さんによって、同じ敷地内にあった旧社員寮が使われています。皆は須之部荘と呼んでいます。風呂がないのが欠点ですが、その他は部屋数も多く、部屋が板張りなので、湿気もそれほど気にならず、良いところです。現在、ここでは、講師の麻生さんと吉川さんが長期逗留してコウライトラギスの研究に励んでいます。そのことを少し紹介しましょう。
麻生さんはミスジリュウキュウスズメダイ属の社会構造と雌雄性、吉川さんは大西洋産ニシキベラ属のブルーヘッド・ラスの精子数を調べた方で、「魚類の社会行動2」でご存じの方もいるでしょう。
コウライトラギスのオス(左)とメス(右)。
生け簀枠にくくりつけたジャムのビン(右上)はミジンベニハゼ用に僕が取り付けたもの。
産卵前のメス。腹がはち切れそう。June 29, 2004
産卵直前。並んだ後、ダッシュして放卵、放精。
この時は雌雄の体色が同じになる。何故だろう?
放卵放精の直後
プラスティック・バッグを構え、産卵を待つ。
精子と卵を採集
採集完了
海面で精子を固定する麻生さん
(工作員と言った感じ。麻生さん、ごめんなさい)。
精子を濾過する装置(ポンプで吸引し、ミリポア・フィルターで精子を捕まえます)
濾過した後のフィルター(ローズ・ベンガルで染まっています)。
フィルターに漉された精子を計数する吉川さん(左)と卵を数える麻生さん(右)
精子や卵を数えてどうするのか?それは、吉川さんらにお聞きしましょう。僕もよく分からない。