AUNJ−BBS(No.103)の中で、浜崎宏美さんが「物語調ですので報告するのが恥ずかしいのですが…」とおっしゃていたコブシメの観察報告を、頼んで事務局に送ってもらいました。同時に、浜崎さんからは、「レポート調に彼らの行動を書き記すにはどうすればよいのですか?」、「私はこれからどんなことに注意を払って観察を続ければよいでしょうか?」というご質問をいただきました。事務局では、送っていただいた観察報告をもとに、この質問に対するアドバイスをさせていただきました。 このときのアドバイスは、他の会員の皆様方にも参考になるのではないかと思います。そこで、浜崎さんの了承を得て、彼女の観察報告と事務局からのアドバイスをここに掲載することにしました。 水中観察をされる時の参考にしていただければと思います。 浜崎さんには、次回はFIELD NOTE に挑戦していただきたいと思っています。楽しみにしています。 |
「コブシメ日記」 |
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浜崎宏美 |
さて、本日(4月1日)、志戸子で、ついに【コブシメ】を確認してきました! 以下、その状況つれづれのおとです。 私はいつもどおり「トトロ岩」まで来ると、ゆっくりと進路を変え そうこうするうちに、 そんな中、メスは黙黙と卵を産んでゆきました。 オスが精子の入ったカプセルを渡すチャンスは 自分のパートナーを保持するには、 がんばれハッちゃん! コブシメの興奮覚めやらず、以上の感じで思わず書き綴ってしまいました(笑) |
物語の場合、イメージを膨らませるために、わざとぼかした表現を使うことがありますよね。でも、観察報告の場合、状況をできるだけ正確に伝えることが大切になります。その際、観察対象である生き物の状態だけではなくて、舞台となる周りの状況も含めて伝える必要があります。それでは、そのためには、どのような点に注意して記録すればいいのでしょうか。送っていいただいた報告をもとに見てみましょう。 1)基本的な観察データ 日付、時間、水温、水深、透視度などの基本的な観察データは大切です。すぐにはその大切さが分かりにくいかもしれませんが、後でとても大切になってきます。ちなみに透視度と透明度は、測定する方向が違います。透視度は水平方向で測ります。同じポイントで潜る場合は、一度、目印になる岩やサンゴ間の距離を測っておくと、次からは簡単に測定できます。 2)サンゴの種類と分布様式 サンゴの種類はウスサザナミサンゴでしたね。それでは、分布はどんな感じでしたか。広い範囲に一様に拡がっていましたか、それとも局所的にかたまっていて、周りに比べて特別な場所といって感じでしたか。 3)コブシメのサイズ 一番大きなオスが約90センチだったんですよね。その他の個体については記録しませんでしたか。それでは、90センチ以下のオスはいつもあんな感じで繁殖できないのでしょうか。気になりますね。やはり、全個体のサイズを記録してみましょう。イカ類のサイズは、腕を除いた体の長さ(外套長)を測るのが一般的です。 4)オス・メスの位置関係 各個体の位置関係をもう少し詳しく知りたいです。それには、海底からの高さとか、個体間の距離などのデータが必要ですね。水中で簡単な絵を描いておくといいですね。 5)体色 攻撃するときにゼブラ模様になることと、メスが産卵の合間に黄色に体色を変化させることが書かれていましたが、それ以外には気が付きませんでしたか。例えば、攻撃の時と威嚇の時の違いとか、あるいは攻撃されて負けた時の体色とかに、何か変わった点はありませんでしたか。 6)地図 地図の書き方は、用途によっていろいろあります。ですから、まずは何を記録したいのか、考えてみてください。それが決まったら教えてください。それにあった方法をアドバイスしたいと思います。 7)写真とイラストの利用 最初に、全体の状況を伝えることが大切だと書きましたが、それを言葉だけで表現することはかなり大変だと思います。できれば写真やイラストを有効に使ってください。 8)疑問点や反省点を残しておく 報告の最後に、その時の観察で分かったこと、疑問に思ったこと、つぎに知りたいと思ったこと等を書いておけば、次回潜るときの参考になると思います。 |