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1.どこに誰が産み付けるのか?
石田さんの観察から出てきた結果は、
A.あるオスの産卵床に複数のクラッチがある場合、次の卵は
その中で一番新しいクラッチの隣に産み付けられる
B.クラッチは右回りになる場合が多い
まず、Aから考えていきましょうか。
レポートからだけでは分からない部分もあります。それは早朝
の観察が禁止されているために仕方がないことですが、次のよう
な点です。
イ.メスは毎日産むのか?そうでなければ、どれくらいの間隔
で産むのか?
ロ.1尾のオスの産卵床にある複数のクラッチは、何尾のメス
が産んだものだろうか?
ハ.メスは同じオスのところに通って卵を産み続けるのか?
ニ.メス達はどこにいるのか?
メスによって産み方が違うかも知れません。1つの産卵床にあ
る全てのクラッチが特定のメスだけのものという場合もあるかも
しれません。それこそ、右利き、左利きというような個体差があ
るのなら、とても難しくなります。
鹿児島県枕崎での幸田さんの研究を参考にすると、
→イ:2,3日に1回産む(水温、餌の量などで場所により変
わるかも知れません。しかし、毎日産むとは考えられません
→ロ:一つの産卵床で連日、クラッチが追加されていることから
2尾以上である。これはレポートと上の産卵間隔から明らか
です。
また、ある発育段階のクラッチは1尾のメスのものか?と
いう疑問もあります。しかし、産卵時間が短く、メス達はそ
の時間内に済ませてしまうので、ある朝に一つの産卵床に2
尾のメスが続けて産むということはないようです。メスが長
く留守をしていると、起き出してきた藻類食の魚に採食なわ
ばりの海藻は喰われてしまうのでしょう。
→ハ:決まっていない。あちこちのオスのところで産む
→ニ:オスは採食なわばりの中に産卵床を作る。メスは、別の場
所に採食なわばりを持っており、そこから移動して産卵する。
早朝、色んなオスのところを訪れ、自分の採食なわばりから
近いオスのところに行くとは限らない。
また、早朝、オスを訪問するメスを自分の産卵床へ誘導するた
めにオス達はなわばりから出て、メスを探すそうです。この時、
メスは何を手掛かりにオス(場所)を選ぶのでしょうね?
枕崎と富戸では、個体の密度がかなり違うようですが、先ず、
これらを富戸の海でも通用する前提としましょう。すると、複数の
メスの卵が新しいクラッチの側に産み付けられていると考えて良い
ですね。
では、新しいクラッチの隣というのは次に産み付けられる卵にと
り、どんな場所なのでしょうか?
さて、複数のクラッチがある場合、卵は一番新しいクラッチの隣
に産み付けられると言うのは、他の魚類でも知られています。当然、
右にしろ左にしろ、クラッチは円を描くはずです。新しいクラッチ
の隣に産み付けられる
・・・それは何故なのかと問うことは意味があるし、とても面白い
ことだろうと思います。僕自身、わくわくしながら考えています。
では、どう考えていくか?
先ず、「産む場所を決めているのはオスかメスか?」
それから、「何故その場所を選ぶのか?」ということでしょうね。
この2つの問いは深い関係を持っていると思います。次回に。
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