AUNJ-WORKSHOP


ワークショップ 2「紛らわしい魚達」

このコーナーは、みんなで作り上げていく新しいコーナー です。記事を書くのも
監修する人もみんなです。

 2−3.日本産 Iniistius 属魚類 01/27/03 開始

 
01/26/04 ヒラベラを更新


関連BBS: 1364,1366,1370-1373,1376-80,1382, 1509,1510
関連ページへのリンク


さて、Randall, J.E. and J.L.Earle (2002) の Review of Hawaiian razorfishes of the genus Iniistius (Perciformes: Labridae) を入手しました。これにより
日本産 Xyrichtys 魚類は大幅な改定が必要になりました。混乱を防ぐのと、これまでの経緯を残しておくために、改訂版を別にし、前のをそのまま残しておきます。

Review of Hawaiian razorfishes of the genus Iniistius (Perciformes: Labridae) の要約です。

 従来、インドー太平洋の Xyrichtys 属魚類をIniistius 属に変更する。大西洋或いは東太平洋に分布するベラ類で現在 Xyrichtys 属とされているものはそのままで属の変更はしない。ただし、Iniistius pavo はインド洋から東太平洋までにも分布しているが、これは例外となる。インドー太平洋の Novaculichthys woodiXyrichtys 属へ移行する。

ハワイ諸島に分布する Iniistius 属魚類は以下の5種である。
1.I. aneitensis  インドー太平洋に広く分布
2.I. baldwini   インドー太平洋に広く分布
3.I. pavo     インドー太平洋に広く分布
4.I. umbrilatus ハワイ諸島固有種
5.I. celebicus  西部太平洋、今回、ハワイ諸島から初記録

 さらに以下についても整理した。
 Hemipteronotus evides Jordan & Richardson は I. baldwini のシノニムであり、I. nigerI. pavo の黒化個体である。

備考
1.Randall et al. (1987) のXyrichtys sp. は Iniistius celebicus に同定。
2.Hoover (1993) の Xyrichtys pavo 成魚の写真は Iniistius celebicus
 誤同定である。
3.01/29/03
 Xyrichtys 属とIniistius 属とのもっとも明白な識別点は背鰭の起部の位置で、
Xyrichtys 属では眼の後端から背鰭起部までが眼の直径(眼径)よりも長く、
Iniistius 属では眼径よりも短い(眼径の半分程度)。
(注:要するに Iniistius 属は眼の近くから背鰭が始まる)

01/31/03 採集標本より3種の眼と背鰭起部の位置関係を示す

テンスモドキに書き込んだのが眼から背鰭起部までの距離(D)
眼径は赤い線で示す

A:テンス    壱岐箱崎     09/09/81 21.4 cm TL   ♀
B:ホシテンス  トカラ列島口之島 10/26/81 28.4 cm TL   ♀
C:テンスモドキ 三宅島伊ヶ谷   08/26/83 ca.12 cm TL 性は不明

 これに加えて、Iniistius 属では背鰭第2棘と第3棘の間隔が第3棘と第4棘の間隔よりも広いのに対し、Xyrichtys 属では等しいという識別点もあります。


番号、並び順は2−2(第1版)となるべく合わせていますが少し違います。

日本産Iniistius 属魚類

 1.Iniistius dea テンス
 2.Iniistius aneitensis ハゲヒラベラ 
 3.Iniistius geisha クロブチテンス 
 4.Iniistius pavo ホシテンスI. niger はシノニム) 
 5.Iniistius twistii ヒノマルテンス 
 6.Iniistius pentadactylus ヒラベラ 
 7.Iniistius spilonotus ? ホシヒラベラ 
 8.Iniistius verrens バラヒラベラ 
 9.Iniistius melanopus モンヒラベラ 
10.Iniistius celebicus 和名なし
 

 さらに以下のもの。便宜的に記号を付しています。

11. 不明種 Iniistius sp.1
12. 不明種 Iniistius sp.2
13. 不明種 Iniistius sp.3 
14. 不明種 Iniistius sp.4
15. 不明種 Iniistius sp.5
16. 不明種 Iniistius sp.6

 さらに、I. baldwini が分布している可能性が高い。ハゲヒラベラの項を参照して下さい。

投稿の際のお願い。
データは出来るだけ省かないようにお願いします。横15cm、72dpi を目安に願います。写真にお名前を入れることの可能な方は、例を参考に入れておいて下さい。
撮影場所と日付のない写真は学術的な価値がありません。大事にして下さいね。
写真だけでなく、行動の記録なども大歓迎です。例えば、採餌行動など。
 1.テンス Iniistius dea
   
関連BBS:1230,1231,1234,1249
   反田(2000)も参照して下さい

テンスー1

テンス稚魚
Masuda and Tanaka (1962) より引用

 この標本は、小湊の磯で、海藻が茂った浅場から小型曳き網で採集された
個体です。著者は「現時点ではテンスと考えられる」と書いています。

テンスー2 


 テンスの幼魚 石田根吉 11/16/97 
富戸・ヨコバマ 砂地 水深25m 水温19℃ 全長4cm 程
 

テンスー3 

テンスー3 平田智法 05/06/96 
柏島 水深35m 全長8cm (621-13)


 事務局より:反田(2000)の写真と繋がりますね。なにか海底に座って
いるような感じがします。腹鰭が黒いのがとても印象的です。背鰭第6棘の
下に黒斑があります。犬尾(1936)によれば、メスには必ずあり、オスには
持つものと持たないものが見られるそうです。

 2.ハゲヒラベラ Iniistius aneitensis
   
関連BBS:

ハゲヒラベラー1(精査を要す)


ハゲヒラベラー1 平田智法

平田さんのコメント:
背鰭軟条最前部下方に黒色斑がほとんどなく、検索に一致しません。
ハゲヒラベラではないかもしれません。ひょっとするとモンヒラベラ
の未成熟個体なのかもしれません。

・Randall & Earle (2002) の幼魚2個体(4.6,4.9cmSL) の写真と比較すると、
ハゲヒラベラー1の小型3個体(4-5cmTL) ではサイズが少し違うのですが、
背鰭第1棘がかなり長いです。これら3個体は、I. baldwini の幼魚とも似て
います。ただし、背鰭軟条部の眼状斑の有無で混乱します。
以下を参照して下さい。
Fish Base に登録されている I. aneitensis の画像
Fish Base に登録されている I. baldwini の画像

 
今後、平田さんのコメントとも併せて検討していきましょう。



03/04/03 ハゲヒラベラー1
上のシリーズ写真は、平田さんのコメントにもあるように疑問点のあるものでした。その後、Randall & Earle (2002) やShao (1986) 等の文献に当りさらに Randall 氏や Earle 氏との意見交換を行って検討すると、現時点ではシリーズとして繋ぐには時期尚早だと判断しました。以下に、バラバラにして並べ、平田さんのコメントを添えます。上の記事は当分、残しておきます。

・0513-06:4cm TL 水深40m 高知県大月町 11/27/1994 平田智法
テンス幼魚に酷似しますが、背鰭第1棘に明瞭な縞がある事、額が丸みを帯びる事、
体高がやや低いなどの点で異なります。Randall & Earle (2002) のI. baldwiniに似ています(平田)。
 テンス幼魚は腹鰭が黒いというのも識別点になります(余吾)。

・0410-08:4cm TL 水深20m 高知県大月町 09/26/1993 平田智法
0513-06と酷似しており、同種と考えています。しかし背鰭第1棘の縞や背鰭の眼状斑などに若干の相違があります(平田)。

・0470-02:5cm TL 水深26m 高知県大月町 06/26/1994 平田智法
全体的な印象では0410-08、0470-02から続くステージと思われます(平田)。
Randall 氏は、背鰭第1棘が長く、測線に沿って黒い点列が現れ始めていることから、I. baldwini と考えたいという慎重なご意見でした。 次の 0719-17 についても同じご意見です(余吾)。

・0719-17:8cm TL 水深25m 高知県大月町 08/24/1997 平田智法
ハゲヒラベラ I. aneitensisに良く似ていますが、背鰭軟条域下部に見られる黒色斑
がなく、それより前方の背鰭棘条域下部に黒色斑があります。これはI. baldwini と同じ位置です(平田)。

・0560-16:13cm TL 水深40m 高知県大月町 07/30/1995 平田智法
ハゲヒラベラ I. aneitensis I. baldwini に良く似ていますが、背鰭軟条域下部や
背鰭棘条域下部の黒色斑は共にありません。体側後半背部の測線に沿う小黒斑はI. baldwini にも見られます(平田)。
 Shao (1986) には I. aneitensis の雌雄成魚の写真が出ていますが、メスの体側後半の測線に沿って黒点列が認められます(余吾)。


10/20/03 更新
・1108-020  13 cm TL 愛媛県南宇和郡御荘町・水深18m・砂地
平田智法 10/05/03 

平田さんのコメント
モンヒラベラー1(1062-34)と撮影場所は同じですが、今回観察された個体はこれのみでした。1062-34と黒斑以外差異はありません。ハゲヒラベラ0560-16ともよく似ています。

モンヒラベラと紛らわしく、悩ませますね。(余吾)




 以上のように、ハゲヒラベラ I. aneitensisI. baldwini については今後、精査が必要です。幼魚に関しては、背鰭第1棘の長さが識別点になれば分かりやすいのですが、では、ハゲヒラベラの幼魚というのはどんな姿なのか?という謎が産まれます。以下のIniistius sp.3 辺りとも検討したいですね。
 また、I. baldwini の成魚とモンヒラベラI. melanopus とはかなり似ています。これも課題です。

ハゲヒラベラー2

ハゲヒラベラー2 余吾 豊 05/17/81
トカラ諸島 諏訪之瀬島 切石港 夜間に釣獲 18.2cm SL

 体色全体が暗い色をしています。諏訪之瀬島は火山島ですので砂が黒く、
その為ではないかなと思います。

ハゲヒラベラー3 

ハゲヒラベラー3 原 多加志 01/19/03
10cm TL 八重山郡竹富島 水深10m 礁池内の砂地

 
原さんのコメント:観察した場所は竹富島南のリーフの中。
一面が白い砂で、ところどころに小さなパッチリーフが点在する環境です。
観察されたのは一種類で、ハゲヒラベラに近いという印象を受けました。
個体数は結構多く、60分のダイビング中に数個体目撃しました。全長は大きい
もので10cm前後、小さいものは7〜8cmほどでした。奄美大島でも似たよう
な環境で、よく似たテンスが泳いでいたのをしばしば観察した覚えがあります。



Randall & Earle (2002)による行動のノート:オアフ島では3〜10尾ほどの成魚がまとまって生息し、メスはそれぞれ縄張りを持ち、これを1尾のオスが囲い込むなわばりを作っている。I. umbrilatus、I. baldwini、I. pavo も同じ。01/31/03

 3.クロブチテンス Iniistius geisha
   
関連BBS:
  ・Araga and Yoshino (1986) も参照
  ・情報が少ないのは生息水深が深いためでしょう。

 4.ホシテンス Iniistius pavo
   
関連BBS:1230,1231,1234,1249,1332,1366

ホシテンスー1


 ホシテンスー1 幼魚 石田根吉 10/28/00 
富戸・ヨコバマ 砂地 水深15m 水温22℃ 全長4cm程

ホシテンスー2


ホシテンスー2 平田智法

瓜生さんのコメント:幼魚は海底に巣を持っているらしく、いつもその付近に
居る。先に巣と思われる海底を手で覆ってしまうと、潜らずにいるので撮影が
楽である。

事務局より:反町(2000)は、ホシテンスやヒラベラの幼魚に比べてテンス
幼魚は海底に潜るより泳いで逃げる方が多いと述べていますが、幼期の定
着性や食性などによってこのような差違が見られるのかも知れませんね。

黒化個体(以前のクロテンス Iniistius niger
Randall & Earle (2002) により、クロテンスはホシテンスの黒化個体と
されています.
関連BBS:1267,1270-1272,1366,1367

ホシテンスー3


ホシテンスー3 府川哲生 09/05/01
勤崎(高知県幡多郡大月町柏島)水深37m
8cmTL、水温27.0度

・平田ほか(1986)、瀬能・府川(2001)も参照

ホシテンスー4

ホシテンスー4 山川 武 08/23/02
高知県幡多郡大月町柏島で釣り採集
BSKU 59594  約16 cm SL


高知大のクロテンスの記事も参照して下さい。



Randall & Earle (2002)による行動のノート:幼魚は、堅い海底基質の周辺、あるいは沈んでいる物体の周り等の砂地に単独で生活している。時折、堅い海底基質の上で摂餌するが、砂地から遠くへ離れることはない。成魚はI. celebicus 以外の仲間と同じく、それぞれになわばりを持つメス達をオスが囲い込んでいる。
01/31/03
 5.ヒノマルテンス Iniistius twistii
   関連BBS: 

ヒノマルテンスー1

ヒノマルテンスー1 平田智法 07/10/01
高知県沖の島 10cm TL  水深10m 砂地 

ヒノマルテンスー2

ヒノマルテンスー2 平田智法 11/07/99
 高知県大月町 22cm TL 水深13m 砂地 
 6.ヒラベラ Iniistius pentadactylus
   
関連BBS:1304-1307、1364
   Ishihara and Zama (1978)、反田(2000) も参照して下さい

 ヒラベラー1


ヒラベラー1 平田智法 09/23/02 
12cm TL 高知県大月町 水深4m 砂地 

・Myers (1999) のオスとメスの写真に照らすと、この個体はメスとみられる。
 オスには眼の後ろに鱗大の赤い斑紋が5個、並ぶ。02/04/03

ヒラベラー2 

ヒラベラー2 原 多加志 01/12/03
4cm TL 伊東市赤沢 水深10m 水温17℃
2枚とも同じ個体の写真です

原さんのコメント:体の後半部に小さな赤い斑点が見えるように思えますが、
とするとヒラベラ幼魚の可能性が高いのでしょうか? 

事務局より:体側後半の赤い点、眼の後ろの黒斑、腹部に走る斜めの細い縞
など、ヒラベラの特徴を示しているのではないかと思います。貴重な写真だと
感じます。

ヒラベラー3 01/26/04

ヒラベラー3 原 多加志 01/19/04 15時20分頃
20cm TL 奄美大島南部・嘉鉄 水深7m 水温22℃

 奄美でヒラベラ成魚と思われる個体を見たので画像添付します。
このポイントでは、ハゲヒラベラと思われる全長12〜15cmぐらいの個体は
よく見るのですが、目の後ろに斑点が並ぶこのタイプを見たのは今回が初めて
です。

 事務局より:Myers (1999) のオスとメスの写真に照らすと、この個体は
オスでしょう。ヒラベラー1も参照して下さい。


 7.ホシヒラベラ Iniistius spilonotus ?
   
関連BBS:1304
 ・極めて情報の少ない種です。情報をお寄せ下さい。
 

ホシヒラベラー1


ホシヒラベラー1 幼魚
Masuda and Tanaka (1962) より引用

 頭部に不思議な線が描いてあるでしょう。これは隆起縁が形成される途中で、
一部が半透明なのだと思います。実物を見ていないのではっきり言えませんが 

ホシヒラベラー2


ホシヒラベラー2 成魚 益田ほか(1984) より引用

・Randall & Earle (2002) は、Xyrichtys evides を Iniistius baldwini
  
のシノニムとし、益田ほか (1984) の図版207-I はIniistius spilonotus
  (Bleeker) か、または未記載種と考えています。

Fish Base に登録されているXyrichtys evides

 8.バラヒラベラ Iniistius verrens
   関連BBS:1230,1236,1306,1330
   関係文献:反田(2000) 、Yamakawa and Hiramatsu (1983)も参照

バラヒラベラー1


バラヒラベラー1 メス 瓜生知史 05/03/02
全長6cm 水深8m 伊東市赤沢

バラヒラベラー2


バラヒラベラー2 オス 瓜生知史 05/03/02
全長8cm 水深8m 伊東市赤沢

瓜生さんのコメント:繁殖期には10個体ほどの群れで砂地を移動。繁殖期以外は
5個体ほどの雌の群れを確認しています。

バラヒラベラー3


バラヒラベラー3 府川哲生 10/03/01
早川ビーチ(神奈川県小田原市早川)水深10m
7cmTL 水温25.0度
9.モンヒラベラ Iniistius melanopus
   
関連BBS:1304
・極めて情報が少ない種です

モンヒラベラー1

モンヒラベラー1 平田智法 11/17/02
15cm TL 愛媛県南宇和郡御荘町 水深18m 砂地(1062−34)

平田さんのコメント:モンヒラベラは2尾で観察され、もう一方の個体は全長
約10cmでした。写真は撮れませんでした。体側の模様は写真の個体と同じで
したが、臀鰭に斑紋がありませんでした。

追加コメント:背鰭前部の鰭膜のへこみ(欠刻)前後に黒い点があります。
これらと同様の黒点は、I. baldwini にも見られます。02/04/03

・臀鰭の斑紋はオスの二次性徴ではないかと考えられます。I. baldwini
ではオスの臀鰭に黒斑がでるそうです(Randall & Earle 、2002)

Fish Base に登録されている I. baldwini の画像 
Fish Base に登録されているX. melanopus
 背鰭中央(第7棘辺り)直下に黒斑があります。

10.和名無し Iniistius celebicus
   
関連BBS:

Iniistius celebicusー1

Iniistius celebicusー1
Randall & Earle (2002) より一部改変して引用

・Randall et al. (1997) のXyrichtys sp. (小笠原)はRandall & Earle
 (2002)により、本種と同定された。
・以下の13.不明種 Iniistius sp.2 と検討を要する。

・Myers (1991)にBleeker (1862) の線画が、Myers (1999) には水中写真
 が掲載されています。



Randall & Earle (2002) による行動のノート:幼魚は水深7.5-15m の海底に着底する。着底のピークは春。幼魚は同種で群れを作っている。成熟したメス達はなわばりを持たず、緩やかなまとまりの群れで摂餌している。オスはこのメスの群れに入ってきて求愛する。この時、オスの体はブルーで、体側後半部中央を走る濃色斑の上下に淡い色の縦帯が出ている。ペア産卵が観察され、放卵・放精の際、オスがメスの周りを回る行動が見られた。ハワイ産のIniistius 魚類の中では最も警戒心が強く、直ぐに砂に潜るか、逃げ去ってしまう。これまで、本種がハワイで報告されなかったのは、警戒心が強いことに加え、斑紋パターンが似ている I. umbrilatus に誤認されていたためだろう。01/31/03

Iniistius celebicusー2 02/27/03

Iniistius celebicusー2 平田智法 06/05/94
6.5 cm TL 高知県大月町 水深22m 砂地(0464-10)

・Randall 博士に写真を送り、同定していただきました。


11.不明種 Iniistius sp.1
(八丈島で確認されているもの)
   関連BBS:1234,1249,1319,1322

Iniistius sp.1-1  04/12/03


原崎 森 12/17/02
約25cm TL 八丈島 旧八重根港 水深 20m 広い砂地

原崎さんのコメント:
これが例の人面テンスと呼ばれているやつです。
なかなか寄らせてもらえなくて、この程度の写真が限界です。。。
実際に水中で見ると、もっと胸鰭周辺とお腹の辺りに大きな黒いシミみたいなものが目立ちます。顔の彫りももっと深く見えるのですが。



Iniistius sp.1-2  04/12/03


Iniistius sp.1-3  04/12/03


原崎 森 12/17/02
約4-5cm TL 八丈島 旧八重根港 水深 20m 広い砂地

原崎さんのコメント:
この2枚は、「人面テンス」の幼魚(若魚)だと思っているのですが、
いかがでしょうか?
よく同じサイズの子ばかり数十匹で群がりをつくり、餌を取っています。
追いかけると基本的には横に逃げて行き、単体を追い詰めるとやっと砂に潜ります。
たまにsp.1-1 のような成魚サイズの個体や、その中間サイズの個体など、
様々なサイズの子が一緒混じって餌を取っている事も多いので同種に見えました。
とにかく、八丈では一番多く見られるテンスです。

ちなみにナズマドというポイントのもっと深い場所(水深30mの砂地)でも、
この幼魚は見られます。
やはりすぐに砂に潜ることはせず、横に逃げて行きます。
追い詰めると胸鰭周辺の黒いシミが非常に濃くなり、砂に潜ります。

事務局より:
心待ちにしていた八丈からの情報が増えました。sp.1-1 は下のレグルスHPに
紹介されているものと同じで、オスの婚姻色が出たものではないかと考えます。
sp.1-2,3 は次のsp.2 とよく似ており、I. celebicus の疑いが濃いですね。
原崎さんの生態情報を加味すると、sp.-1 は I. celebicus なのかな?
今年の産卵期にオス、メスの違いが分かると良いですね(余吾)。

追加コメント:
確かにI. celebicusに似ていますね。小笠原からの記録ありという点でも、納得できます。Randallさんのノートによる行動記録も、この種の八丈における行動パターンとまったく合致します。ただ気になるのが、八丈ではこの種の大きな群がりの中に、I. celebicusの写真Cや不明種 Iniistius sp.2 のような横縞が入った個体は一切混じっていないという事です。これは追い詰めたり驚かしたりしても同様で、横縞は出しません。すでにこの種の産卵は目撃・観察しているのですが、やはり目立った横縞を出す個体はメス・オスともにありません(原崎 森、BBS 1510)。



八丈産の不明種
原崎さんのコメント:八丈で一番多く見られるテンスなのですが、胸鰭の辺り
からお腹にかけて黒いのが特徴です。

12.不明種 Iniistius sp.2
I.celebicus の可能性あり)
   
関連BBS:1319,1320,1322,1510
KPM-NR0004595A
 加藤昌一さん撮影、 八丈島八重根、11/09/93

この写真について:
不明種Iniistius sp.2 の加藤の写真の子は、たまに見かけるのですが単独で見られ、サイズは大きいもので、3cmくらいです。行動パターンも、良く泳ぐ不明種Iniistius sp.1の幼魚に対し、この種はフラフラと一定の範囲に留まっているという印象があり、僕と加藤の観察では、不明種Iniistius sp.1とは別の種類だと考えています(原崎 森、BBS 1510)。

・益田・小林(1994)の Iniistius sp.2(10cmTL、西表島)
KPN-NR0002165
 鈴木寿之さん撮影、八重山郡西表島浦内川河口、08/14/93
   13.不明種 Iniistius sp.3
      関連BBS:1351,1352,1354,1356-1358

不明種 Iniistius sp.3-1

Iniistius sp.3-1 平田智法 03/21/94
5cm TL 水深25m 砂地 (0443-23)

不明種 Iniistius sp.3-2 


Iniistius sp.3-2 原 多加志 01/12/03
2.5〜3cm TL 伊東市赤沢 水深6m 水温17℃
2枚とも同じ個体の写真です

事務局より:検討を要しますが、一応、ここに挙げておきます。 

不明種 Iniistius sp.3-3  


Iniistius sp.3-3 平田智法 02/22/02
3cm TL 高知県大月町 水深 5 m(1069−020)

・平田さんのコメント:Randall & Earle (2002) の Iniistius umbrilatus
(plate 3-F)とよく似ています。02/03/03

04/14/03 不明種 Iniistius sp.3-4 

Iniistius sp.3-4 近藤 淳 08/11/01
12-13 cm TL 鹿児島県坊津平崎 水深15m

近藤さんのコメント:
一面砂地のポイントで粗い砂利が混じっている所もありましたが、被写体のいた場所は角質の細かい砂地でした。八丈の人面テンスの様に泳ぎまわっていたり、
ホシテンスygの様に木の葉にみせかけて漂うわけでもなく、同じ場所でただじっと
していました。

Iniistius.sp.3-5(場所を入れ間違えていました)


Iniistius.sp.3-5 原 多加志 08/24/03 午前8時50分
八丈島・底土、水温26℃、 水深 3 m 約3.5cm TL

原さんのコメント
写真を撮るために追い回していたら砂に潜ったのですが、面白いことに全身を隠さず、しばらく頭だけを出していました。テンス類でこんな行動は見たことがありませんし、加藤さんも初めて見たと言っていました。

10/20/03 不明種 Iniistius sp.3-6

Iniistius sp.3-6 道羅英夫 09/27/03
2cm TL 静岡県賀茂郡南伊豆町落居 水深3m

道羅さんのコメント
9月27日に南伊豆の落居という漁港の砂地でテンス属の1種を撮影しました。
体長は約2cmほどで、全身が濃い茶色で、頭部の前面が白くなっています。
砂地のすり鉢上になっている所をひらひらと漂っていて、近付くと砂の中に潜ってし
まいました。
この個体以外にももう1個体確認しました。
また、10月4〜5日にも西伊豆浮島でおそらく同種の魚を4個体確認しています。
同種と判断したのは行動パターンと体色、頭部前部の白い模様です。

頭部に白帯があるのは初めてですね。どこに入れておくべきか?判断がつきませんが、とりあえず、ここに納めておきます。(余吾)

Randall & Earle (2002) は I. umbrilatus をハワイ諸島固有種としています。
 Fish Base を閲覧
 scientific name(学名)のIniistius umbrilatus を属 (genus)と種小名
(species) の項に分けて入力し、search をクリックするとハワイ、オアフ島
で採集された全長21.4 cm の標本写真がでます。さらに、下段のpicture を
クリックすると、Randall 博士の写真がずらりと出ます。


比較検討すべき写真が以下に掲載されています。

KPM-NR0012008
 中本純市さん撮影、 八重山郡竹富島、1997
KPM-NR0026970
 反田健児さん撮影、沼津市大瀬崎棚下、08/22/97
 上の個体は体側の横帯が極めてはっきりしています。Randall の写真とも
 比べて下さい。また、BBS1354 も参照して下さい。
Iniistius umbrilatus (Jenkins) の図が Jordan and Evermann (1973)
 "The Shore Fishes of Hawaii" に掲載されています。
14.不明種 Iniistius sp.4
   
関連BBS:

Iniistius.sp.4-1 

Iniistius.sp.4-1 平田智法 11/21/93
6cm TL 水深20m (0426-04) 

Iniistius.sp.4-2


Iniistius.sp.4-2 原 多加志 06/22/03
 午前11時 伊豆海洋公園 水深20m 約2.5cm TL

テンスモドキの幼魚かも知れません。真横から見た写真が欲しいです(余吾)。

15.不明種 Iniistius sp.5
   
関連BBS:

Iniistius.sp.5 

Iniistius.sp.5 瓜生知史 
伊東市赤沢、8cm TL 水深5m  

・「生態観察ガイド 伊豆の海水魚」に掲載されているものです。
 今後、情報が集まると期待しています。

16.不明種 Iniistius sp.6
   
関連BBS:

・益田・小林(1994)の Xyrichtys sp.1(10cmTL、小笠原)

保留

 原 多加志 08/24/03 午前8時50分
八丈島・底土、水温26℃、 水深 3 m 約1.5cm TL

近縁な魚達・・・・・・準備中
テンスモドキ Xyrichtys woodi、オビテンスモドキ Novaculichtys taeniourus、オオヒレテンスモドキ等は、日本産 Xyrichtys 魚類として別にまとめます。
文献 

Araga, C. and T. Yoshino 1986 A new species of deep-dwelling
 razorfish from Japan. Pub. Seto Mar. Biol. Lab., 31(1/2):75-79
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 高知県柏島の魚類相.行動と生態に関する記述を中心として.
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益田 一・小林安雅 1994 日本産魚類生態大図鑑 東海大学出版会
益田ほか 1984 日本産魚類大図鑑、東海大学出版会
Masuda, T. and K. Tanaka 1962 Young of labroid and scaroid fishes
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中坊徹次 2001 日本産魚類検索 東海大学出版会
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