7-1 メジロザメ科 余吾 豊 07/06/03
関係BBS:1663
BBS1663 で佐藤さんからサメ類の歯の生え替わりについて質問がありました。
丁度、家にハワイのおみやげだったサメの両顎があったので、これを例に紹介します。
図1 前から見た両顎(差し渡しは約40B)。
上顎(upper jaw)と下顎(lower jaw)に並んだ最前列の顎歯が見えます。上顎と下顎を合わせて、まさしくジョーズです。
分類する上で重要な形質となる歯の数を数えますが、中央の縫合部(b)と左右(a、c)の歯の数から歯式を求めます。
上顎は図の左から、16,2,16,下顎も同じく、16,2,16ですから、この場合の歯式は
16-2-16/16-2-16 と表します。このサメは、歯式と両顎歯の形からすると、クロトガリザメCarchahinus
falciformis ではないかと思います。全長3m程となり、マグロ類等の遊泳性の魚やイカ類などを食べ、人は襲わないないそうです。
図2 内側から見た両顎
図3 内側から見た上顎の歯。補充歯の列が分かる。
上顎の歯は少し斜めに倒れた三角形で、その両辺に細かなノコギリの歯状の鋸歯(きょし)が並んでいます。イタチザメの歯に似ています。
図4 内側から見た下顎の歯。補充歯の列が分かる。
下顎の歯は鋭く尖った三矢形で、鋸歯はありません。また、上顎の歯よりも小型です。アオザメの歯に似ています。
図5 内側、斜め上から見た下顎の歯。補充歯の列が分かる。
上顎と下顎の歯の形が違いますね。僕の想像ですが、上顎の歯は獲物を切り裂き、下顎の歯は獲物をがっちりくわえるのに適しているのではないかなと思います。
図6 イタチザメの両顎。差し渡し、約75cm(佐賀県呼子の海産物店)。
顎歯は大きく、少ないのが分かりますね。こりゃあ、でかい。
図7 ホオジロザメの両顎(沖縄海洋博記念水族館)
BBS 1671より:
魚類の歯は、両顎(上アゴと下アゴ)にある顎歯の他に、口蓋部や咽頭部にもあります。普通、歯という場合は顎歯ですね。歯はエナメル層と象牙質とからなっていますが、これらは表皮と真皮に由来するので、皮膚が変化したものと言って良いでしょう。また、顎歯を支える顎の骨は、鰓弓(エラの芯にあたる弓状の棒)が変化したものです。
この両顎を持つのは脊椎動物だけで、最初に顎を持った魚類の誕生によって僕らもモグモグ、バリバリ、喰っているわけですね。この辺の話は「磯魚の生態学」を書いた奥野良之助さんの「さかな陸に上がる」(創元社)に詳しいです。
歯が生え替わる魚はとても多く、サメだけではありません。サメの場合は、予備の歯が何列も内側に並んでいて、一番前の歯が抜けると後から後から補充されます。予備の歯を持っていない魚でも、補充用の歯の材料(歯芽)があり、後から補うことができます。エサ生物を捕らえる上で歯はとても重要なのですね。人間にとっても勿論大事なのですが、友人の歯科医は、「虫歯を病気と思っている人は殆どいないもんね」とぼやいています。ダイヴィング中に歯の痛みに泣いた人も多いでしょう。
歯の形は、食性によって様々で、歯を見るだけでもどんな喰い方をしているのかおよその見当を付けることが出来ますし、分類する上でも大事なポイントになります。また、一生の間に食性(えさ)が変わる魚では、その歯の形も変わります。沖縄などでは、サメの顎歯のペンダントが売られていますね。これはアオザメ、これはイタチザメ・・等と楽しめますし、シンプルなデザインで美しいものです。
咽頭歯は咽頭骨(上下にある)に生えている歯です。これも種によって随分と異なります。巨大なのはアオブダイの仲間で、1m位の個体では、上下とも大人の握り拳くらいあり、それを動かす筋肉は単一電池ほどの太さがあります。これでサンゴをバリバリ擦り潰しているのですね。ベラやブダイでは咽頭骨だけでおよその種が分かります。「大きな咽頭骨」と言う意味の属名がついているベラは何でしょう?