名誉会員 ジャック・T・モイヤー博士からのご挨拶


 

このたび新たに設立されたアンダーウォーター・ナチュラリスト協会の一員に加わることは、わたしにとってこのうえない喜びである。三宅島における軍の飛行場(アメリカ海軍の夜間離着陸訓練場)建設に関する論争や石垣島の白保における新石垣空港建設問題以来、もう何年もの間、私達をとりまく海洋の保護についての一般の人々の無知や無関心に対して、わたしは強い懸念の気持ちを抱いて来た。この問題に関する各国政府の方針を見渡せば、日本だけではなく、世界全体がこうした嘆かわしい状態であることが察知できる。


1979年7月、三宅島伊ヶ谷港、左からオーズリー、モイヤー、余吾

わたしを含めて、海洋環境に深い関心を寄せる人達は、昔から、それぞれの専門分野にのみ固執してきた。私達は、この点については責めを負うべきだと思う。例えば、わたしの永年の専門は、リーフ・フィッシュの繁殖生態学であったし、この他にも、魚類の分類、サンゴ、プランクトン、水中の自然を対象にした写真撮影や絵画や彫刻等の芸術、海洋のレポート、フィッシュ・ウオッチングなどの分野にそれぞれの専門家がいる。私達は、全員が海洋を愛しており、その保護に強い関心を持っている。しかし、現在の海洋環境の状態は思わしいものではない。土砂の流入、PCB、ダイオキシン、世界温暖化、オゾン層の破壊による過度の紫外線の輻射、海上の石油流出、人々による海洋資源の濫用や誤用などによって、世界規模で、海洋生物が絶滅の危機にさらされている。アンダーウォーター・ナチュラリスト協会の設立によって、会員たちはそれぞれの知識や、才能や、関心や、懸念などを結集することができるし、一致協力して情報を提供することもできる。そして、その情報によって、政府の関係者から一般の人々まで、全ての人々に海洋生態系をよりよく理解してもらえるものと思う。また、この協会の設立により、特定の海洋環境の問題点に研究の対象をしぼることができるし、私達を取り巻く海洋環境への人々のいっそうの理解に向けて努力することもできるだろう。さらに、多くの関連分野の人材がこの協会のために結集することにもなるので、その結果、共同研究や情報の浸透に役立つような強力なネットワークが生まれることだろう。  

個人的なことを言わせていただければ、協会の設立は、よき友人であり、同時に、協会の代表者である余吾豊博士ともう一度一緒に仕事をする機会を持つことであり、誠に喜ばしいかぎりである。1970年代から1980年代の初めにかけて、彼は、三宅島に来島する毎にわたしの研究拠点である田中達男記念生物実験所に何週間も滞在し、博士号課程のための研究を行った。わたしにとって忘れられないのは、私達の研究のことを何時間も討論し合ったことだが、一方で、彼とわたしは、ビールの好みも音楽の趣味も同じだった。そして、二人とも、魚類の行動について、当時では最先端の研究に携わっていることに興奮を覚えていた。一緒に熱心に研究をしながら、私達はとても気が合った。このたび、アンダーウォーター・ナチュラリスト協会の設立で再び彼と仕事をすることになったが、私達の仕事が、実りがあると同時に大変楽しいものになるだろうということには疑いを持たない。  

最後に、多くの会員たちを有するこの協会の成功を心から願って、結びの言葉としたい。

ジャック・トムスン・モイヤー

(訳:丸田しらべ、監修:余吾 豊、原文はTOPページのEnglish announcementに収録されています)

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