MOMOプロジェクト <Make Our Movies Open!>
 MOMO PROJECTとは

第二回「動物行動のデジタル映像コンテスト」のお知らせ
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IT の発達により、デジタル映像の制作やインターネット配信は身近なものとなりました。私たちMOMOプロジェクトでは、動物行動学の面白さをより多くの人々に知ってもらうために「動物行動の映像データベース」を構築し、動物の興味深い行動をおさめた映像を登録していただき、ウエブで公開することを広く呼びかけています。このような活動は一般の人々への学問の普及だけでなく、子供たちの理科教育にも貢献できると考えています。

昨年秋に、動物行動のすぐれた映像を表彰するコンテストを開催したところ、大変な好評を博し多くの興味深い映像が集まってきました。そこで、今年もコンテストを開催します! 研究者以外の昆虫や鳥や魚の好きな様々な方にも、ぜひ参加していただきたいと思います。あなたもぜひこの機会に、秘蔵の映像をデータベースに登録し、コンテストに挑戦してみてください。

テーマは「ケンカ(闘争)」です。
世の中には、様々な「ケンカ」があります。争う理由も様々なら、その争い方も様々です。前回同様、 今回もたくさんのご応募をお待ちしています。応募作品では、できるだけ「ケンカ」の「内容(何を競っているのか、など)」と「結果(どちらが勝ったのか)」がよく分かるように、映像内で示すか、解説で述べるようにして下さい。

今回は、採点基準として、

1.行動の面白さを評価:
 例えば変わった行動、もしくはあまり見る事ができない行動でしょうか?

2.映像を評価:
 撮影技術は優れているでしょうか? 編集は適正でしょうか?

3.教育現場で使いやすいかを評価:
 例えば、わかりやすい解説文がついているでしょうか?

の3つを設定します。

第一回「動物行動のデジタル映像コンテスト」で大賞を受賞したのは、山口明男さんの「ヤマドリの求愛と産卵」で、山口さんはAUNJの会員の方です。


MOMOプロジェクト通信

 このプロジェクトが本格的に動き出し、登録映像の紹介を中心にMOMOプロジェクト通信が配信されました。今後、継続するので、MOMOのコーナーを新設します。


 今回、AUNJのスペースをお借りして、このMOMOプロジェクトについてお話しさせていただけることになった。所蔵されている海洋生物の映像の紹介 や、動物行動と動画をめぐるいくつかの話題について、ごく気楽なお話を書かせていただこうと思っている。

12/22/2003 帝京科学大学アニマルサイエンス学科 藪田慎司

<お詫び>
MOMO プロジェクト通信3と4で「ヒモムシの摂食行動」の映像をとりあげました。しかし、撮影者よりこの動物はヒモムシではなくホシムシであったとの訂正の連絡がありました。私もヒモムシと信じ込んでしまって紹介文を書いてしまいましたが、これは私の不勉強のためであり、まったくお恥ずかしい限りです。間違った情報を流してしまったことをお詫びします。その紹介文は削除させていただきました。03/11/05 藪田慎司


MOMO プロジェクト通信5 

<魚類の色覚とヤマドリの広げた背びれ> 07/12/04

今回の映像は山口明男さんの「ヤマドリの求愛と産卵」
(データ番号:momo040111un04b)

ヤマドリといっても山鳥ではない。海魚である。

この映像は、第一回「動物行動のデジタル映像コンテスト」で大賞を受賞している。さすがに素晴らしい映像である。私が特に印象づけられるのは、オスが広げた美しい黄色/山吹色の背びれである。

映像では、この山吹色は海底の砂を背景としていて、それほど鮮やかに目立つというわけではない。

しかし、あれをオスが本当に見せたがっていた相手、つまりあのメスの目から見たらどう見えるだろう。おそらく、海中の水をバックに見えているのだろうと 推測されるが、だとしたら、どうだろう。あの美しい山吹色は、暗くなってきた海の中で、深い藍色を背景として鮮やかに浮かび上がっているのではないだろうか。

私たちの目には、青色を背景とする黄色は実に鮮やかに見える。これは、「色拮抗処理」というものが網膜でなされているからなのだが、実は、同様の処理は 魚類の網膜でも行われている。

というよりも、脊椎動物の色覚の基本メカニズムは硬骨魚類で完成しているのである。哺乳類では、おそらくその共通祖先が夜行性だったからだろう、色覚メ カニズムは魚類に比べれば単純化され貧弱なものになってしまっている。ただ、霊長類は例外で、哺乳類の中では比較的複雑な色覚メカニズム(魚と同様の) を持っている。これは、進化的に言えばごく最近になって「再進化」したものである。色覚に関して言えば、本家本元はあちら(魚)の方なのである。

ヤマドリの背の山吹色を、海中の藍色を背景に見てみたいものである。映像の中のあのメスが、あのオスに惹かれたのがなぜだったのか、その理由がもっとよ く理解できそうな気がするのである。

<今回紹介した映像を見るためには、トップページ(http://www.momo-p.com)右のキーワード検索にデータ番号 momo040111un04bを入力すれば検索できます。分類群検索で探していただいても簡単にたどり着けるでしょう。>



MOMO プロジェクト通信3、4


MOMO プロジェクト通信2 

オビテンスモドキの「巧みさ」 12/22/2003

今回の映像は高柳茂暢さんの「オビテンスモドキの寝床づくり」
(データ番号:momo031201nt01a)である。

オビテンスモドキは砂の中で寝る。ところが、砂の中に寝るのに、彼等はなぜか砂の上にサンゴ片を集めるのである。なぜこんな「余計」なことをするのか。
高柳さんはこれについて「普通の魚には動かせないような大きなサンゴをいくつもかぶせることで、砂に潜って寝る他のベラ類から睡眠場所を守ることができているのでは」と書いている(関連論文が参考文献としてあげてある)。なるほど、である。

どうでもいいが、私は寝る時に布団が重くないと安心して眠れないくちである。私の父親もそうだったらしく、泊めてもらった先のふとんがあんまり軽かった ので机をかぶせて寝たと言っていた。オビテンスモドキも砂が重くないと寝た気がしないのだろうか。

閑話休題。他のベラ類が潜りにくいようにサンゴ片を置くのだとすると、当の本人はどうやって寝床に入るのだろう。映像をみると、オビテンスモドキは、サンゴ片を一つ口でくわえて動かし、その空いたスペースから、スルッと一瞬で潜り込んでいる。見事なものである。まるで砂に吸い込まれるようだ。

コマ送りで見ると、尾ヒレを一回往復させる間に全身が砂の中に消えている。こういうのを「巧みさ」というのだと思う。職人技や高度なアスリートは、しばしば複雑な運動を、いとも簡単そうにやってみせる。彼等のそういった体の動きを私達は賞賛するわけだが、ヒト以外の動物の行動にも、同じような感嘆の念を覚えることがある。今回の映像にもそれを感じる。

このような「巧みさ」は文章ではなかなか伝えられない。今回のオビテンスモドキの行動の、言葉で言えば「砂に潜った」でしまいである。しかし、彼らの行動にはそれだけでは語り尽くせないものがある。

行動自体の魅力、動物が動いているそれ自体から感じる感動。そういったものを伝えるには「見る」しかないのかもしれない(いや「触れる」ってのもあるかな)。


MOMOプロジェクト通信ー1 12/22/2003

動物の行動を誰かに伝えようとするなら、動画がもっとも強力なメディアである。実際、動物行動について言葉を使って説明するもどかしさといったらない。
自分の体を使って真似をしてみせるという方法もあるが、限界がある。だいたい、カタツムリの交尾をどうやって真似したらいいのだろう。

実は、世の中に、動物行動の映像は決して少なくない。世界中のフィールドや実験室では、日夜多くの動物行動が映像に記録されている。しかし、それらはたいてい私蔵(=死蔵?)されてしまい、めったなことでは表に出てこない。

こういった動画を流通させる仕組みがあれば、動物行動学の研究と教育に役に立つに違いない。第一、面白いではないか。いろんな動物のいろんな行動を見てみたい!3年前、京都のとある居酒屋でそんな話がもちあがり、とうとうWeb上にオープンプラットフォームとしての動画データベースを構築することになった。
計画名はMOMOプロジェクト。MOMOとは、Make Our Movies Openの頭文字であり、計画のコンセプトをあらわしている。その後、この酒飲み話はなぜか動物行動学会の協力を得ることとなり、あれよあれよと現実の成長をはじめた。現在、このデータベースは公開されている

登録されている映像は現時点でおよそ100。学術的に貴重なものから、何がなんだか分けの分からないものまで様々である。例えば、なぜかカモメに給餌する親切なペリカン、オオヘビガイの採餌行動、チンパンジーの文化行動、交尾の果てにバラバラに解体されるアリのオス、水中から見事なジャンプで氷台に上 陸するペンギン達、最近マダガスカルで発見された新種のトカゲ(後肢がなくて前肢しかない)の動く姿、等等等。

今回、AUNJのスペースをお借りして、このMOMOプロジェクトについてお話しさせていただけることになった。所蔵されている海洋生物の映像の紹介 や、動物行動と動画をめぐるいくつかの話題について、ごく気楽なお話を書かせていただこうと思っている。
帝京科学大学アニマルサイエンス学科 藪田慎司



紹介した映像を見るためには、トップページ右のキーワード検索にデータ番号を入力すれば検索でき ます。分類群検索で降りて行っても簡単にたどり着けます。
帝京科学大学アニマルサイエンス学科 藪田慎司