今、周りの海で・・・

アオウミガメの回遊 10/02/03

 アオウミガメは生まれた場所に戻って産卵する習性があるとされ、小笠原でふ化した個体は北西に泳いで日本本土の沿岸で索餌して成長すると考えられています。日本ウミガメ協議会より、最新の発信器を装着された2頭のアオウミガメが回遊するルートが辿られているとのお知らせがありましたので、ご紹介します。

 アオウミガメの産卵後の回遊経路を探る目的で、2003年8月10日に電波発信機をアオウミガメ雌2頭に取り付けて、小笠原父島から放流しました。標準直甲長90.5cmの小さい方を翠(みどり)、106.8cmの大きい方を葵(あおい)と名付けました。葵は、出発後に母島に戻ってきてしまい、一時はどうなることかと気をもみましたが、その後,西に向かって泳ぎはじめました。翠は、順調に北上し,途中黒潮を横切る際に東に流されたりしましたが、無事泳ぎ渡り、3週間で御前崎沖合に到着しました。インターネットを介してはらはらしながら、彼女たちの動向を見守るのが、あまりに面白かったので、私一人で独占していてはもったいないと思い、ウミガメ協議会のホームページで公開してもらうことにしました。今回用いている発信機は、スコットランドのセントアンドリュース大学が開発したSatellite Relayed DataLoggerというもので、ウミガメの位置だけでなく、潜水深度・経験水温・遊泳速度などの行動データも得ることが出来ます。東京大学海洋研究所行動生態計測分野に籍を置く畑瀬英男さんが、6月に小笠原の父島にわたり、日本ウミガメ協議会小笠原海洋センターの協力を受けて2頭にこの発信機を取り付けてきました。2頭の日々の位置は以下のアドレス上で見ることが出来ます。
Http://www4.osk.3web.ne.jp/~umigame/J/NEWS/co-resarchtop.htmlバッテリー寿命は半年から1年なので、このままうまくいけばアオウミガメが秋から冬、そして春にかけて、どこで何をしているのかを見ることが出来ます。
(ウミガメ速報 03−34 国立極地研究所 佐藤克文さんより)

アカウミガメが北太平洋を渡って日本へ 06/23/03

ミハリの関連情報が届きました。前報は、11/11/02です。

日本ウミガメ協議会事務局より

 2000年10月1日にアメリカ・サンジェゴで発信器を付けて放流したアカウミガメのミハリ(雌)は、2001年の秋に日本にたどり着き南日本の沖合をうろうろしていました。その後、昨年2002年10月22日に伊勢湾の湾口で奇跡的に捕らえられ、南知多ビーチランドの黒柳賢治さんの手で発信器が交換され、追跡が続けられていました。その個体が5日頃から渥美半島の南岸に近づいているのが確認され、7日20:43に陸上に上がった可能性を示唆する感度の高い位置情報の受信がありました。8日には黒柳さんが位置情報に合致する渥美半島赤羽根町の砂浜を調査しましたが、それに該当する痕跡は見つからなかったそうです。ウミガメの産卵後の回遊経路に関しては多くの研究がありますが、アメリカから戻ってきたカメが初産に至るまでの過程を追跡した例は世界で皆無です。渥美半島から遠州灘にかけて調査されておられる方で、この個
体を発見された方は、いつでも構いませんので連絡をお願いいたします。
(ウミガメ速報03−17より)

消えゆく藻場 06/17/03

 藻類学会が以下のような本を作り、一般に公開しています。各タイプの藻場のカラー写真があるので、見てください。

日本藻類学会創立50周年記念出版
「21世紀初頭の藻学の現況」

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsp/jjp/phycology21.html

「本書は,「表紙・裏表紙」ファイル,「前書き・目次」ファイル(編者前書 き,目次,藻類学会長挨拶),に続き,48項目の用語・事象解説ファイルから 成ります。すべてpdfファイル形式でダウンロードが可能です。お好きなファ イルをダウンロードしてお楽しみください。」

相次ぐ重油流出事故 12/04/02

伊豆大島でのカーフェリー座礁、火災によって波浮港周辺の油汚染、深刻ですね。他の場所でも長期、座礁したままの事例が数多くあります。

海外でも、こうした海難事故が続いており、昨年1月にはガラパゴス諸島で大きな事故によって油汚染が起こりました。また、ウミガメ協議会のMLを通じ下記のお知らせが入っていますので、ご紹介します。

2002年11月13日、スペイン北西部ガリシア地方沖で、バハマ船籍タンカー「プレスティージュ」号が難破、漂流し、19日に沈没しました。このタンカーには7万7千?の重油が積まれており、すでに1万?以上が流出。流出した油は海岸に漂着し、多くの海鳥に被害が出ており、さらに被害が広がる可能性があります。
 下記2団体は、協議の結果、獣医師を中心とする日本チーム(3名程度)をスペインの救護施設に派遣いたします。併せて活動を支援するための国内での募金活動も開始いたします。ご協力をお願いいたします。

派遣日程:2002年12月上旬出発
派遣者:3名程度
募金口座:郵便局口座番号 00120-2-350855
口座名 :油汚染生物救済募金
連絡先:本件についての問合わせ先
・特定非営利活動法人 野生動物救護獣医師協会(植松)
〒190-0013 東京都立川市富士見町1-23-16 
富士パークビル
TEL:042-529-1279 FAX:042-526-2556
Wildlife Rescue Veterinarian Association Japan
http://www.wrvj.org/
E-mail:wrvj@wrvj.org
・バードライフ・アジア
〒160-0022 東京都新宿区新宿1-12-15 東洋新宿ビル2F
TEL:03-3351-9981 FAX:03-3351-9980

アカウミガメが北太平洋を渡って日本へ 11/11/02

ミハリの関連情報が届きました。

南知多ビーチランドの黒柳賢治さん・大池辰也さんより(11/6)
 
 皆さんすでにご存知かと思いますが、アメリカ帰りのアカウミガメ「ミハリ」に発信機を付けて、先月22日に放流しました。移動経路は、南知多ビーチランドのホームページに紹介していますのでご覧ください。
www.meitetsu.co.jp/meitetsu/bl/
(ウミガメ速報35−02より)

アカウミガメが北太平洋を渡って日本へ 10/30/02

日本ウミガメ協議会よりミハリの続報が届きました。
中日新聞(10/23)の記事を紹介したものです。

 渥美半島沖で今月三日に捕獲され、美浜町の南知多ビーチランドが保護していたアカウミガメが二十二日、渥美町の日出(ひい)海岸から甲羅に発信器を装着して再放流された。今後、衛星を使った生態調査に一役買う。このカメは甲羅の長さ八〇センチ、体重八四キロの雌。米カリフォルニア州サンディエゴ市の水族館で「ミハリ」と名付けられ、約二十年間飼育された。二年前に回遊調査のため、甲羅に発信器を着けて放流され、GPS(衛星利用測位システム)を使って生態を調べた。この結果、ミハリは太平洋の北緯30〜40度付近を通過し、約一万キロ離れた日本近海で漁師の網に掛かった。
 ビーチランドでは、回遊中の食事を調べるため便内容物を調査。ヤドカリや貝、魚の骨が見つかった。「ミハリは二十年も飼育されていたのに、野生のウ
ミガメと同じようにエサを捕っていた」としてウミガメの適応力を示した。ミハリは再度、回遊調査のために新しい発信器を着けられた。黒柳賢治ビーチランド主任(40)によると、バッテリーが使える最低七カ月間、カメが越冬する場所や春先の繁殖期の動きなどを調べられる。黒柳さんらビーチランドの職員によって海岸に運ばれたミハリは約二十メートルほどの波打ち際をゆっくりとはい、波にもまれて海に戻っていった。
(ウミガメ速報32−02より)

放流されて約2年が経過しましたが、壮大な旅ですね。


アカウミガメが北太平洋を渡って日本へ 10/14/02

日本ウミガメ協議会よりミハリというアカウミガメの続報が届き
ました。

既報のアメリカで放して、シーワールドが追跡していたミハリが
底引き網でつかまりました。南知多ビーチランドで発信器を付け
替えて、再び追跡を継続する予定です。
(ウミガメ速報 29−02より)

嬉しいニュースですね。壮大な旅の記録が、また続きます。
詳しくはまた。

アカウミガメが北太平洋を渡って日本へ 9/24/02

日本ウミガメ協議会よりミハリというアカウミガメの続報が届き
ました。

ウミガメ速報02-27より
 アメリカのシーワールド附属ハッブス研究所のエッカート博士
らが一昨年10月にカリフォルニア州沖から放流した3頭のアカウ
ミガメのうち、いまだに発信器が作動しているメスのミハリは、
6月23日ごろから伊勢湾湾口部周辺に滞在しています。
このウミガメは、2000年10月1日にカリフォルニア州サンディ
エゴ沖でオスのブッパやメスのクラッカーとともに背中に電波発
信機を装着して放流されたもので、mt-DNAの分析では日本生ま
れと考えられています。ミハリには、右前肢そけい部に標識「X
83」が付いています。放流時の体サイズは、曲甲長が82.5cm、
曲甲幅は72.0cmです。万が一捕獲された場合は、新たな発信器
に付け替えたいと考えていますので、漁師さんと関係のある方よ
ろしくお願いします。
事務局より:4月には屋久島近海におり、その後、北上して5月
に伊豆諸島にいたことが分かっています。受信機のバッテリーも
そろそろ切れるのではないかと思われます。mt-DNAとは細胞の
中で呼吸活動を行うミトコンドリアに含まれているDNAです。

     越冬する旅人達 8/12/02

 最近、ちょっと驚いた、僕が住む北九州の海からのニュースで
す。タンクを充填してもらいにショップを訪れた時に、先日、筑
前沖の島へ同行した木原さんとお会いしました。福岡市西区の小
呂の島でこの2年続けて、クマノミが越冬し、今年、ペアが出来
たというのです。冬は名にしおう玄界灘、北西風が吹きつのり、
とてもクマノミが越冬できる海ではなかったのです。福岡市とい
っても、行政上のことで、北緯33度40分、福岡市の中心から
約44km北北西に浮かぶ小さな島です。



 サンゴイソギンチャクの巨大なコロニーに出来たペア
DS アワーズ 橋村留美子さん撮影

 この数年、珍しい魚の記録が北九州で続いています。
筑前沖の島では、キンギョハナダイが大きな群れを作り、それま
で幼魚を見るだけだったアカハタやスジアラが大きくなり、幼魚
を見ることもなかったアオブダイがかなり生息しています。コガ
ネスズメダイやセダカスヅメダイが越冬して産卵しています。水
温が低い、九州本土沿岸でもインドヒメジ、クロユリハゼ、オト
ヒメエビなどが報告されています。九州本土沿岸である福岡県津
屋崎周辺での魚類相の変化は、すでに、九州大と九州共立大の研
究者によって進められていますので、ここでは詳しく書きません

 こうした変化は、南方性魚類の稚魚の補給の増加と冬季の海水
温の上昇とが原因なのでしょう。

アカウミガメが北太平洋を渡って日本へ 5/28/02

 昨日、枚方市の日本ウミガメ協議会事務局を訪問してきました。
一昨年10月にカリフォルニア州沖から放流した3頭のアカウミ
ガメのうち、遅れていたメスのミハリが日本に接近し、4月中旬
に屋久島、その後、室戸に来ていたミハリは今、伊豆諸島近海に
居るようです。5/14には南紀串本におり、その後、1週間後に
八丈島と御蔵島の中間で確認され、23日に三宅島南東で位置が
確認されています。
 さて、ミハリは何処に上陸して産卵するのでしょうか?

 また、5/26の朝日新聞朝刊によれば、地中海から分布を拡大
しているイチイズタという海藻の話が出ていました。海底を覆い
つくして繁茂するこの海藻は「殺し屋」とも呼ばれています。


春の海−3 5/8/02

 
奄美から沖縄本島、慶良間諸島にかけてオニヒトデが
また増えています。サンゴ礁の保全は景観を守るという
観光目的の問題も勿論あります。サンゴという生物は、
海の熱帯雨林とも呼ばれるサンゴ礁を作り出し、その場
は膨大な生産力を持ち、複雑な網の目のような多様性を
になう海洋環境を作り出しています。このような熱帯の
海の基盤を支える生物を守ることは重要な問題です。
 長年、サンゴ食生物の大量発生問題に関わってこられ
本協会講師でもある野村恵一さんより、駆除に関わる現
実問題とその今後の駆除方針に付いて、ご意見を頂きま
したので、紹介します。
                事務局 余吾 豊

サンゴ食生物の駆除を始める前に考えること
       野村恵一(串本海中公園センター)


 サンゴ食生物(オニヒトデやサンゴ食巻貝)が大発生
した海域では、最終的にはサンゴ群集(以下単にサンゴ
と呼ぶ)の主体となるミドリイシ類の大部分が食害を受
けて景観が消失し、また、サンゴ礁生態系が崩壊する。
そして、サンゴ食生物からサンゴを保全しようとすれば
現時点では駆除を行う以外に手段はない。しかし、安易
に駆除に走るのは下記に示すいくつかの理由から早急で
あると考える。

 まず第1に、サンゴ食生物の発生原因が人為的環境攪
乱(陸域の開発に伴う土砂の流入、富栄養化)に起因す
る可能性があり、駆除は単なる対処的療法に過ぎず、根
本的対策は環境攪乱要因を除去することにあるからであ
る。海域の環境が良好に保たれているかのチェックが第
一である。環境撹乱に対する「自然の警鐘」の代弁者で
あるかもしれないサンゴ食生物を悪者とは決め付けず、
まずは、サンゴ食生物も生態系の立派な一員であること
を尊重すべきである。

 次に、保全すべきサンゴの価値付けが必要となる。大
発生した生物を放置した場合、サンゴが消失する可能性
は大きいが、その後、餌不足により発生が収束してしま
えば、サンゴは徐々に自然再生に向かうことが期待でき
る。長い目で見れば、サンゴ食生物の大発生やサンゴの
消失も一時の間だけかもしれない。ただし、美しいサン
ゴ礁景観が形成されるには膨大な年月がかかり、日本の
サンゴを取り巻く自然環境が年々厳しさを増す中では、
一度失われたら復元が望めないことも考えられる。従っ
て、貝発生域に消失させてはならない貴重なサンゴが存
在すると認めらた場合に、駆除は検討されるべきである

 次に、駆除の非容易性の問題がある。駆除は水中での
人海戦術となるため効率が悪く、しかも、用船料や機材
料などのコストがかかる。また、これまで国内で行われ
た駆除事業において、成功した事例はほとんどない。こ
の効果の低さとコストが、保全行政側を大きくたじろが
せている。従って、駆除に当たっては、自分の海は自分
で守るという相当な覚悟と信念が必要となる。

 最後に駆除効果を検討し、駆除方法を決めるべきであ
る。駆除の最終目的はサンゴを保全することにあり、決
して膨大な駆除量を揚げることではない。闇雲な駆除は
間引き効果を生み、増殖を増長させかねないし、駆除が
無駄になる可能性が高い。駆除の方法としては、二通り
の方法が考えられる。1つは、駆除によって発生海域全
体の個体群量を制御する(根絶させる)ことである。こ
れが実現できれば、ひとまず解決するが、人員・経費を
無制限に投入できることが条件となる。他の1つは、保
全すべきサンゴ域の範囲を限定し、その区域のみに駆除
を集中させて、区域内の個体群量だけを制御する方法で
ある。これは、最低限のサンゴ資源域(景観と群集再生
の両方を兼ねる)を死守しつつ、周囲のサンゴ食生物の
収束を待つ戦法で、小体制で取り組めるが、長期の実施
が必要となる。前者の方法は最も有効な駆除法であり、
物理的には実現可能であるが、人員とコストがかかり過
ぎるため、現実的には不可能に近い。そして、ほとんど
の駆除実施者は、人員も経費も限られており、後者を選
択せざるを得ない。なお、守れるサンゴの範囲は、実施
者の体制によって決まる。

春の海−2 5/4/02

3/2にお知らせしたハリセンボンの大量出現は、一部
の地方で依然として続いています。

高知新聞夕刊にハリセンボンの記事が出ていました.
下記を見て下さい.

http://www.kochinews.co.jp/0204/
020427evening01.htm#shimen1

また、駿河湾では春の湧昇流によって深海からいろんな
魚類が沿岸に打ち上げられますが、ミズウオという魚も
その一例です。東海大学海洋学部で駿河湾の海洋生物を
研究されている久保田 正教授と佐藤 武教授は、この
ミズウオを解剖し、その胃の中から出てくる様々な魚類
イカ類、エビ類、大型の動物プランクトンなどを調べて
おられます。大変珍しい生物が発見されることがあり、
かって、久保田教授は大西洋だけに生息するとされてい
たオナガイカを発見されたそうです。
今年は、ハリセンボンを見つけ、近年にはないことだと
驚かれたそうです。

久保田先生より追信あり 5/5/02 更新

去る5月2日にミズウオが打ちあがりましたが、胃はカ
ラスに持ち去られてしまい、胃内の捕食物をチェックす
ることができませんでした。最近は、カラスやカモメと
の競争です。昔もカラスやカモメは、いたのですが、何
時の頃からか、胃内にはタチウオとかスルメイカとかが
入っているので、味を覚えたと見えて、打ちあがるとす
ぐ胃を狙って食べてしまうことが多くなってきています。

今年は、そろそろミズウオの入手の時期も終わり
になりそうです。


平成14年3月1日 美保の浜での打ち上げ


腹を割き、胃を開いたところ


胃から出てきたハリセンボン

アカウミガメが北太平洋を渡って日本へ 4/24/02

 日本ウミガメ協議会から届くウミガメ速報にうれしい
ニュースが出ていました。昨年9月にこのコーナーで紹
介した太平洋を渡るアカウミガメの続報です。


 
ハッブスシーワールド研究所 スコット・エッカート
さんより(4/21)

 一昨年10月にカリフォルニア州沖から放流した3頭の
アカウミガメのうちミハリが屋久島の東方海上にいると
の報告を前回いたしましたが、4/21現在、室戸岬付近
にいることが確認されました。四国や紀伊半島の方も念
頭におかれてください。

アメリカ スコット・エッカートさんより(4/18)
 一昨年10月にカリフォルニア州沖から放流した3頭の
アカウミガメのうち、遅れていたメスのミハリが日本に
接近し、現在、屋久島の東方海上にいます。もしかする
と、今シーズン中に南西諸島の砂浜に産卵のために上陸
しないとも限りません。また、昨年11月に仙台湾で捕
獲・放流されたクラッカーの産卵上陸の可能性もありま
す。2頭のメス個体には、背中に発信器が装着されてい
る他に、右前肢に標識が装着されています。
クラッカーCrackers 標識:X154(右前肢)、ミハリ
Mihali 標識:X83(右前肢そけい部)。もしこれらの
個体を目撃されましたら、至急、日本ウミガメ協議会事
務局までご連絡下さい。

八重山研究所 4/5/02

花冷えですが、風邪など引かれていませんか?
八重山群島では、もう海開きも済み、半袖でも良いので
はないでしょうか。この群島の一つ、黒島に(財)海中
公園センター山々研究所があります。約30年間にわた
り、海洋生物の研究、八重山のサンゴやウミガメのモニ
タリングの中心的な拠点ともなったところです。
しかし、時代の波は厳しく、当センターはこの3月一杯
で解散となり、研究所は閉鎖の危機に見舞われました。
日本ウミガメ協議会がこれを見て、その運営をはかり、
存続させるという英断を下しました。
会長の亀崎さんは、この研究所の研究員であったことも
あり、現在も、アオウミガメやタイマイの研究のために
しばしば訪れています。
詳しくは、ウミガメ協議会のコーナーに、亀崎会長の
挨拶と趣旨を掲載しています。
これまでは学術研究者だけに利用を認めていましたが、
今後は門戸をもっと開放し、一般の真摯なナチュラリス
トにも利用可能とする方針だそうです。

私も、何度も訪問して、魚類研究を行った際に随分と
お世話になったところで、ウミガメ協議会の活動に大い
に感謝しています。

春の海 3/2/02

春が見えてきました。春と言えば、桜前線といのが天気
予報の定番ですが、シロウオ前線というものもあります。
九州南部、高知、和歌山では1月中旬から2月、九州中
北部、瀬戸内海に面した中国、四国、近畿、東海地方で
は2月から3月、中国、近畿の日本海側と関東地方では
3月から4月、北陸から東北地方と函館湾では4月から
5月と北上し、これらの時期は、河口域の水温が7℃に
なったことを示しています。福岡市室見川では恒例のシ
ロウオ漁が行われています。今年は豊漁だそうです。

春になるとプランクトン〔特に植物の珪藻類)の大量発
生により、海が濁り、春の濁りと言います。原因は、表
層水が冷却されて重くなり、沈んで、対流を起こし、深
いところの栄養分の多い海水が上昇するためです。

宇田道隆先生の「海洋気象学」(天然社)に少し出てい
ました。第5編 日本近海の海洋気象歴 -春ーに、
「厄水」、「春湛り(ハルトワリ)」、「四月の腐れ海」
「三月濁り」、「草水」等と呼び、・・・とありました。
出典、地方などは不明です。
この「草水」というのは言い得て妙であるなと感じ入っ
ています。

先人の知恵、素養、観察力に敬服します。

今年の春、南西諸島や、本州の太平洋岸でハリセンボン
の大量出現が続いています。
特に、沖縄本島、奄美、駿河湾、外房等で著しいのです。
写真は、昨日の朝、東伊豆の富戸の定置網に入ったハリ
センボン。富戸漁業組合の友竹のぼるさんが撮影し、協
会に届けてくれました。
漁師さん方は、ほとほと、処理に困っているそうです。

平成14年3月1日朝 富戸定置 友竹のぼるさん撮影

海を渡る生物−2 2/11/02

 続きです。

> ここで、質問
> 1.水質検査をしているのは、オーストラリアだけ?
> 2.検査はどういう機関が行うか?
> 3.どんな項目の検査?
> 4,その費用は船会社持ち?

1.水質検査はペルシャ湾ではカタールの一部の港で強
 制されているということですが、規則が出来てからは
 行っていませんので、詳しくは不明です。豪州は去年
 鉱石船で経験しました。たぶんアメリカのどこかの州
 ではやっていると思います。
2.豪州では検疫検査局(AQIS:Aust.Quarantine &
 Inspection Service)がやってます。YAHOO Japan
  の「オーストラリア」「AQIS」で検索すると詳しく
 載っています。
3.項目についてはちょっと判りません。電話で「OK」
 と言って来て「よし、排出開始だ!」とやってるだけ
 なので。
4.費用は豪州の港内でバラストを排出するだけで課徴
 金(鉱石船などの専用船は210豪ドル)が課せられ
 ているので、たぶんその中から充当していると思いま
 す。

 バラスト水による生物の移動はこれで終わりにします
 が、「バラスト水」で検索すればかなりヒットします。
 この他、船底に着生して分布を拡げているもの(日本
 への帰化生物としてムラサキイガイ、ヨーロッパフジ
 ツボ等は有名ですね)輸入に起因し、養殖用の魚に混
 じり込んで拡大するもの、飼育されていた動物が逃げ
 るか、あるいは捨てられるかで拡がるものなど、多様
 で、人間はずいぶん色んな事をしでかしています。
 これらの事象は、また、機会を見て、取り上げたいと
 思います。


     海を渡る生物−1 1/11/02
 友人とのメールのやり取りから紹介します。いま、
AUNJの掲示板では南西諸島でのハリセンボンの大量出
現が話題になっていますが、これはまた別の話です。人
間の社会活動が海洋生物の移動に直接的に影響している
話です。引用符が付いたのは、私のメールの文章で、
それに友人が答えています。

> 船のバランスをとるバラストタンクの海水に入り込ん
> でいた生き物が船で運ばれ、外国の海で育っているこ
> とも知られています。
> 東京湾にいるマハゼがオーストラリアに運ばれたとい
> う報告もありましたね。

おっしゃるとおり、1988年くらいから特にオースト
ラリアやアメリカで問題視されるようになりました。
黒海にしか居ないはずの海老の一種がカリフォルニアで
見つかった(逆だったかな)というような事もあったそ
うです。
タンカーや鉱石船の場合、荷物は片道だけしか積みませ
んから、戻る航海はプロペラが海面の下になるまで、
タンクに海水をはって船を沈めます。これがバラスト水
ですが、ほとんどの船は載貨重量の25%から30%の
バラスト水を積まないと走れません。
20万トンの原油を積めるタンカーならば、戻りの航海
は5万トンから6万トンの海水を積んで走ることになり
ます。例えば東京湾で原油を揚げた20万トン級のタン
カーは、東京湾の海水を5万トンも積んでペルシャ湾に
向かい、原油を積む前にこれをペルシャ湾で排出するわ
けです。海洋汚染の問題ではなく、検疫の問題ですが、
これに対する有効な対策はまだ見つかっていません。
(IMOでいろいろ論議はされていますが)オーストラ
リアは、独自に入港する船舶のバラスト水を、あらかじ
め外洋ではり替えすることを求めていますし、入港して
もバラスト水の水質検査が終わるまでは排出を禁じてい
ます。
一日あたり世界中で3000種の生物が移動していると
か、オーストラリアでは1997年の一年間で170種
もの外来種が発見されただとか、そういう事のようです
から、まあ無理もない話だとは思いますが・・・・・
            < 続く >



火山の島、三宅島の自然−3 11/21/01

 勿論、私は一島民として、1日も早い三宅島への帰島を望むが、その時に、新生する三宅島の経済基盤を憂慮している。全ての島民が従来と同じ三宅での生活を取り戻すのは難しいだろう。帰島に備えて、火山活動とガス観測体制の確立、ライフラインの確保などが懸命に実施されているものの、島民の生活基盤に対しては、様々な破壊、変化、不安が依然として残っているからだ。
 しかし、こうして避難生活を余儀なくされている今こそ、島の再生を考えるチャンスでもある。私の意見では、島民の今後の生活基盤はエコ・ツーリズムにあると言っても過言ではないと思う。そもそも、エコ・ツーリズムとは、その土地の住民によって管理され、住民に収益をもたらすべきものである。三宅島にはバード・ウォッチング、フィッシュ・ウォッチング、ドルフィン・ウォッチングの基地として大勢の人が訪れてきていた。大都会から近く、アクセスも容易で、しかも、多彩な自然に恵まれていたのである。その時に、エコ・ツーリズムのルール上で様々な問題が生じていたのも事実である。三宅島の復興を願う今こそ、エコ・ツーリズムの新生を真剣に討議すべきだと考える。

三宅島の今後について語り合うモイヤーさんと海野さん
10/5/01 竹芝桟橋のドルフィンにて

 私がもう一つ、強く訴えたいことがある。

 それは、火山活動が生物に与えた影響を被害として受け取るだけではなく、噴火後の変化を探る自然の教科書として、綿密な計画の下で組織を作り、今後長い間に渡って調査し続けるためのサンクチュアリを三宅島の中に残したいと強く願うのである。噴火災害にあった箇所と免れた箇所のどちらも残して行くべきである。特に、ウチヤマセンニュウの繁殖が確認された新澪池周辺は特別区域として保護しなければならない。

 事務局より:陸上の生物、得に鳥類や植生については、学術雑誌「生物科学」の53卷2号(農文協発行)に詳しく紹介されています。さらに深く知りたい方は、これをご覧になって下さい。

火山の島、三宅島の自然−2 11/10/01

 今、日本動物学会は東京都環境局の委託を受けて、三宅島の生物の現況調査を行っている。この調査は主として陸上生物に対してのものである。また、東京都産業労働局は水産試験場のスタッフと火山活動によって多大な損害を受けたトコブシやテングサといった主要水産生物の調査を精力的に行っている。こうした三宅島の生物、環境に対する現況調査は、火山活動の監視と併せて今後も続けられるべきだし、多くの人に実状を知らせるメディアの活動にも期待したい。ともすれば、悲観的な印象を与えがちな報道が多いのが気になる。被害は被害として、変化は変化として、ありのままを伝える姿勢が大切だと思う。

 海洋島である三宅島は「バードアイランド」とも呼ばれる。島の森、海岸や干出瀬、周囲の海原などには、分布やその生活様式にも興味深い鳥たちが沢山生活している。私と三宅島との接点となったカンムリウミスズメ、三宅島のシンボルとも言えるアカコッコ、イイジマムシクイ、カラスバト(この3種は天然記念物)、ウチヤマセンニュウ、本土のメジロとは少し異なる亜種のシチトウメジロ、コジュケイ、オオミズナギドリ(繁殖地は御蔵島)等々。


夕暮れ時、御蔵島周辺で群舞するオオミズナギドリ(10/4/01)

 昨年の噴火以降、三宅島で数が減ったものが多いのは残念だが、しかし、これは自然なことでもある。この内、深刻なのは、三宅島を繁殖地にしていた鳥類であり、その代表がウチヤマセンニュウである。この鳥は、旧火口に拡がっていた八丁平と言う湿地で繁殖していたのである。先にも書いたように、八丁平は崩落し、今は影も形もない。

 しかし、先に述べた調査によって、ウチヤマセンニュウが新澪池で繁殖したことが確認された。この池は、1983年の噴火で、水が蒸発して干あがってしまったのだが、その後、かっての湖底が徐々に湿地に変化しているのである。
 生物が示す「次善の策」と言って良いのだろう。たくましい生命力である。

 島は過去7千年の歴史を持ち、噴火、台風などの自然の脅威にさらされて尚、現在の姿にまで残ってきたのである。その歴史の中で、生物達も様々な変化の中で生き残り、子孫を作り、生活を刻んできたのである。今回の火山活動は、近年の中では特異的なものであるにせよ、それは科学という人間の視点と人間の時間の尺度で見たものであり、生物達は生物として、生活の姿を変えながら生きながらえていくのかも知れない。人間社会の持つ時間の長さだけでは推し量れない進化の歴史の中にあるのだから。−続く−

火山の島、三宅島の自然−1 10/24/01

 三宅島の噴火から1年以上が経ちました。本会名誉会員であるジャック・モイヤー博士も三宅島を離れて1年以上の避難生活をされています。先日お会いし、三宅島について書かれたエッセイを拝見しました。「ソトコト」という雑誌に連載されたものが多いのですが、彼の話もまじえて整理し、紹介します。

 三宅島は第4紀更新世に火山活動を始め、近年は1940、1962、1983年に噴火している。昨年の7月8日に雄山が噴火した。ほぼ、20年の周期である。山頂に陥没カルデラが形成され、旧火口に拡がっていた八丁平と言う湿地は崩落した。また、8月18日の大爆発で大量の火山灰が噴出した。噴出した火山灰は島に堆積し、雨に濡れて水分を含み、土石流となって島を蹂躙した。この被害は、特に島の西側と北東側で顕著である。また、上空に舞い上がった火山灰は南西風に乗り、島の北東側に運ばれて降下し、海岸に降り注いだ。一方、陸上の植物は火山灰の堆積、付着、有毒な火山ガスなどにより大きな打撃を受けた。
 しかし、今回のような大量の火山灰とガスを吹き出す火山活動はこれまでと比べて特異的なものだ。現在も火山ガスは毎日噴出し、火山活動がいつ終息するのかは予測が難しいと言う。


今も噴煙を上げる雄山(今年の10月3日 撮影)

 8月の始め、私(モイヤー)は北東部の島下地区の海に潜った。火山灰の影響がもっとも大きいと見られたからである。有名なダイヴィングポイントの釜の尻海岸もここにある。水中の視界はゼロに等しく、海底付近だけが自分の足がやっと見える程度だった。海底は火山灰で覆われ、死んだトコブシの殻が散乱していた。魚類はほとんど姿が無く、沖に避難していると見られた。
数日後の2回目の潜水では、視界はやや良くなり、岩の頂上部に残るマクサ、オバクサなどのテングサ類をブダイが食べていた。火山灰が堆積した海底ではテングサ類やサンゴが死んでおり、付近には大量のカニやヤドカリの死骸が溢れていた。

 9月始めに全島避難となり、今年の1月にヘリコプターから島の様子を観察することが出来た。新芽が出たアシタバやお茶の美しい緑を確認し、ほっとしたものである。その後は、御蔵島を訪れる度に船上から噴煙を上げる三宅島の姿を見つめている。
 
 私は、1962,1983年の噴火も体験し、その惨状と、その後の復興への努力を島民の方々とともに体験してきた。今も、島の復興を祈る気持ちは変わらない。その一方で、ナチュラリストとして火山活動が生物に与えた影響とその後の生物たちの移り変わりにも目を向け、記録を取ってきた。−続く−

事務局より:「ジャック・モイヤー博士のネイチャー・ワークス」は月刊誌「ソトコト」に連載されています。このほかの参考資料はこのシリーズの最後に紹介します(余吾 豊)。



 
アカウミガメが北太平洋を渡って日本へ 9/2/01

 日本ウミガメ協議会から届くウミガメ速報は、初夏からの日本沿岸へのウミガメの産卵上陸や、海岸に漂着したストランディング情報で満載になっています。詳しくは、協議会のホームページをご覧になって欲しいと思います。僕は、8月11日付のウミガメ速報の中のある一つの情報に釘付けになりました。以下に紹介します。単位表記を原文と変えています。

共同通信ニュース速報(8/11/01)
 米カリフォルニア州サンディエゴ沖で昨年10月初旬、生まれ故郷の日本に向け放流されたアカウミガメ3頭が太平洋を順調に横断、うち1頭が既に鹿島灘に到達したことが11日、放流したサンディエゴの研究機関ハッブス・シーワールドの追跡調査で分かった。ブッバと名付けられた、先頭の雄ガメは既に1万km近くを泳ぎ切り、福島県いわき市と茨城県日立市の間の東沖合約16kmに到達。雌のクラッカーズとミハリも日本沿岸まで約2000kmの地点に迫っている。

 3頭とも1960年代半ばからサンディエゴの水族館で飼われていたが、DNA分析で日本生まれの可能性が高く、回帰性などを調べるため放流された。それぞれの甲羅に取り付けた発信機の電波を人工衛星を通じて受信し、移動ルートや速度などを分析。その結果、太平洋を横断する形で分布する水温16〜24℃の水域を、海の道としてたどるように泳いでいることが判明した。

 3頭は体重(放流時)113〜136kgの成体。放流直後から、約9700km離れた日本方面に進路を取り、直線的に泳いでいる。一日の平均移動距離は30〜40km。雌2頭が遅れているのは、食べ物がとれそうな岩礁などに寄り道しているためだとみられている。
 
 協議会事務局より:サンジェゴからエッカートが発信器をつけて放流したアカウミガメが日本沿岸に到着しました。協議会では交換用の発信器をつけて待機しています。それがかなってもう少し追跡できれば、アメリカから渡ってきたカメが日本の繁殖群に入っていく経路を考えるのに貴重な資料がえられます。その他、各地からふ化に関係するニュースが目白押しです。こんなに人間を右往左往させるウミガメ、本当に、全く、大変な動物です。

         (文責 亀崎) 日本ウミガメ協議会事務局


 いかがですか?壮大な旅ですね。この話にはとても魅せられます。

でも、どうして、カリフォルニアの水族館にいたウミガメを放流し、彼らが生まれ故郷?の日本に帰る等と考えたのでしょう?また、サンジェゴから日本中部に向かう北太平洋の航路筋には、島嶼はとても少ないのです。雑食性とはいえ、食べ物、水はどうしているのでしょうね。ウミガメの天敵はサメ、特にイタチザメだそうです。ウミガメと間違えてボディ・サーファーを襲うサメです。それに、日本を間近にしながら、台風12号と出くわしたのではないでしょうか。
 こんな旅を行うウミガメの能力は素晴らしいものですね。

 これから、ウミガメの謎を、文献など当たりながら、少し、調べてみたいと思います。亀崎直樹会長さんを始め、日本ウミガメ協議会事務局の方々は、今、活動シーズンの真っ最中なので、専門家からのコメントは随時、頂くことにし、疑問を抱きながらウミガメ達の世界を覗いて見ることにします。続報が届き次第、お知らせします。

                     AUNJ事務局/余吾

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