日本ウミガメ協議会事務局より
    STSmembers加入のお願い

 日本ウミガメ協議会はウミガメのことを考えるあらゆる立
場の人間の集まる場です。ウミガメに標識をつけてその行動
を追跡したり、全国一斉に死体の調査をしたり、あるいはイ
ンドネシアやモルジブで調査を行ったり、また、行政と協力
してシンポジウムを開催したりと、その活動は多様で活発で
す。会の運営は皆様の会費で成り立っております。
 会員(STSmembers)には各地から寄せられるウミガメ
ニュースをまとめたウミガメ速報がE-mailで配信され、日本
のウミガメの現状が手に取るようにわかります。是非入会し
て活動を助けて下さい。
 入会していただける方は、氏名、年齢、住所(郵便番号)、
電話番号、ファックス番号、電子メールアドレス、会員種別
をお知らせ下さい。尚、年会費は個人会員:3千円、学生会
員:1千円、団体会員:1万円です。
問合先:日本ウミガメ協議会事務局、
電話072−864−0335、
郵便振込:00940-3-1095

  特定非営利活動法人日本ウミガメ協議会
573-0163 大阪府枚方市長尾元町5-17-18-302
TEL:072-864-0335, FAX:072-864-0535
E-mail:JCG03011@nifty.ne.jp
http://www.umigame.org  



   日本ウミガメ協議会よりお知らせ 7/11/2002

 2002年6月28日、奄美大島瀬戸内町の砂浜で、我が国では初めてオサガメの産卵が確認された。産卵を最初に発見したのは同海岸でサーフィンをしていた浅羽慎一郎氏、沖充弘氏、奥村暢男氏。この騒ぎを聞きつけた地元住民や偶然通りがかった学生が産卵を確認した。産卵を観察した東京大学学生野間隆志氏(24才)によるとその時の状況は次の通り。
 28日15時30分頃、たまたま現地に友人と二人で行くと、砂浜に出たところの右100m程のところでウミガメが産卵しており、地元の住民とダイビングにきていた人間が8人で観察していた。見るとその特徴的な形態から間違いなくオサガメであった。既に産卵は終わりかけており、オサガメは隠蔽行動をして海に戻っていった。産卵巣の深さは60-70cm。背甲の長さは140cm、幅80cmで全長は170cm。
これは野間氏の身長と比較してみており、比較的正確だと言える。本種が日本で産卵した記録はこれが初めてである。
 オサガメの産卵する海岸は熱帯海域に限られており、太平洋ではマレーシア、インドネシアのイリアンジャヤ、メキシコからコスタリカにかけての太平洋岸に多く産卵していたが、減少傾向が激しく、マレーシアのように絶滅寸前に達したところもある。


写真は、発見者の沖 充弘氏から提供されたもの。

日本ウミガメ協議会よりお知らせ 4/5/2002

2002年4月
 ご 挨 拶

  573-0163 大阪府枚方市長尾元町5-17-18-302
       NPO法人 日本ウミガメ協議会
          会長   亀崎 直樹

 拝啓
 皆様におかれましては益々ご清祥のこととお慶び
申し上げます。
 さて、この3月に財団法人海中公園センターの解
散にともない、皆様によって支えられてきた竹富町
黒島の八重山海中公園研究所も閉鎖の運びに至った
ことは既にご存じの方もいらっしゃると思います。
 つきましては、様々な方々からの存続の要望があ
りましたし、また、串本海中公園の内田紘臣氏とも
何とか活動を維持する方法を模索して参りました結
果、名古屋鉄道・串本海中公園および海中公園セン
ターのご理解とご協力をいただき、私が会長を務め
ます特定非営利活動法人日本ウミガメ協議会が、施
設を名古屋鉄道から賃借しその運営を引き継ぐこと
になりました。
 問題になるのはその運営予算ですが、委託調査の
請負、黒島の海洋自然のガイドサービスでの収益、
竹富町の助成でまかない、不足分は日本ウミガメ協
議会からの補填を予定しています。また、将来的に
は隣のマリンビレッジ等とも協力し、大学や専門学
校の研修施設としての位置づけも模索していきたい
と考えてます。このような方針は既に竹富町長、同
議会議長、教育長、さらには環境省、黒島マリンビ
レッジにも説明し、協力を要請いたしました。
 また、研究所の実際の運営は学生時代から八重山
研究所に出入りしてきた島達也にアルバイト待遇で
担当させ、他にボランティアの研究者を数名常駐さ
せる予定です。予算が許せば、将来的に島達也を日
本ウミガメ協議会職員にする予定でいます。
 さて、日本ウミガメ協議会とは1990年に発足し
たウミガメに関する研究・保護に関する活動を行う
団体で、会員数は約450人です。2000年には内
閣府によって法人格(特定非営利活動法人)を与え
られております。現在、有給職員は6名、常駐のボ
ランティアは5名おり、本部(大阪府枚方市)のほ
かに東京事務所、小笠原海洋センター、奄美大島事
務所を運営いたしております。年間の予算規模は
3500万円です。尚、亀崎はボランティアで会長を
務めております。
 以上簡単にご説明申し上げましたが、亀崎がこの
施設の運営を引き継がせていただいた訳にはいくつ
かあります。私の八重山でのウミガメ研究の基地を
保存したいというのも大きな理由ですが、八重山海
中公園研究所の次の社会的役割を守りたいという気
持ちが重要な要素となっています。

1 本施設のような自然保護を念頭においた研究所
 は、大部分が公的機関によって運営されており、
 本施設のように民間によって維持されてきた例は
 希有なこと。また、それゆえに自由な研究環境が
 提供されたこと。
2 多くの研究機関が次々と都市部に集約される中
 黒島という極めて僻地に存在し、さらにそれが
 30年も存続した施設であること。
3 机上主義の研究者ではなく、極めてフィールド
 重視型の研究員で構成され、地域住民との距離も
 極めて近かったこと。
4 八重山諸島におけるサンゴ礁のモニタリングや
 黒島のウミガメ産卵のモニタリングなど、20年
 以上も続く通常の研究施設では不可能な長期に渡
 るモニタリング活動を実施してきていること。

 以上のような状況で運営を引き受けることにはい
たしましたが、今後の運営については是非とも皆様
のご協力をお仰ぎしなければいけません。お時間が
おありのときは、是非、黒島に足を運んでいただき
遠慮なく叱咤激励していただければ幸いです。
 また、大きな問題はやはり運営費の捻出であるこ
とは言うまでもありません。今後のご協力をお願さ
せていただくとともに、ここにご報告がてらご挨拶
申し上げる次第です。
                     敬具


「ウミガメ講座」

 日本ウミガメ協議会のご厚意で、協会機関誌であるMARINE
TURTLERより、「ウミガメ講座」の転載を開始します。
 第1回は、松沢慶将氏の「ウミガメが夜に脱出するしくみ」
です。ついで「なぜ子ガメの放流会は保護にならないのか?」良くテレビでも目にする光景ですが、なぜなのか?
案外、誤解もあるようですね。


ウミガメ講座ー2
 「なぜ子ガメの放流会は保護にならないのか」
      日本ウミガメ協議会 松沢慶将
(日本ウミガメ協議会会報、MARINE TURTLER, 2より)

 孵化した子ガメは、一時的に捕獲された後、放流会などで人の手を経て不自然に海に放されることがあります。放流会には地域の子供達とその父兄が参加することが多く、教育および啓蒙効果を期待して行われているようです。しかし、最近の学術的研究によって明らかにされたウミガメの生態と照らし合わせてみると、移植と放流は保護に繋らないどころか、かえってウミガメの生存に決定的な悪影響を及ぼしかねないことがわかってきました。自然界では、子ガメの地表への脱出は夜間に起こります。暗闇の中で脱出した子ガメたちは、仄かに海の方が明るいことを手がかりにして、一気に海へと向かいます。そして、海に入ってからは、波に逆らって泳ぎます。脱出してから約24時間だけは、休むことなく泳ぎ続けます。このような習性は、少しでも大型の捕食者が多い沿岸域からいち早く遠ざかり、保育場に運んでくれる海流に乗って生き残るために役立つと考えられています。

 また、ウミガメには地磁気の変化を感じる能力があるのですが、砂浜を駆けたり、波に逆らって一定方向に進み続けてる間に、その基準となる磁場が刷り込まれるのです。ウミガメは、生涯を通じて大洋を大回遊しますが、地磁気コンパスを積極的に活用しているとする証拠が沢山見つかっています。したがって、子ガメが脱出してから海に入って行くまで間は、単に生まれた砂浜を後にして海へ旅立つというだけではなく、その個体の将来にまで深く影響する能力の獲得が行われる過程でもあるのです。一方、放流会に供される子ガメは、事前に確保されるものが多くなるので、すでに遊泳能力が低下して、沖までたどり着ける確率も下がります。数日間保管された中には、うち寄せる波に逆らって海に入っていく余力さえ残っていない個体もいるでしょう。放流会は人間の都合で昼間に行われることが多く、その結果、子ガメが海に入ると同時に、空から狙っていた大型の鳥に捕獲されるという皮肉な光景を目にすることになります。仮に夜間行われたとしても、子ガメの姿を見るためと参加者の安全のために、ライトが点灯されることになります。砂浜を闇の中で歩くことを許されなかった子ガメは、生涯の指針となる能力を身につけもせずに、一体、何を頼りにどこへ泳いでいくのでしょうか? 放流することが保護で有るかのような錯覚がいつの間にか流布していますが、ウミガメの野生生態を無視した独りよがりの善意は、暴力以外の何物でもありません。

 本当にウミガメを保護したいのであれば、放流会は止める必要があります。それでも教育的な理由など他の目的から放流会を実施するというのであるなら、少なくとも主催者はこれらのことをしっかり認識した上で、決して保護になるとは謳わないべきでしょう。

  ウミガメ講座ー1「仔ガメが夜に脱出するしくみ」
      日本ウミガメ協議会 松沢慶将
(日本ウミガメ協議会会報、MARINE TURTLER, 1より)

 ウミガメはその名の通り生涯を海で過ごす海洋動物ですが、
その一生は地中動物として始まります。砂の中に産み落とさ
れた卵から、早ければ産卵後40日あまり、遅くても80日ほ
どで仔ガメが孵化します。砂の中で生まれた仔ガメは生き埋
めになってしまうことなく、数日後には地表に脱出してきま
す。巣穴は地表から50cmほども下にあります。一説には砂
浜にできた車の轍を乗り越えられないとも言われる仔ガメが、
そんなに深いところからどのようにして脱出してくるのでし
ょうか?
 孵化直前の卵の中で、半分は仔ガメが占めていますが、残
りの半分は羊水や老廃物を含む水分です。仔ガメが卵の殻を
破って外に出るときに、この水分は下へこぼれ、卵の殻は潰
れてしまうので、巣穴の中には余分な空間ができるわけです。
仔ガメが動き出すと、天井の砂が徐々に崩れ落ちます。その
中を這い上がって、仔ガメは上へ上へと移動していくのです。
 地表へ向かった仔ガメは、闇雲に掘り進むわけではありま
せん。多くの場合は、10cmほどの深さまで到達すると一旦
そこで待機します。そして、夜になると一斉に脱出するので
す。フロリダの海岸で地表への脱出のタイミングについて詳
しく調べた例によると、約4分の3の脱出は、午後10時から
午前2時までに起こっていました。例外的に大雨が降った後
には日中でも脱出することもあり、特に雨が多い屋久島では
このようなことが頻繁に起こりますが、基本的に仔ガメは夜
に脱出します。なぜ、昼間ではなく夜なのでしょうか?
 昼間、砂浜の表面は50℃以上にもなります。仮に仔ガメが
昼間に地表に脱出してしまったら、波打ち際にたどり着く前
に暑さのために死んでしまうでしょう。また、昼間は、目が
よく利く大型の捕食者が空からも海からも仔ガメを狙ってい
ます。仔ガメが夜間に脱出するようになったのは、このよう
に昼間は生存のために不利な条件ばかり揃うからだと考えら
れています。では、仔ガメは砂の中で、どのように脱出のタ
イミングを見計らうのでしょうか?
 ヒントは、通常は夜間だけに、そして大雨の直後には昼間
でも脱出することがあるという点にあります。両者に共通す
ることは、地表近くの温度の低下です。実際に、アカウミガ
メの脱出が起こる時の砂の温度を詳しく調べた例によると、
地表の温度が32.4℃以上であることはほとんどなく、最も多
かったのは、これより僅かに低い温度の時でした。また別の
研究では、仔ガメは周囲の温度が高いと、その活動性が著し
く低下することが分かっています。仔ガメは、砂の温度が熱
い状態を嫌い、周囲が適度に涼しくなることを手がかりに脱
出のタイミングを見計らっているのです。
 夏、ウミガメの産卵地の砂浜には、いろんな人がやって来
ます。大勢仲間を引き連れてきて、ウミガメについていろい
ろと説明をはじめる人も少なくありません。何食わぬ顔で聞
いていると、「ウミガメは、産卵された時と同じ時間にかえ
るから、仔ガメを見たかったら、産卵したときの時刻を覚え
ておくといい。」とか、「ウミガメの赤ちゃんは、大潮の満
潮になると砂から出てきて海に向かうんだ。」と言う珍説も
飛び出します。
 みなさんは、どんな珍説を聞いたことがありますか?


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