FIELD NOTE No.7

FIELD REPORT はあるテーマに添って長期観察したレポートですが、このコーナーはある日の出会いといったものを出していただいています。たった一回の観察だからなんて思わずにどうぞお寄せ下さい。あるちょっとした出会いから発展していくことも多いと思います。

隠岐での海藻群落の衰退 新井章吾 04/08/06
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隠岐での海藻群落の衰退 新井章吾

1.芝刈り状態のエビアマモ


02/09/05 島根県隠岐郡西ノ島町国賀海岸 水深2m

エビアマモはアマモの仲間で、岩の上に生育しています。これまでに各地で潜
水していますが、隠岐のエビアマモ群落の面積が最も広いです。天然記念物の
クロキズタ調査中の9月に、芝刈り状態になったエビアマモの群落を発見しま
した。全長20〜30cmのアイゴが、エビアマモだけを選択的に採食していまし
た。周囲に混生しているアラメとホンダワラ属は全く採食されていませんでし
た。

私が学生時代からよく潜水していた千葉県、神奈川県、静岡県において15年く
らい前まで、もっとエビアマモが生えていたと思うのですが、最近あまり見か
けなくなりました。アイゴの選択的な採食によって、絶滅した地域もあるので
はないかと思っています。

隠岐では2年前からアイゴの成魚と幼魚の越冬個体群が増加しているようで、
今後も日本海南部における冬期水温が上昇すれば、アイゴの採食圧が増加し、
南西日本沿岸のように急に磯焼け域が拡大する可能性があります。

アイゴが大型褐藻より高い嗜好性を示すアマモやエビアマモ群落の衰退や消失
は、大規模な磯焼け発生の前兆現象として捉えられるのではないでしょうか。

アイゴによるアマモ採食に関する論文のダイジェスト
http://www.aqua-scape.co.jp/aqua-news2005jul.htm

がありますので、興味ある方はこちらを参照ください。


2.隠岐の磯焼け


02/09/05 島根県隠岐郡西ノ島町国賀海岸 水深2〜15m

エビアマモの生育地近くの瀬に、無節サンゴモの優占する磯焼け域が局所的に
ありました。ウニと貝の密度は低く、常在するメジナの群れと、ときどきやっ
てくるアイゴとニザダイの群れが、大型褐藻の芽を採食し続けるため、磯焼け
が維持されていると推測されますが、確認していません。

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