FIELD NOTE

 FIELD REPORT はあるテーマに添って長期観察したレポートですが、このコーナーはある日の出会いといったものを出していただいています。たった一回の観察だからなんて思わずにどうぞお寄せ下さい。あるちょっとした出会いから発展していくことも多いと思います。
 
 


No.9 「砂に潜るイソギンチャク、この種名は?」
平山 昌 SHO HIRAYAMA 08/20/06

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砂に潜るイソギンチャク、この種名は?

始めに

 以前からこの種名がわからないイソギンチャクの種をあきらかにしようと思っていましたが、のイソギンチャクはこの前報告したウミサボテンとほぼ同じポイントに生息しています。沼津市千本浜水深10m位の砂底です。体は砂の中に埋もれ、触手だけを砂の表面に放射状に出しています。先月06年7月にこのイソギンチャクのすごい捕食シーンを偶然観察できたので、記録に残そうと思いました。

観察したこと


写真1、蝕手を砂中から放射状に出している様子
2006年8月6日、21時頃、沼津市千本浜海岸、水深11m、水温18度 

 7月に観察した時、泳いでいた4cm程のサビハゼが蝕手に触れたとたん、直ぐに砂中から口盤部分が盛り上がり、サビハゼを呑み込んで蝕手もろとも砂中に消えたのでした。そこで、今回、それを再現しようと思ったのですが、サビハゼが簡単に捕まらないため、近くで眠っているアミメハギを捕まえ、イソギンチャクの蝕手に捕まえさせてみました。すると、口盤というのか、口の部分が砂の上に出てきてアミメハギを呑み込み始めましたが、前回のサビハゼのようなダイナミックな行動は見られませんでした。


写真2、アミメハギを呑み込もうとしています、中央に口の部分が見えます
2006年8月6日、21時頃、沼津市千本浜海岸、水深11m、水温18度

 なお、前回7月、このイソギンチャクの正体を確かめようと体幹部分を引き出
そうとしてみたのですが、砂を掘ろうとした瞬間に蝕手部分も沈み込み、15cm程掘っても空洞しかなく、体幹や足盤部分は相当に下のほうにあるようでした。

 このイソギンチャクは普段は蝕手だけを砂の表面に出し、獲物を捕らえると口の部分が表面に出てきて呑み込みます。おそらく獲物と砂を一緒に飲み込まないための捕食方法なのだろうと思います。

 しかし、何故、7月の時のような口盤部分のダイナミックな動きが今回には見られなかったのかは不明です。
 
 終わりに

 
参考文献は内田紘巨著「イソギンチャク・ガイドブック」(阪急コミニケーションズ)です。体の各部の名称もこれで調べました。 このイソギンチャクの種名を調べてみたのですが、キノコギンチャクかコンボウイソギンチャクが近いように思えましたが、どうでしょうか?

 このリポートを出した後、講師の野村恵一さんを通じて、内田弘臣先生よりイソギンチャクの同定結果を知ることが出来ました。心より、お二人に感謝する次第です。

終わり



−事務局より−

 
まず、正体については串本海中公園センターの野村恵一さんを通じ、内田紘臣さんより以下のコメントを受け取りました。

「内田さんに画像を見てもらいました。コンボウイソギンチャクでよいそうですが、日本海の魚津でしか見つかっていないそうで、太平洋岸では初めての確認です」

 いやはや、夜間の海底では色々なことが起こっているものですねえ。前のウミウシがウルトラQなら、これはB級映画の「トレマーズ」といったところか?

                   余吾 豊 08/03/20

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