FIELD GUIDE No.001

 原田さんより、葉山のフィールド紹介がありました。
  皆さんもご自分のフィールドを紹介してみませんか?

フィールドガイドー葉山芝崎海岸
 原田 龍二

1.葉山芝崎海岸はどんなところか?

神奈川県三浦郡葉山町にある芝崎海岸は都心から近く、手頃な
ダイビングポイントである。
西に富士山や江ノ島、裕次郎灯台、南に葉山御用邸とロケーシ
ョンは非常に良い。海の彼方に沈む夕日を眺めるのもまた良い
場所である。週末はスクーバダイビングに来る人々で賑わいを
見せている。

(写真1)


夏は海水浴や磯遊び、磯の生物観察会にと人々が訪れる。

2.ダイビングスタイルとポイント概要

芝崎海岸は葉山町が天然記念物に指定した珍しいケースの場所
でもある。海岸の入り口に看板を立て、歴史や特徴を説明し、
環境保全を呼び掛けている。

(写真2)

規制は漁業法や条例、潜水エリア、保護エリアに関わるものがあ
る。それらを守った上で潜るならば、基本的に自由にタンクを
持ち込んで潜れる。特に時間帯の制限は決められていない。
近郊のダイビングショップの利用者だけではなく、いわゆるマイ
タンクを所有している人達も潜りにくる。

(写真3)

海岸からタンクを背負って海に入るビーチエントリースタイルを
取る。沖合いでのボートダイビングは行われていない。
ポイントに辿り着くまで、器材を背負って歩く距離や水面を移動
する距離は長い。これが葉山芝崎海岸の特徴でもある。
体力のない人がエントリーするには多少なりともきつい面がある
のは否めない。
ポイントは権太郎岩と170度の根の2箇所、及びそれぞれの周辺
を潜るのが一般的だ。
深度は両方ともさほど深くないため、じっくりと時間をかけて観
察したい人に適している。また、タイドプールもある。

(1)権太郎岩

水深は最大でも満潮時で18メートル程度と深くはない。
起伏に富み、根が複雑に入り組み、水路や垂直な壁を形成してい
る。生物観察を楽しむダイバーだけでなく、地形の景観を楽しむ
ダイバーにも好評だ。
海藻が豊富で、地形的な条件もあいまって生物達の格好の棲み家
を作り出している。
権太郎岩から少し離れた沖合いの根にはウミトサカやイボヤギな
どのカラフルな無脊椎生物も多い。またオノミチキサンゴも見る
ことが出来る。

(2)170度の根

水深は最大で15メートル程。
その名の通り、基点からコンパスを170度に合わせて進めば大
きな根にたどり着く。
ガイドロープがあり、170度の根までダイバーを確実に導いて
くれる。講習やナビゲーションのトレーニング等に適した環境で
ある。
全体的に遠浅で平坦な印象があり、根の周辺と沖合いは砂地が広
がる。基点から170度の根までは一面にカジメやホンダワラ等
の海藻が広がり、徐々に深くなる。

(3)タイドプール

深さは最大でも大人の腰程度。スノーケリングでも十分に楽しめ
る。大潮の満潮時には仔魚や幼魚、種によっては成魚も入ってく
る春先にはアメフラシやウミウシの産卵が活発で、あちこちの岩
肌で卵を見ることができる。
子供が磯遊びやスノーケリングで遊ぶにも適しており、保護者の
眼が行き届きやすい場所だ。

3.生物相概要

年間を通じて様々な生物で賑わっている水中はバラエティーに富
んでおり、葉山町指定天然記念物の価値は十二分にある。
魚類は食用、観賞用の魚が揃い、秋から冬にかけては無効分散の
魚が水中に彩りを添えてくれる。藻場や岩礁帯に生息する種が多
い。水温が高い年は、越冬する種も中にはあり、定着が見られる
ことがある。
定着する種の増減は多少あり、微妙に魚類相の変化を見せている。
ここは海藻が豊富で、特に3月から6月の間はダイバーの足に絡
んでくる程生える。
カジメなどは荒れた後の海岸を歩くとよく打ち上がっている。
ヒジキや岩海苔、テングサは地元の人達が食材調達のために採取
しているのをよく見る。
海藻の他にもウミシダ、フトヤギ、イソバナ、ムチカラマツ、ホ
ヤ類、ウミトサカ、カイメン類などもあり、色鮮やかな風景を作
り出しダイバーは見かけている。しかし、風景の一部として見過
ごしてしまう場合もあるようだ。
これらの動物は時として他生物の寄生宿主としての役割を持つこ
ともある。ウミウシやエビ、カニ、ヤドカリ等にも棲みやすく、
餌に困らない環境を与えている。

4.その他

フィールドの観察だけでなく、博物館等を利用するのも葉山を知
る上で有効な手段である。
観光をかねて『しおさい公園』へ行くと良いだろう。

(写真4)


芝崎海岸から徒歩5分程で行くことができ、葉山御用邸と隣接し
ている。園内にはしおさい博物館がある。
地元で観られる魚や生物の標本、剥製、古民具、昭和天皇の標本
コレクション等が展示されている。
海辺にあるとは思えないほど静かな佇まいで、庭には茶室もある。
陸から海からと見て行くとより深く葉山を知ることができる。

アフターダイブには洒落たレストランや料亭等へ足を伸ばして楽
しむのも一興。和食、中華、フランス料理やイタリア料理等、雑
誌等で紹介されている店も多い。



事務局より:都会から近いフィールドの案内ですね。
海の中の様子だけでなく、地域社会の中でのフィールドの性格や、
関連する陸上の施設なども紹介されています。原田さんがこの海
岸に寄せる思いがよく伝わってくると思います。

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