LABORATORY-2

WEB SEMINARにLABORATORYというコーナーを作りました。
トップは今泉さんが田辺で見つけた卵塊のついて思わぬ発展がありました。
続いて、富戸より石田さんからミクリガイの卵塊と思われるレポートが届きました。この展開のスピードに事務局としては嬉しい悲鳴を上げています。

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謎の卵塊−2 アンカーの卵           石田 根吉

 2002年5月26日、富戸・ヨコバマの水深16m(水温19℃)の砂地で下の写真の様なものを見つけました。


 高さ約2cm、幅約1cmの無色透明、平滑、硬質なカプセルの中にオレンジ色の粒々が入っていました。厚みは僅か数ミリ程度で、丁度木の葉っぱの様な形でした。このカプセルが、8x4cmのエリアの中に9つ並んでいました。
 一見して何かの貝類の卵だろうと思われました。図鑑で以前見た事のあるテングニシの卵に似ていました。しかし、後で確認してみると、テングニシの卵はもっとハート型に近い形でした。果たして何なのだろうと一つ一つのカプセルを見て回りました。 

 その中に上の様な卵嚢がありました。矢印の部分を御覧下さい。卵嚢内にもう一つ別の小さな丸い卵嚢があってその中に二つずつ卵が入っているように見えるのです。これを見た途端、平田さんが報告なさっていた「一つの卵嚢に二つの胚がある異常発生個体」を思い出しました。が、海の中ではこれ以上確かめようがありませんでした。

 さて、全ての卵嚢を見たところ9つの内、3つは既に空っぽでした。もう既にハッチアウトしてしまったのかもしれません。とすると、この卵嚢の中のオレンジ色の卵も実はもうヴェリジャー幼生になっているのかもしれません。

 ところで、不思議だったのは、こんなに小さな卵嚢がどうやってサラサラの砂の上に固定されているのだろうという事でした。少々の粘着物質があっても簡単に流されてしましそうです。
 そこで、空っぽの卵嚢でそれを確かめてみました。
 「空っぽならば、あれこれいじくり回しても大丈夫だろう。」 

 そこで、卵嚢の根元を掘ってみると、なんとそこから細い糸がドンドンと砂の中に伸びて行くのです(写真の矢印に沿って糸が伸びています)。そして更に驚いたのは、その卵嚢の根元の砂の中から上の写真の様な貝が出てきたことです。
 「ひょっとして、こいつがこの卵の親で、砂中から卵を守っていた
  のだろうか。それとも、単なる通りがかりの貝なのかな?」
貝の事はよく分からないのですが、後に図鑑で調べて見ると、ミクリガイという貝に似ているように思えました。

 ところで、一方、掘り出した卵嚢を陸上に持って上がってよく見てみました。


 およそ2cmの卵嚢の下に4〜5cmもの糸が繋がっていたのです。更に驚いたのは一番下にはアンカーの役目を果たすものが付いていた事です。アンカー部分は柔らかい皮の様な手触りでした。表面に砂粒がかなり強固にくっ付いていたので元はかなり粘着質であったのかもしれません。この砂粒をこすり落とそうとすると、この皮部分が比較的簡単に破れてしまいました。これだけ念の入った構造ならば簡単に流される事もないでしょう。
 「でも、」
と不思議は更に広がります。これがミクリガイだか何かの卵だとして、一体母親はどんな風にしてこいつを砂に産みつけたのでしょうか。砂の中に潜ったり這い出たりを繰り返しながら一つ一つ産んだのでしょうか。
 この卵嚢(?)の正体、貝の名前、産み付け方などご存知の方、または「私も見た」という方は是非お話いただければ幸いです。
追記;この卵嚢は翌週の6月1日にはすべて空っぽになっていました。

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