BROWSING ROOM

このコーナーでは、AUNJ事務局に届いた機関誌などから、これは!と思われる情報やエッセイ等を紹介します。
(執筆者の敬称は略させていただきます)


No.023(04/04/04)
マリンパビリオン 33 (2) より
(串本海中公園センター発行)

宇井晋介
「続 錆浦で見られる大型褐藻類の減少。棘皮動物との関係」

 「磯焼け」において動物(魚類・ウニ類)による食害が大きな影響を与えることは良く知られているが、錆浦においてはウニ類の食害が激しい。錆浦では、従来のウニ類に加え、ナガウニ、ガンガゼ、クロウニ、タワシウニが急速に増えてきており、これら4種はどれも南方の仲間であり、高水温化の影響と密接な関係を示しているのは、間違いない。

 ウニ類は、ムラサキウニを除けば、背の高い海藻によじ登って、葉体を食べるのは苦手であるが、大型褐藻の現象と関係が薄いかというとそうではない。背の高い成体を食べなくとも、着生したばかりの幼体は簡単に食べることが出来るし、これらは皮肉なことに、葉が柔らかく、彼らの大好物であるからだ。

 事務局より:宇井さんの錆浦での海藻の記事は、No.005, 015, 021 でも紹介しています。

No.022(03/30/04)

西日本新聞 3/29夕刊より

「イカにも右利き、左利き」

 高知大、山岡耕作教授の研究が紹介されており、ホホウと思いました。
コウイカがエビを捕食する際、エビのどちら側から回り込んで襲うかを調べたところ、11匹の内、10匹が明らかな偏りを持っていたそうだ。

 解剖して甲の形と動きの関係を調べると、右攻撃型のコウイカは、甲が左に、左攻撃型のコウイカは、甲が右に曲がっていたという。

 軟体動物では、右利き、左利きがあるのは初めて分かった例となり、見方を変える必要があるでしょうとまとめている。

 よし、今度は、甲を拾ってみよう。

No.021(06/17/03)

マリン・パビリオン 32(3)より
(串本海中公園センター発行)

宇井晋介
「錆浦で見られる大型褐藻類の減少」

 1990年より継続されている有田湾周辺の海域潜水調査結果から、海藻類の出現種数と出現量を水温変化と対比させて纏めたレポートである。この13年間に、海藻の総出現量は減少を続け、特にここ5年間が著しい。減少は褐藻類で顕著であり、緑藻類、紅藻類には目立った変化がない。当水域の褐藻類で優占するのは大型褐藻のホンダワラ類であり、このホンダワラ類の減少が際だっている。
 ホンダワラ類の内訳を見ると、ヨレモク、タマナシモク、コブクロモク等かっての主要種が消失している。これらは温帯域に適応したホンダワラ類である。また、高水温に耐性のあるフタエモクも、上記3種ほどではないがやはり減少傾向にあり、温帯性の大型褐藻だけが減少しているとは一概に言い切れないのである。
 考えられることは、イシサンゴの白化が起こった翌年に、ホンダワラ類の出現量が大きく減少していることから、夏期の異常高水温によってホンダワラ類の配偶子放出や幼体の成長が阻害され、翌年の出現量に反映されている可能性がある。また、夏期の台風による配偶体や幼体への被害も起こっていると考えられる。原因の特定は難しく、定点での継続観測が重要なことは言うまでもない。

 事務局より:温暖化、高水温傾向といっても、各水生生物に強く影響する水温のファクターは、年間を通しての水温なのか、季節的な水温なのか、もっと一時的な水温なのか、良く精査する必要があります。また、藻食性動物による食害、あるいは藻場の衰退に伴う藻食性動物の動態も調べなくてはなりません。他の海域でも同様な調査が望まれます。

No.020(02/07/03)

YNAC通信16号より
(屋久島野外活動総合センター発行)

松本 毅「海洋レポート」
 コブハマサンゴの表面にピンク色のつぶつぶがついているが、これは一体何だろう?その追跡報告である。

 ハマサンゴ類にはイバラカンザシが沢山穿孔している。注意してみるとコブハマサンゴに付いたイバラカンザシだけ、その口の周りがピンク色になっている。また、着生したばかりの棲管もピンク色になっている。と言うことで、ピンク色はイバラカンザシが着生したときの色が後まで残っていると思われた。

 ところが、その後、コブハマサンゴを見ている内に、イバラカンザシとは違うピンクに出会ったのである。これらはサンゴの周辺に着生している海藻類とサンゴの接触面に添ってサンゴの表面に盛り上がるように続いているのである。ひょっとすると、サンゴが海藻やその他の生物の着生を阻害しようとして分泌する物質の色ではないだろうか?
 

No.019(02/04/03)

マリン・パビリオン 32(1)より
(串本海中公園センター発行)

宇井晋介
「錆浦定置観測2002年のまとめ」

 1974年より2001年までの気温、水温、塩分濃度、降水量、水中透視度の測定値から求められた平均値が平年値として2002年の測定値と比較されている。
 気温:1〜2月は寒暖の差が大きかったが、春以降は平年並みに推移した11月に急に冷え込みがみられた。年平均値は、17.0℃で、対平年値は-0.6℃、対前年値は-0.3℃。
 水温:相変わらず高水温傾向が続き、特に2月から8月までは平年値よりも1〜2℃高かった。年平均値は21.8℃で、対平年値は+0.6℃。
 塩分濃度:黒潮がやや接岸傾向だったが、流路は不安定。年平均35.0‰、平年値と同じ。(その他は略す)
 
 この2年で、水温の年平均値は1℃上昇している。死滅越冬種とされていた魚類で、越冬したとみなされる大型個体の視認、漁獲が注目されている。一方で、イセエビ漁は著しい不漁である。

No.018(10/06/02)

マリン・パビリオン 31(5)より
(串本海中公園センター発行)
・御前 洋
「いそこじき」
 最近の串本からの初記録種5種が紹介されている。
 スジスズメダイ 体長73mm  04/19/00
 イレズミニザ  体長240mm  12/21/01
 ミナミメダイ  体長345mm  02/10/02
 キビレカワハギ 体長228mm  03/17/02
 アラレフグ   体長510mm  07/15/02

・小寺昌彦
「デバスズメダイとアオバスズメダイ」
 錆浦地先のクシハダミドリイシ群落でデバスズメダイ幼魚の群れが観察されているそうだ。また、1998年には、ソラスズメダイの群れの中に全長3センチ余りのアオバスズメダイが混じっていたのが確認されている。極めてデバスズメダイとよく似ているため、今回、詳しく観察してみたが、すべてデバスズメであった。今後も、注意深く観察する必要があるとのこと。

・宇井晋介
「錆浦の海から」
10年前には、極めて稀であったニセゴシシウツボが数年前より増え始め、ウツボにとって代わる勢いとのことである。

No.017(9/27/02)

マリン・パビリオン 31(4)より
(串本海中公園センター発行)

宇井晋介
「ミステリアス・ゾーンー特異な海藻植生を有する海域ー」

 潮岬周辺海域の海藻植生についてのノートである。

 紀伊半島南端に位置する潮岬を挟んで、その西と東では生物相に大きな違いが見られる。海藻植生についてみると、東側の熊野灘側では、カジメ、アラメをはじめとする大型褐藻が植生の中心となっているのに対し、西側の枯木灘側では、大型褐藻は皆無であり、緑藻類のイワズタ類やバロニア類が多くなり、亜熱帯的な景観を示している。
 東西では水温差が時に3〜4℃程も異なることがある。これは西側には黒潮が直接ぶつかるのに対し、東側では遠州灘方面から左回りの渦流が生じ、紀伊半島東岸に沿って低水温の海水が寄せてくるからである。
 また、西側でも、田辺より北側沿岸では、大型褐藻が生育、分布しており、これは、瀬戸内海の沿岸水の張り出しと黒潮の影響が小さくなっているからである。従って、亜熱帯的な海藻植生が見られるのは、田辺から潮岬に至る紀伊半島の南西側海域に限られている。

 串本から逆ハート型のようにぶら下がる潮岬では、特に潮岬北側の海域が面白い場所である。ここは黒潮の影響を真っ先に受ける場所でありながら、大きな波を遮断する地形となっており、内海的な環境も併せ持つのである。

事務局より:この潮岬北岸がミステリアス・ゾーンだそうです。海藻ではヒビロウド、ツカサアミ、フサノリ等の鮮やかな紅藻類が豊富で、南紀では、ここだけでしか見られない景観だということです。海藻だけでなく、センベイアナサンゴ、ヒレジャコ、トウカムリなどの発見が相次ぎ、潜水する度に、新鮮な出会いがあると宇井さんが書いています。南紀をフィールドとする皆さん、この次に行かれたら、もう一度、新たな視線でみつめて来て下さい。

No.016(8/5/02)

YNAC通信15号より
(屋久島野外活動総合センター発行)

松本 毅「屋久島のキンチャクダイ科魚類」
 前報のチョウチョウウオ科魚類に続いて、水中写真入りの報告。6属13種が挙げられている。キンチャクダイ属が1種も分布しないのが興味深い。又、ハレムを作るとされているトサヤッコは個体数が少なくペアで居るそうだ。facultative monogamy ・・・?

浜崎宏美「海の中のお花畑」
 ナマコ、コブシメに続いて、今回はイバラカンザシの巻。
イバラカンザシの群生は、ブダイの捕食からサンゴを守るのか・・・との考察もある。
 その他、「ウミガメの脳、イルカの脳」市川 聡さんの深い論考、鷲尾紀子さんの楽しいオタマジャクシ飼育日記、岡田愛さんの何ともうらやましい「ニュージーランド紀行」なども。
今回は台風にもめげず、頑張りましたね。

No.015(2/1/02)

マリン・パビリオン 31(1)より
(串本海中公園センター発行)

宇井晋介
「錆浦定置観測2001年のまとめ」

 1974年より2000年まで続けられている気温、水温、塩分濃度、降水量、水中透視度の測定値から求められた平均値が平年値として2001年の測定値と比較されている。
 気温:ここ数年の暖冬傾向とは異なり、平年並みに寒い冬となった。年平均値は、17.3℃で、対平年値は-0.5℃と2000年と同じ。
 水温:気温とは逆にやや高温で推移。平年並みに下がった。年平均値は21.6℃で、対平年値は+0.4℃。
 塩分濃度:黒潮がやや接岸傾向。年平均35.0‰、平年値と同じ。(その他は略す)
 稀少であったイシサンゴ類、ヒトデ類、貝類等の熱帯種が増加し、ホンダワラ類を除く大型褐藻の減少が著しい。


No.014(1/20/02)

「二十一世紀に水族館は」 鈴木克美 1999
              博物館研究 34(12):4-9 より

本会評議員である鈴木克美氏の論文より抜粋して紹介します。
 
日本の水族館史、水族館の持つ教育と研究の役割、今後のあり
方が述べられていますが、その序章にこんなことが書かれてい
ます。

「日本は海洋国家で、海洋民族である・・・という。しかし、
著者はそうは思わない。海と海の環境、海の生物についての
日本人の無関心さは、いったいどうしたことだろうか。
−中略ー
人々が陸から海面を眺めて、海を見ると安心し、気づかずに
いるうちに、海の自然は大きく変貌している」

 
 その変貌ぶりの例として、ハマグリの危機的な減少、お住
まいの近くの三保海岸での砂浜が痩せていくことを挙げられ
ています。また、海洋生物を学ぶ大学生があまりにも生物に
慣れ親しんでいないことにため息にも似た声を漏らされてい
ます。

 さらに、あとがきには、

「二十世紀は工学の時代であったが、二十一世紀は生物学の
時代だという意見もある。育種遺伝、遺伝子組み替え、DN
A研究・・・
 生物学がメジャーになるかも知れない時代に、手近の海の
こと、海の生き物のことが相変わらずきちんと説明できない
のはくやしい」

少なくとも、我々、AUNJに集うものは、海を見つめ、
しかも、海の中まで入って目を凝らすものとして、次世代に
海の中に親しむ姿勢を引き継がせていきたいものですね。
 この論文の骨子である、水族館の教育と研究の役割につい
ては、項を改めて紹介したいと思います。
 

No.013(11/21/01)

海中公園情報 133号より

 「第1回海辺の環境教育フォーラムの概要」 高橋啓介
今年の3月に静岡県賀茂村で開催されたフォーラムの内容紹介です。

 第1回目の開催で、全国より60名の参加があり、海野義明氏の基調講演に続いて、全体会では、各地で展開されている環境教育活動の事例報告、分科会では今後のあり方の討議が行われ、最終日にはエクスカーションという3日間にわたったフォーラムだったそうです。
 屋久島野外活動センターの松本 毅氏の報告も紹介されています。浜崎さんも出席されたそうですね。来年も開催されるとのことで、この次は是非参加したいなと考えています。会の内容や今後の予定などは下記ホームページで閲覧できます。
 http://interpreter.ne.jp/umibe/

No.012(11/6/01)

I.O.P.DIVING NEWS 12巻11号より

 I.O.P.DIVING NEWSは学術性の高いニュース誌で、会員の方の中にも購読されている人がいると思います。今月号より、「ウミウシ・ウォッチング」の連載が始まりました。著者は鈴木敬宇氏で、平野義明氏が監修を担当されます。本号では、連載にあたり、編集部の方針が紹介されています。
 その趣旨は、生物を観察し、撮影した場合にきわめて重要となる名称の問題をどう取り扱っていくかに関するものです。要旨を下記に示します。

 ウミウシ(後鰓類)の分類はまさに発展途上にあり、多くの未記載種が発見される一方で、種を判別する重要な基準となる色彩にどれほどの変異があるのか謎が多いのが現状である。分類学的な位置づけが不明確なまま数多くの仮称や愛称が産まれ、これらが急速に普及する状態となっている。
 この連載では、名称に関する無用の混乱を避けるため、学名を表題に採用し、ダイバー間に普及している名称を持つ種については、その名称が提唱された文献をはっきりと示し、標準和名とその他の名称の混乱を防ぐよう配慮する。

 編集人の瀬能 宏氏は、英名、和名というコモン・ネーム(愛称、仮称も含める)がもたらす混乱を解消すべく努力されている方です。「ウミウシガイドブック」の出版は様々なインパクトを与えましたが、混乱も生じたと聞きます。この連載が、ダイバーと研究者の間に立って、ウミウシ・ウォッチングがますます発展することを祈りたいと思います。
 

No.011 (8/22/01)

ウミガメ速報01-20(8/21)より一部を紹介 

8/15の琉球新報より
大宜味村内のいくつかの砂浜では ウミガメのふ化が始まっている。6月
下旬に産卵が確認されていた同村塩屋漁港側の砂浜では10日夜、地域住民
らが静かに見守る中、三匹のウミガメがふ化。一生懸命に海を目指す子ガメ
の姿に、集まった人々は感動を味わっていた。 ウミガメは満潮時の深夜に
ふ化することが多いことから、人々は”カメ時間”に合わせて行動。午後1
0時すぎ、砂浜には地域の子どもからお年寄りまでが続々と集まり、カメの
じゃまをしないように、静かにふ化を見守っていた。 午後11半ごろ、鼻先
を少しのぞかせた子ガメは、小さな手足でゆっくりと砂をかき分け、約1時
間後、かわいらしい姿を現した。息をひそめてのぞき込んでいた人々は、思
わず喜びと安どの表情。元気よく海を目指す子ガメを応援するように、行く
手の枝を取り除いたり、光 りで誘導したりと、大海原に旅立つ子ガメを思
い思いに見守っていた。聴診器を砂の中に入れ、ふ化の状態を音で確認して
いた「大宜味ウミガメを愛かなさする会」の米須邦雄会長は「今年はふ化の
様子が例年と少し違う。約1週間程度早く、ふ化の数が少ないようだ」と話
す。産卵が確認されている場所は15カ所。前年の三倍だが、上陸するウミ
ガメは年々減っているという。「5、6年でパターン化はできない。やはり
長期間の調査をしないと、詳しくは分からないね」と、米須さんは静かに語
っていた。
日本ウミガメ協議会事務局 
TEL:072-864-0335, FAX:072-864-0535, E-mail:JCG03011@nifty.ne.jp、
http://www.umigame.org

事務局より:何とも、ほのぼのする光景ですね。最後の米須さんの言葉は、
自然を観察する際の基本的な態度ですが、大変に難しいことだと思います。

No.010 (8/1/01)

YNAC通信 No13(2001.7.1)より一部抜粋して紹介。
(屋久島野外活動総合センター発行)

「訪問客とともに」・小原比呂志 エコツーリズムについての一つの卓見。
ダイヴィングやイルカ・ウォッチングでも同じ問題を抱えている。
一部を引くと、「訪問となれば物を言うのは地域の品格そのものである。 どうしたって、受け入れ側が地域そのもののあり方を考えなければならなくなる」
「イカの愛」・浜崎宏美
おなじみ、浜崎さんのコブシメ観察記。モンスターへの愛が溢れるエッセイで、読み応えあり。
「正シイ野糞ノススメ」・鷺尾紀子
水中とはまた別の問題を抱える。自然に優しい対処法。実に面白い。
他に「もののけ姫考」、「ヤクシカの角ってどんな形?」等。

No.009(5/16/01)

マリン・パビリオン 30(4)より
(串本海中公園センター発行)

宇井晋介
「アンボイナガイの捕食行動(その1)」

アンボイナガイは熱帯性の巻貝で、紀伊半島では稀に捕獲される程度であったのに、暖冬傾向の中、一昨年から昨年にかけて、イセエビ刺し網で近年にないほど多く捕獲されたそうです。捕獲したアンボイナガイを使ってその捕食行動を観察した結果が報告されていますのでご紹介します。

アンボイナガイは、イモガイ科の巻貝の1種であるが、貝類の中でも珍しい魚食性である。イモガイ科の種は、動物食で魚食性、貝食性それに虫食性(ゴカイなどを食べる)のどれかに分類されるが、魚食性のものは比較的限られている。その中で、アンボイナガイの仲間は人を死に至らしめるほどの毒を持つことで広く知られている。

アンボイナガイは細く、長く伸ばすことができる吻の先端から、モリ状の毒針を射出して獲物を毒殺し捕獲するが、その捕獲法については、吉葉(1997)により以下の3つに分類されている(出典は下記参照)。

1)吻だけを長く伸ばして獲物の体に一瞬押し当て、毒針を射出する
2)吻を包む吻鞘とよばれる部分をラッパの様に広げて獲物を押さえつけ、その内部で吻をわずかに伸ばして毒針を射出する
3)吻鞘だけをラッパ状に伸ばして広げ、獲物を丸ごと包み込んでしまい、その後、吻鞘内でとどめの毒針を打つ

そこで、どういう時にどの捕食法を選択するのかを観察してみた。死んだ魚を与えた場合には、3番目の方法で捕食した。生きた魚の場合にも、ハゼなどの底生性の魚を捕食する場合には、同じく3番目の方法を使った。では、中層を泳ぎ回る魚はどうやって捕食するのかということで、ハゼとクロホシイシモチを同じ水槽に入れてやると、食べられるのはハゼばかりであった。どうも泳ぎ回る魚は苦手のようである。でも、ハゼを全部食べてしまうと、クロホシイシモチを捕食しようとした。その時に使うのが1番目の捕食法であった。ただし、毒針を打ち込むためには、獲物の体に触れなくてはならす、これにはかなり苦戦しているようであった。また、かりに打ち込みに成功しても、毒針のかえしが小さいことと、毒が効くまでに時間がかかるために(5分程度)、暴れられると容易に針から獲物がはずれてしまった。これでは、狭い水槽内なら問題はないが、広い海の中では、せっかく毒針を打ち込んだ魚もどこか遠くへ流されてしまい、「骨折り損のくたびれもうけ」になってしまうこともあるだろう。(続く)

事務局より:吉葉さんによる図解は奥谷喬司編著「貝のミラクル-軟体動物の最新学-(東海大学出版会)」の中に紹介されています。


No.008(4/24/01)

ウミガメ速報01-03(4/18)より、原文のままご紹介します。

久米島イーフマリンホリデーの小川真司さん(4/13発信)

 4/12、イーフビーチにアカウミガメが上がり、まもなく引きつるように死んだそうです。解剖したら胃や腸の中からウミヘビが10匹くらいも出てきたそうです。食べたウミヘビに胃の中を噛まれたのではと噂されています。イーフビーチ前はイノーの砂地で、今の季節は産卵に集まったウミヘビ達の集会所のようになっているのでここに入りこんで食べたのでしょう。私も昔よく潜りましたが水面から5〜6匹見えることもあるほどウミヘビが多くて気持ち悪くなるような所です。最近、色々なポイントでアカウミガメが見られるようになりましたが、あまり近寄ってきません。一瞬見に来るのですがすぐに行ってしまいます。

事務局より:潮が引くと、岸より数百メートル以上沖にサンゴ礁が岸と平行に帯状に干出しますが(これを前方礁原といいます)、それより岸側に拡がる浅いプールのことを礁池といい、沖縄方言ではイノー、イナーあるいは、イヌーといいます。高橋達郎著「サンゴ礁」(古今書院)を参照。
 また、「ウミガメ速報」とは、日本ウミガメ協議会の会員と事務局を結ぶニューズレターです。


No.007 (4/10/01)

マリン・パビリオン 30(3)より
(串本海中公園センター発行)

野村恵一
「エビ網で混獲された珍しいヒトデ類と温暖化」

 串本町周辺では秋から春にかけてイセエビの刺し網漁(エビ網)が行われ、その網に混獲された生物は、水族館での展示や研究に利用されています。このレポートは今季のエビ網に混獲された珍しいヒトデ類に関するものです。
 ジュズベリヒトデとミナミジュズベリヒトデは、サンゴ礁に生息する小型のヒトデで、当地においてこれまであまり採集されたことはなかった種なのですが、今季は多く採集されています。
 オオフトトゲヒトデという、西太平洋の浅いサンゴ礁域に広く分布し、これまで日本での記録が非常に少ない種も採集されています。
 非サンゴ礁域である串本における、このような熱帯種の増加は、温暖化の指標になるということです。


No.006 (4/2/01)

海中公園情報 130(Jan. 2001)より
(財団法人 海中公園センター発行)

野村恵一・富永基之
「高知県大月町尻貝海岸におけるヒメシロレイシガイダマシ対策と駆除指針」

 高知県大月町尻貝海岸では、1989年にヒメシロレイシガイダマシ(サンゴを食べる巻貝)が大発生し、多くのサンゴ(ミドリイシ類)が食害を受けました。その後、サンゴの分布調査、貝の生態調査に基づく計画的、継続的な駆除が行われました。その結果、現在でもサンゴ群落は保全されています。しかし、貝の密度は依然として高く、被害収束のめどは未だ立っていないのが実情です。これらの経験をもとに、今後の駆除指針として、早期に異常を発見し、早期に対処することができる体制づくりが重要であると指摘されています。
 大月海域では、1996年にパークボランティアが組織され、保全体制が確立されつつありますが、課題も多く残されており、機能的、恒久的な体制づくりを目指し、多くの人々の努力が続けられています。


No.005(3/25/01)

西日本新聞 2001/02/12朝刊 「変わりゆく九州の海」より

 九州大学の野島 哲博士(本協会評議員)が1975年から継続している天草での研究が紹介されている。最近の5年間に天草でのテーブルサンゴの生息場所の急激な北上が確認され、海藻植生の減少も同時に進行した。天草南部の牛深と北部の富岡の2月の平均表面水温は、'55年にはそれぞれ、14.7℃と12.4℃だったものが、'95年には、15.7℃と13.7℃に上昇していた(長崎海洋気象台の水温データ)。テーブルサンゴの分布を決定する最低水温の13℃を越えたことから、こうした北上が起こったと考えられるそうだ。さらに、長崎海洋気象台の水温データでは、天草だけでなく、石垣、那覇、名瀬、女島、厳原なども同じ傾向を示しており、東シナ海全体で、平均最低水温の上昇傾向が確認されている。


No.004(3/21/01)

海中公園情報129(Nov. 2000)より
(財団法人 海中公園センター発行)

近藤鉄也、他
「八重山諸島、黒島「西の浜」におけるウミガメ類の上陸産卵状況(1991-2000)」

 八重山海中公園研究所では、1978年よりアカウミガメ、アオウミガメ、タイマイの上陸・産卵状況に関する継続的な調査が行われており、データの蓄積は20年以上に及ぶそうです。その成果は一部すでに報告されていますが、今回は1991年から2000年までの結果をまとめたものです。
 この報告では、アカウミガメの産卵回数(1年ごとの、のべ産卵回数)が減少しており、国内の他の産卵地においてもアカウミガメが減少傾向にあることから絶滅の危機に瀕していることが示されています。アオウミガメの産卵回数については、増加の傾向にあるそうですが、このことが水温の上昇と関係があるかもしれず、単純には喜べないことが指摘されています。タイマイについては、10年間で12回の産卵が確認されていますが、1978〜1990年のデータに比べると減少しているそうです。


No.003 (3/5/01 )

YNAC通信 No12(2001.1.1)より「水面下の世界」を抜粋して紹介。
(屋久島野外活動総合センター発行)

「屋久島自然クラブ2000」の記録
「ミラクルナマコ」・浜崎宏美
ナマコの消極的世界観やキャッチ結合組織などナマコへの愛が溢れるエッセイで、面白い。
「屋久島のチョウチョウウオ科魚類」・松本 毅
死滅回遊型を含め、4属34種の報告です。居るものですね。
「研修レポート。対馬編・霧島編」
「小杉谷のマムシ」等。


No.002(3/1/01)

マリン・パビリオン 30(1)より
(串本海中公園センター発行)

宇井晋介
「錆浦定置観測2000年のまとめ」

 1974年より2000年まで続けられている気温、水温、塩分濃度、降水量、水中透視度の測定値から求められた平均値が平年値として2000年の測定値と比較されている。
 気温:ここ数年の暖冬傾向とは異なり、平年並みに寒い冬となった。年平均値は、17.3℃で、対平年値は-0.5℃。
 水温:気温と同じく、平年並みに下がった。年平均値は21.2℃で、平年値と同じ。
 塩分濃度:黒潮がやや離岸傾向。集中豪雨の影響もあって年平均34.9‰、対平年値は-0.1‰。(その他は略す)
 長らく続いた高水温傾向により、生物相に多くの変化が見られている。増加したのは枝状ミドリイシ類、ヌメリトサカ、ソラスズメダイ、ヒメシロレイシガイダマシなど。高水温だけでなく、2年間、台風の来襲から逃れたことも一因と見られるそうだ。


No.001(3/1/01) 

マリン・パビリオン」29(11)より
(串本海中公園センター発行)

野村恵一・福田照雄 
「串本のサンゴ群集 (1)串本のサンゴ群集の特異性」 

 日本国内のサンゴ礁では、1970〜80年代のオニヒトデによる食害から回復してきたが、1998年の高水温による白化現象により再び大きな打撃を受けた。真のサンゴ礁域の北に位置する串本のサンゴ群集は、オニヒトデや白化の打撃を受けずにこの30年間、安定していた。しかし、最近、ヒメシロレイシガイダマシによる食害が目立ち始めている。また、高水温の影響から、枝状ミドリイシ類が増加し、本州初記録種が続々と発見され始めているそうだ。以下、連載中。


 

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