AUNJ WORKSHOP 2 - 6

このコーナーは、みんなで作り上げていく新しいコーナー です。

「紛らわしい魚達−6.コガネスズメダイ類」 
平田資料 01/19/04 開始
加藤資料 01/20/04 開始

 加藤さんのキホシスズメダイの産卵記事を作っている間に、キホシとキビレの幼魚の差を確かめようということになり、それを2−5で紹介しました。さらに、キホシやキビレの幼魚はコガネスズメダイ類の幼魚とが紛らわしいぞと話は紛糾し、今度はコガネスズメダイを見直してみようじゃないかということに発展しました。

 コガネスズメダイには2タイプあるということをお聞きになった方も居られるかも知れません。しかし、平田さんと加藤さんは、3タイプあると言い出したのです。尾鰭のみ白、腹鰭のみ白、全身黄色の3タイプです。しかし全身黄色というのは、かなり初期の幼魚では共通するとみなされました。現時点では、尾鰭が白く、腹鰭は黄色の成魚と、尾鰭が黄色で腹鰭が白い成魚の2タイプに分けておくのが妥当ではないかなと言うことになり、この成魚の2タイプに繋がる幼魚、未成魚を整理してみようと考えました。ご両人のフィールドはかなり離れています。また、これら2タイプもサイズを追いながら、慎重に比較する必要があります。また、その産卵生態についても比較するべきです。

 ここでは、高知県大月町と八丈島とでの記録から、それぞれの場所別に、2タイプの成魚と産卵シーンを示します。次に、それぞれのタイプと推定される個体を幼期からサイズ順に並べます。お二人の素晴らしい写真をご覧下さい。

関連BBS:1854


高知県大月町:平田智法

成魚の2タイプ
A:尾鰭のみ白:日本でいうコガネスズメダイ、浅場から深場まで。
B:腹鰭のみ白:体高がやや低い。深場のみ

Bタイプでも成魚となる前には腹鰭がやや黄色のことがあるようです。
幼魚・若魚期では特に腹鰭前縁の色彩を重視すべきではないでしょうか?

両タイプはしばしば同じところ(ごろたの駆け下り・ごろたと砂地の境目付近・岩礁域と砂地の境目付近)で観察されます。

タイプの判断に苦しむものもあり、末尾に紹介します。

                            平田智法


成魚 

Aタイプ(成魚の尾鰭は白く、腹鰭は黄色) Bタイプ(成魚の尾鰭は黄色、腹鰭が白い)

○0795-35 

○1079-019 12cm TL
高知県大月町 水深9m サンゴ・ごろた石帯:産卵行動。
雌雄とも通常体色。観察した20分間、同じ雌雄が産卵を繰り返した。産卵と放精は同時であったり放精が数秒後だったりした。雄が産卵中の雌の頭部をつつく行動を繰り返した。
1回の産卵は数十秒で終わり、その後雌は岩陰で待機、雄は放精や卵へのファニング、口で水流を与えることを繰り返す。1分ぐらいのインターバルで再び雌が出てきて産卵を繰り返した。16:10〜16:30
高知県大月町 水深35m ごろた石帯:卵保護中の雄、(不完全?な)婚姻色と思われる体色がやや淡く変化したところ。


幼魚〜未成魚

 Aタイプ(成魚の尾鰭は白く、腹鰭は黄色) Bタイプ(成魚の尾鰭は黄色、腹鰭が白い)

○0831-04 3cm TL 

○1037-10 2.5cm TL 

高知県大月町 水深15m ごろた石帯:尾鰭、腹鰭とも黄色 高知県大月町 水深35m ごろた石帯

○0835-20 3.5cm TL 

○0777-18 3.5cm TL 
高知県大月町 水深25m ごろた石帯:尾鰭、腹鰭とも黄色 高知県大月町 水深45m ごろた石帯:腹鰭軟条部が淡黄色・前縁は青白色胸鰭基部上端に黒色斑出現

○1014-15 4cm TL 

○0813-13 4cm TL

高知県大月町 水深35m ごろた石帯:尾鰭はほとんど白色へ、腹鰭は黄色 高知県大月町 水深44m ごろた石帯:腹鰭軟条部が淡黄色・前縁は青白色胸鰭基部上端に黒色斑

○1105-010 4cm TL

1105-010:

○0838-13 6cm TL 

高知県大月町・水深20m・転石帯
尾鰭が成魚の白色に変わるフェーズと思います。
高知県大月町 水深45m ごろた石帯:腹鰭軟条部が淡黄色、前縁は青白色

○0935-04 5cm TL 

空白
高知県大月町 水深45m ごろた石帯:尾鰭白色、胸鰭基部上端に黒色斑

疑わしいもの

○0821-13 2cm TL

0821-13 2cm TL 高知県大月町 水深40m ごろた石帯:
腹鰭前縁の色彩からBタイプの可能性が高いと考えます。



○0650-17 2cm TL


0650-17 2cm TL 高知県大月町 水深22m ごろた石帯ヤギ類:腹鰭色素未発達の
可能性がありどちらの幼魚か判断出来ません。



○0861-14 4cm TL


0861-14 4cm TL 高知県大月町 水深45m ごろた石帯
Bタイプとするには体型や尾鰭の黄色の入り方にかなり違和感があります。


八丈島:加藤昌一

Aタイプは水深15m〜35mの緩やかな斜面もしくは平坦な場所で、砂地際のパッチ上の根や砂地際の根に住む。普段は中層域を単独もしくは複数匹で群がっている。5月〜7月が繁殖期。雄は生息環境内の根の上、パッチ状の根の側面に産卵床を形成する。雌は尾鰭のみが乳白色で、この色彩はどんな状況になっても変わることがない。一方、繁殖期の雄の尾鰭は乳白色から黄色へと変化が激しく、時に全身が白くなることもある。この色彩の違いから繁殖時期のみ雌雄の識別が容易となる。kogane_10.jpg を参照。

Bタイプは水深30m以深の深場で単独もしくは複数匹で群がる。普通種。
全長は10cm前後とAタイプより二回り小さい。潮通しの良い切り立った岩礁の側面などで見られ、明らかにAタイプとは生息環境が異なる。
産卵は今後の観察課題。


成魚

Aタイプ(成魚の尾鰭は白く、腹鰭は黄色) Bタイプ(成魚の尾鰭は黄色、腹鰭が白い)

kogane_14.jpg 14 cm TL

kogane_12.jpg 8 cm TL
10/23/1999  14 cm TL  水深25m 06/05 /2003 8 cm TL 水深50m

kogane_10.jpg

kogane_13.jpg 8 cm TL
06/03/2003 14:23 ナズマド、水深35m、水温23.1℃
産卵前のナズリング、左の白い方がオス
06/05/2003 8cm TL 水深50m

幼魚〜未成魚

Aタイプ(成魚の尾鰭は白く、腹鰭は黄色) 

Bタイプ(成魚の尾鰭は黄色、腹鰭が白い)

kogane_15.jpg 4cm TL

analisyg_b_2.jpg
10/09/1999  4 cm TL 水深18m
頻繁に見られる幼魚。写真で見られるように、尾鰭は乳白色とはなっていませんが、縦長の黒目になりかけているのが分ります。
データ待ち

kogane_16.jpg 8 cm TL
 

kogane_17.jpg 3.5 cm TL
06/12/2003 8cm TL 水深30m 尾鰭が乳白色で縦長の黒目になっている個体 06/29/2003 局長浜 3.5 cm TL 水深45m 

空白

kogane_21.jpg 7cm TL
06/29/2003 局長浜 7cm TL 水深45m

  *事務局注:黒い瞳の周り(虹彩)の上下に黒い色素が出ており、
        虹彩全体が黒くなれば、大きな黒目に見えます。

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