事務局より
タテヤマベラは、かなり古くから知られている魚なのですが、見たことのある人は相当に少ないのではないかと思います。僕も見たことがありません。しかし、図鑑の図や写真が強烈に頭に残っていて、石田さんから届いた写真を見て、「あれ!こりゃ、あれじゃない?!」と思った次第です。今は冬眠していて、春にまた姿を現してくれることを楽しみにしています。
Nguyen Tri Thuc 博士が1974 年に提出されたベラ類の骨学的検討の学位論文ではヒラベラ亜科に含めており、テンスモドキ類(Xyrichtys)よりテンス類(Iniistius)に近いと考えていますので、テンスの仲間と言っても良いのでしょうかね。しかし、謎の多い魚であると思います。初めて見た人は、ベラと思うでしょうか?アマダイ、キツネアマダイ等と考える人もいるでしょう。正直、久しぶりに興奮しました。
生態写真は「日本産魚類生態大図鑑」に益田 一氏が伊豆で撮影された全長5cm のものが
紹介されています。ここでの写真に較べると緑色が強いですね。生息環境でかなり色を変えるのだろうと思います。
この魚について情報をお持ちの方は是非、お寄せ下さい。お待ちしています。
備考
Genus Cymolutes インドー太平洋から3種が知られている(Schultz, 1960)。
Cymolutes torquatus (Valenciennes) タテヤマベラ
1930年に館山湾より採集され、未記載種として記載される(Sakamoto, 1930)。
その後、本種にはCymolutes lecluse (Quoy and Gaimard) の学名が充てられていたが、
この種はハワイ諸島の固有種である(Randall, 1986)。全長 20 cm に達し、オスは
胸鰭の上に黒い斜帯を持つ(Myers, 1999)。
また、Cymolutes praetextatus (Quoy and Gaimard) はインドー太平洋に広く分布している。Myers
(1999) に依れば、C. torquatus と C. praetextatus とは分布域がかなり重複しており、前者は背鰭軟条が12(後者は13)、尾柄上部に黒点を欠く(黒斑あり)点で識別できるという。
C. praetextatus が日本から報告される日は来るのかな?
Myers, R. F. 1999 Micronesian Reef Fishes.
Nguyen, Thuc Tri 1974 Osteological studies on the labrid fishes
(family Labridae) of Japan. (学位請求論文:東京大学海洋研究所)
Sakamoto, K. 1930. Report of the biological survey of the Tateyama
Bay I. Description of a new wrasse-fish, Cymolutes tateyamaensis
n. sp.
Jour. Imp. Fisher. Inst., 26 (1): 11-13,fig 1.
Schultz, L. P. 1960 Fishes of the Marshall and Marianas Islands.