イトヒキベラ Cirrhilabrus temminckii
本種の分布域は本州中部以南、生息水深は数m〜50mと広く個体数も多いため、幼魚においても本属中で最も観察する機会が多いものと思われる。なお、沖縄には色彩の異なるタイプが見られる。
○四国西南部のデータ
出現状況:産卵期は4〜12月である。
幼魚は水深数mから40mのサンゴ域・死サンゴ域・転石帯・礫域・ガレ場に、着底直後と思われる1.2〜1.3cm TLの個体は7月から12月に、3cm
TL以上の個体は周年観察された。しばしばクロヘリイトヒキベラ・ツキノワイトヒキベラ・クレナイイトヒキベラ・ピンテール・クジャクベラ・カミナリベラの幼魚と一緒に観察された。
水中での色彩:2cm TL以下の体色は一様に暗色で尾柄部の黒斑は識別できない。2cm TLを超える個体はやや赤っぽく見えることもあるが、ほとんどが暗褐色で成長に伴い頭部に黄色味を帯びる。
水中写真での色彩:浅いところで撮影された個体の体色は褐色、深いところの個体は赤色の傾向があった。尾柄部の黒斑は小さい個体程大きく(体長比)、12mm
TL では尾柄部をほぼ覆う。この黒斑は4 cm TLぐらいの個体まで観察される。3cm TL以下の個体ではこの黒斑中に青色の顆粒状斑が多数見られる。吻端は白色から黄色、または赤色。虹彩は赤色であるが内側がわずかに黄色のことがある。
類似した幼魚:小型の幼魚はクロヘリイトヒキベラに似るが、本種の方が体高が低い。また、尾柄部黒斑中の顆粒状斑はクロヘリイトヒキベラでは淡青色。クレナイイトヒキベラ2cm
TL以下の幼魚が本種に似る可能性があるが、情報不足のため断定できない。