FIELD NOTE No.4

FIELD REPORT はあるテーマに添って長期観察したレポートですが、このコーナーはある日の出会いといったものを出していただいています。たった一回の観察だからなんて思わずにどうぞお寄せ下さい。あるちょっとした出会いから発展していくことも多いと思います。

ホタテウミヘビの捕食 塚本ひとみ
 03/22/04

関連BBS:1995

 数年前、富戸でホタテウミヘビが日中捕食するのを見ました。ちょっと興奮しました。
 家で調べると、I.O.P.ダイビングニュースのバックナンバーに出ているのがわかりました。

 「昼間に観察されたホタテウミヘビの捕食行動」(1997年2月20日発行のI.O.P.DIVING NEWS 第8巻第3号)です。
 あれ、私が見たのとちょっと違うなと思いました。
 末尾に「・・・観察例や文献などご存知の方は是非ご連絡いただきたい。」と書かれていたので、連絡しようかなと思う一方、当時ですでに3年前の報告だったため今更という気がしたし、それに素人ダイバーが偶然見かけただけの写真もなにもない記録だしと気後れして結局は連絡しませんでした。

 I.0.P.ダイビングニュースを読み返すと、そのレポートはなんと余吾さんのものでした。 あらまあ、なんという奇遇。というわけで、ここで報告することにしました。少し恥ずかしいのですが、ログブックに書いたものが以下のとおりです。
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2000.6.11(日) 富戸 ヨコバマ 
天気 雨
水温20-21度
透視度 12m
最大水深 20.3m
潜水時間 8:55〜10:14(79分)

ホタテウミヘビ ウロウロ〜カイワリ付
 頭から砂につっこんでカニ(?)をとってくう。

 いつも頭しか出していないホタテウミヘビ。
きょうは全身でていた。背びれの前端は黒っぽく、ミナミホタテ・・・ではなく、ホタテウミヘビとわかる。
 尾の先端は硬そう。まさに「しっぽはドリル」
 いつも見ている頭のところと胴体の皮膚はちがい、胴体はツルツルしているよう。
 鼻を地面にこすりつけにおいをかぐようなしぐさで泳いでいる。
 何かかぎあてたのだろうか。その場で止まる。少しうしろにさがったかと思うと、ヘッドファーストで砂地にもぐりこむ。バタバター!と尾を動かす。
 出てきたら口にカニのようなものをくわえていた。ハグハグと食べたら、また動き出す。
 4回ほど食っていた。アサヒガニは食うのか?

 ログは以上ですが、わかりにくいので補足します。

○場所は砂地で水深12〜16メートルのところ。なだらかな砂地が急に深くなる前の肩のところです。
 ダテハゼなどが多い岩場に近い砂地から離れ、クサハゼがいる深めの砂地からも離れ、共生ハゼはいなさそうなところ。
○時刻は9:30頃です。
○ハハハ I.O.P.ニュースには尾で一回探ってから潜ると書いてありましたが、私が見たときは、いきなり頭から突っ込んでいました。
○ハハハ 砂の中の物が何でわかるのだろう?と不思議でした。においでもかいでいるのかなあ?と思って見ていました。
○ハハハ 砂から出たあとのホタテウミヘビの口から、カニのような脚がものがはみだして見えました。2回目以降の獲物は小さいためか見えませんでした。
○ハハハ 砂に潜るときには頭はほとんど垂直方向でした。
○ハハハ 誰が言い出したのかは知りませんが、富戸では、ホタテウミヘビがアサヒガニを食べるというまことしやかな話がありました。ホタテウミヘビが頭を出している場所とアサヒガニがいる場所が近いこと、アサヒガニのばらばらになった殻がたまに見つかることから推理した人がいたようです。
 でも、その捕食シーンを見たという話は聞いたことがありませんでした。本当かなあ?と私は疑いつつも、アサヒガニを食わないかなあと期待して見ていたのも事実でした。
○ハハハ その後、ホタテウミヘビは水深の深いほうへ泳いでいったので、ダイビングの後半だった私はあきらめ、見送りました。
○ハハハ このような砂に頭を突っ込んでいるシーンに出会ったのは、このとき1回のみでその後ありません。
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 もう4年前の話です。古いログブックを読んで、あれこれ思い出してみました。
 ホタテウミヘビも、私にとって、わからないことだらけです。砂に潜っているとき、体はまっすぐ牛蒡みたいになっているのかな?ぐにゅぐにゅ曲がっているのかな?
 オスとメスはどうやって知り合うのかな?
 小さいときはどうしているのかな?鉛筆みたいなホタテウミヘビ見つけたらかわいいだろうね。
 ところで、何がホタテなんでしょうね。
 知りたい気持ちがある反面、こうしてああかなこうかなと想像(妄想?)するのも楽しいひとときなのでした。

事務局より:I.O.P. DIVING NEWS にこの記事を出しました。僕が見たのは、長崎県上五島の新魚目と言うところの浅い砂底で、その一度きりです。この時は、尾でアナの中を探ってから、一旦、外に出て、それからUターンし,頭から潜り込んでハゼ?を喰うシーンでした。餌生物や穴によって行動を替えるのかも知れません。平田さんからこんなお話を聞きました。この仲間が釣り針に掛かると、船の上で激しくもがくので、糸が絡んで始末に負えないそうです。そこで、漁師さんは、出刃包丁の背で尾を強く叩くのだとか。そうすると、あえなくダウンするそうです。

I.O.P. DIVING NEWS に記事を出すと反応があるものもあり、無いこともあります。オトヒメベラの分布(Vol.11. No. 2)については、南紀串本でも定置網で採集された例が知らされました。アオリイカの隠蔽行動(Vol.8. No. 7)では、同じく串本での観察例が友人の福田照雄さんから届きましたし、平田さんご夫妻からも、高知県での観察例をお聞きしました。しかし、ホタテウミヘビ(Vol.8. No. 3)についての関連情報は塚本さんが初めてで、とても嬉しくなりました。

もうすぐ、瓜生さん、石田さんとの共著で、キタマクラの産卵行動が印刷に廻ります。これへの反応はどうか?楽しみです。

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