FIELD REPORT- 9
アマモの爆弾ニ勇士
  石田根吉 04/02/04

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アマモの爆弾ニ勇士
          石田根吉

 さて、「富戸から絶滅せんとしているアマモをこのまま放っておいていいのか!?」
と声高に叫ぶ訳ではないのですが、

 「何だかこいつは新しい遊びのネタになりそうだ」という匂いがして、アマモの増殖を考えてみました。そこで、余吾さんと山本正之さんに相談した所、

 「一番てっとり早いのは、他所からアマモを移植してくる事」

との事でした。でも、そうなると、移植元の漁協との交渉も必要となりますし、そこのアマモ場へのダメージも考慮しなくてはなりません。これは僕には荷が重過ぎる仕事です。そこで、富戸の定置網漁の漁師さんである友竹昇さんにお願いしてややこしい手筈をすべて整えて頂きました。友竹さんも丁度同じ時に、幼魚育成場としてのアマモ場に思いを致していた時なのでした。ちなみに、友竹さん自身もダイバーであり、富戸ではいつも遊んで頂いております。

 さて、移植元は、同じ伊東市漁協に属する川奈からという事になりました。地元の方のお話では、ダイビングエリアから少し外れた所にアマモはゴッチャリあるとの事。さあ、こうして、川奈の海岸に「アマモの爆弾ニ勇士」は降り立ったのでありました。ブルルと武者震い。

 ところが、伺った辺りの海域を二人でかなり泳ぎ回ったのですが、想像していたような「一面アマモの大草原」といった場所はなく、下の写真にあるような3mほどの群生地が点々とあるだけでした。川奈の海でもアマモの生息域は一気に減少しているようです。


図1 川奈のアマモ場

 また、川奈ではアマモは水深6〜7mと思ったより深い場所に生えているのが印象に残りました。それより浅い場所は岩礁域で紅藻類に被われていました。

 さて、アマモは数株が地下茎で繋がっているのでどのように掘り出してよいのかよく分かりません。そこで、手で扇いで砂を払い飛ばし、数株の根が露出したところで採取し、プラスチック・ケースに収めて運ぶ事にしました。


図2 砂を払う作業

図3 アマモの露出した根

 ちなみに、この作業中、アマモ場のすぐ傍に下の写真の様な双葉が点々と生えている場所があるのに気付きました。これはどう見ても海藻ではなく海草のようですが、アマモとはちょっと別物に見えます。そこで、表面の砂を払ってみると、やはりアマモ同様、地下茎で繋がった構造をしていました。


図4 川奈のウミヒルモ

 これはウミヒルモという海草で、ここから成長して背が高く成るわけではないそうです。これも、富戸の海では見た記憶がないものです。すぐ近所でありながら、やはり環境が違うんですね。

 さて、富戸に持ち帰った苗をどうして植えるかです。植えた後に流されない様に、割り箸にくくり付けるとか、おもしを乗せておくとかいろんなアイデアが出たのですが、どれも自信が持てず、取りあえず今回はそのまま植えてみる事にしました。岸からすぐで日当たりのよさそうな水深2〜3mの場所を選びました。

 スコップで10cm程掘ってから出来るだけ根を広げた形で埋めようとしたのですが、なかなか上手くいきません。掘った穴はすぐに崩れて来るし、根はこんがらがってきます。更に、砂がもうもうと舞い上がって目の前が見えなくなってとなかなか辛い作業でした。あたふたと砂を被せたという格好になりました。


図5 新しい富戸のアマモ場

 が、とにかく見た目にはそれらしいミニ・アマモ場が出来ました。腕組みして、明るい日差しの中で揺れる小さな草原を見下ろし、我らニ勇士は大きく頷くのでありました。う〜ん、自己満足。さあ、これから花は? 実は?

 どうか、元気に育ってくれますように。

事務局より:あーだ、コーダと言わないで(少しは言っているけど)進めていくのが実に憎い!!
「生物学は行動だ!!」。岡本太郎ではありませんが、そう思います。先ず、生き物を見て、手にとって、それから、文献ですよね。勿論、文献を読むのも大切ですが、文献と実際の対比が欠かせません。
さあて、この後、どうなりますか根。

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