LET'S STUDYING 
セダカを考える−6 05/01/03 開始

 八丈島のセダカスズメダイで幾つか気になることがあります。東伊豆富戸での石田さんのリポートとも深く関係します。生物の世界で標準ということはないかも知れませんが、「これは一体?」と思うのは、「標準」がすでに頭の中にあるのかも知れませんね。

セダカを考える−6 八丈島のセダカ 05/09/03 更新
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FIELD REPORT-1

 先ずは、加藤さんのメールから

4/26 底土の観察個体が産卵している最中でした。
産卵は午前中に終了し、午後は雄が守っていた。クラッチは三つで今回の産卵は三回目、反時計回りで形成されている。ガイド中なのでおおよそしか答えられないことが多いです。今回の産卵は11:30頃に見つけた時は既に産卵中で、帰り(11:50頃)にも寄って見た時もまだ産卵中で、卵の数もそれほど進んでいない感じを受けたそうです。その事を頭に置いた上で写真からでもわかるようにクラッチの状態は見つけた時点でかなり終わりに近いような状態と思われ、少なくとも1時間近くの時間がかかっているような感じがします。
雌の個体は尾鰭先端がうっすら黄色く染まるタイプで、雄は浅場で見られるタイプです。

観察日:2003年4月26日;場所:八丈島底土;水深10m;水温:21℃
観察時間11:30〜11:50;長潮 上げ三分

ゲストにデジカメ画像を貰いました。
T.Kは小西徹さん、H.Kは喜々津仁密さんです。以下の5枚の写真は全て、この日に同じオスの産卵床で、ほぼ同時刻に撮影されたものです。この時のガイドは原崎さんです。

 

写真1 産卵中のペア(黒い方がメス)


写真2 産卵中のペア(白っぽい方がオス)、産み付けられたばかりの卵は薄緑色。
3クラッチあるそうだが、写真からは古い2クラッチは見にくい。


写真3 産卵中のペア(メスの方がやや大きい)


写真4 保護中のオス。3クラッチある。


写真5 3つのクラッチ。左が新しいクラッチ(写真2,3とやや色が違うが、
これは撮影器材の差でしょうか?)で、反時計回り。

事務局より 05/01/03
えっ!午前11時30分に産卵????
これは意外でした。鹿児島県枕崎における幸田さんの報告では、早朝産卵とされています。オスとメスは違う場所に採食縄張りを持ち、海藻を守っています。
オスはメスを見つけると、頭部と尾部の背中側をクリーム色に変え、誘い込むといいます。昼間でもメスを見つけると、オスはこうした体色変化を起こし、メスを巣に誘うそうです。しかし、メスが産卵するのは早朝に限られます。産卵は40分ほど掛かり、メスが産卵している間は、メスの採食縄張りは無防備となります。そこで、メスは藻類食の魚達がまだ寝ている早朝に縄張りを出て、オスのところへ移動し、産卵するのです。
 東伊豆富戸での
FIELD REPORT-1でも産卵は早朝です。

正午近くの午前中に産卵が行われるのなら、違う状況があるのでしょうね。

それは採食なわばりに関係すると思われますが、具体的にはどんなことでしょう?また、思いもよらないことがあるのかな?また、卵の色も富戸とは違うようです。これは餌(海藻の種類)に関係するのかな?現在もチェックが進められています。


加藤さんと原さんより続報です 05/09/03

写真6 4/30 の産卵床の様子(撮影:原 多加志)

4/30 14:20頃 底土 水深10m、水温23℃ 全長12cm前後
Cの場所が前回26日に産卵していた場所。30日段階でAの場所が孵化していてなくなっているのでABC順に産卵していることが分る。クラッチは反時計回りと石田さんの報告と同じです。
しかしその後L字の対面の岩肌にED順に産卵している。
八丈のセダカスズメの密度が高いためか、原さんの言うように亀裂やちょっとしたすき間に産卵床を持つ個体が多い。もっとも岩の側面の広い場所を使っているセダカも存在します。
それと産卵時間ですが、底土の定点観察個体は午前中に産む傾向があり、過去にも何度か観察しています。
でも、他の個体群の状況を見ると早朝が基本のように思うのですが、何せ朝見に行かないんでハッキリしたことは言えません。

ここで、次の写真7を見て、上の写真とオスの体色を見比べて下さい。


写真7 深場で卵保護中のオス(撮影:原 多加志) 

4/29 八丈ナズマド 水深15m 水温21℃、全長13cm、産卵床で卵を守っていました。クラッチはまだ一つでした。ヒトデが卵の場所を歩こうとしたので排除しているところです。代表的な深場タイプの雄ということです。


事務局より 05/09/03
産卵床、クラッチの位置、卵色、産卵時刻など、面白い観察項目は多いですね。また、オスの体色も水深で異なるそうです。八丈では随分と深いところまでセダカが住んでいますね。また、メスや幼魚の体色は水深でどう違うのかな?写真1〜3ではオス、メスが並んでいますが、地色の濃淡は産卵中だけの雌雄差でしょうか?まだ、未解決の他の問題もあるので、体色の違いについては「セダカを考えるー7」で、特集してみる予定です。

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