FIELD NOTE No.6

FIELD REPORT はあるテーマに添って長期観察したレポートですが、このコーナーはある日の出会いといったものを出していただいています。たった一回の観察だからなんて思わずにどうぞお寄せ下さい。あるちょっとした出会いから発展していくことも多いと思います。

 石田根吉 どれも寄生虫なの? 05/26/05
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「眼の上の・・・?」
  

 以前、キンセンイシモチのドット型とライン型の話題の中で、田辺の仮屋さんからキンセンの体からぶら下がっている白い紐状のものについてのお話がありました。そして、これは寄生虫ではなかろうかという所まで発展しました。

 → キンセンイシモチ類 の仮屋さんの追加情報の項を参照して下さい。

僕もこの白いリボンはクロホシイシモチなどでしばしば目にしていましたが、寄生虫だなどとは思っても見ませんでした。それどころか、生き物であるという認識すらなかったのです。と言うのも、動物という名にふさわしい動きが何も無かったからです。いつも魚からただぶら下がって揺られているだけです。やはり寄生虫には見えません。

そんな今年の1月、キタマクラからぶら下がっている白いリボンを見つけました。確かに、キタマクラでもこれまでこいつを見掛けた事は何度かあります。

01/21/05 富戸・ヨコバマ 水深18m 水温15℃ 
キタマクラは全長約7cm

改めて、「寄生虫では?」という目で見ると。 リボンはキタマクラの体表からぶら下がっているのではなく肛門から出ているように見えます。そして、明らかにリボンは2本あります。これは寄生性のカイアシ類のメスは長い卵嚢を二つぶら下げているのを連想させます。

「でも、本などで紹介されているカイアシ類は体表に喰らいつくタイプばかりだけどなあ」と疑問に思うものの、この時はここまででした。

そして、ここ1ヶ月ほどで一気に浅場に増えたクロホシイシモチの群を見ていた先週のこと。その中に混じっているネンブツダイがやはり白いリボンをぶら下げているのを見つけました。


05/22/05 富戸・ヨコバマ 水深7m 水温17℃ 
クロホシイシモチは全長約7cm

そこでしつこく追いまわしていると、ネンブツダイがプルプルッと体を震わせて逃げ出しました。その時、白リボンが矢印の付近でプツンッと切れたのです。僕は大慌てで、ポケットからビニール袋を取り出してそれを採取しました。そして、Ex後にそれを顕微鏡で見てみました。ちなみに、このリボンの表面には粘着性が少しあるらしく、顕微鏡下で位置決めをしようとするとあちこちにくっ付いて難儀しました。

これが白いリボンの正体なのですが・・う~ん、やっぱり訳が分かりませんねぇ。何かの抜け殻の細長い袋という風に見えます。またこの袋の中には何か青く輝く物が所々にあるようなのですが、その形をしっかり把握する事は出来ませんでした。更に、矢印で示した部分をはじめとして、何箇所かで体節(?)とでも呼んでよいような節が見られましたが、それも明瞭なものではありませんでした。

 結局、更に謎を深めてしまっただけでした。今度は何とか水中でこの白いリボンを引き抜いて遣りたいところです。

事務局より:キタマクラとクロホシイシモチとを見比べると、中身の充実感と言う点で違いますね。キタマクラの方はぎっしり、クロホシの方はペラペラ。それから、僕はキタマクラの方は尻鰭の根元付近に附着というか、根を生やしているように見えるのに対し、クロホシの方は肛門から漏れ出ているように思えます。

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