AUNJ WORKSHOP−7
AUNJ冬のセミナー」での発表をこの場で
紹介し、皆さんの反応をまとめます。

7-1スズメダイ類とサンゴ、海藻 会員全体 12/08/06 
7-2:「背曲がりスジハナダイの成長」 平山 昌 工事中
7-3:「ウマヅラハギがやってきた」 塚本ひとみ 12/19/06 
7-4:「水中でのホンダワラ類の見分け方」 新井章吾・余吾 豊 工事中
7-5:「
ハレムのようだが、そうでない社会 門田 立・余吾 豊 12/09/06
7-6:「
性転換する魚たち」 桑村哲生 12/11/06
7-7:「
行動のルール」 藪田慎司 12/11/06
7-8:「
セダカスズメダイのオスはクジャクの羽を持つのか」 石田根吉 12/12/06 
7-9:「
オキタナゴの出産に立ち会って」 塚本ひとみ 12/18/06 
7-10:「西表島網取湾におけるフタイロカエルウオ」 高木裕司 工事中

7-2「背曲がりスジハナダイの成長」平山 昌 工事中





7-3「ウマヅラハギがやってきた」塚本ひとみ 12/19/06

2006年6月に東伊豆富戸で見かけたウマヅラハギの行動を紹介します。
富戸のビーチダイビングエリアは砂地が広がっているせいかカワハギが多く、シーズンには容易に産卵シーンを見ることができます。
ウマヅラハギはほとんど見かけません。
ところが今年は、ウマヅラハギのオスの成魚がどこからかやってきました。
カワハギのオスやメスに勢いよく向かっていき、カワハギは逃げるということをしばしば目撃するようになりました。
平和な町にやってきて、男に喧嘩を売り、女にちょっかいを出しては嫌がられる西部劇に出てくるならず者のようです。

2006年6月4日(日) 水温18.7℃
場所 東伊豆富戸 ヨコバマ 水深15Mくらいの岩場に近い砂地
時間 9:30頃 
カワハギ♀が産卵床つくりをしていました。(口で砂をふうふう吹き、砂をほぐします。)そこへ♂がやってきて♀に近づくと、猛スピードでウマヅラハギがやってきました。カワハギ♂とウマヅラハギはくるくる回りながら中層をあがっていきます。また、ウマヅラハギに追われてカワハギ♂は逃げてその場を離れていってしまいます。(カワハギの♂同士のけんかと同じようです)


カワハギ♂はウマヅラハギが離れているすきに♀のところへ行き、♀の体を口でツンツンします。
そこにウマヅラハギがやってきても、めげずにツンツン求愛します。♀から少し離れては戻りしています。ウマヅラハギはそばにいます。


そして、カワハギ♀が産卵、横に並んで♂が放精となったそのとき、ウマヅラハギがカワハギ♂と反対側の♀の隣に来てカワハギ♂の放精と同じような行動をとったのです。つまり♀をはさんで一方にはカワハギ♂、もう一方にはウマヅラハギ♂が並んだのでした。


こういうのをスニーキングというのかな?種類がちがってもいいのかな?こういうことはわりにあることなのでしょうか。ウマヅラハギとカワハギのハイブリッド、ウマカワハギは果たして現れるのでしょうか?


7-8 「セダカスズメダイのオスはクジャクの羽を持つのか」 12/12/06
    関連記事:
セダカスズメダイの産卵
         
セダカを考える-1  セダカを考える-2  セダカを考える-3  
         
セダカを考える-4  セダカを考える-5  セダカを考える-6



石田さんの発表光景



























事務局より:まさに「大阪人の粘り」としか、いいようがないでんな。

7-9 オキタナゴの出産に立ち会って 塚本ひとみ 12/18/06

     関連記事:
魚類の胎仔



塚本さんの発表光景。とても楽しそうですね。

1 オキタナゴの観察を始めた理由

 魚は卵を産むものとばかり思っていたが、出産する魚がいると知った。しかも、卵から孵ったばかりの小さなのではなく、大きく育ってから産まれるのもいるという。それは、ウミタナゴやオキタナゴという魚で、いつも私の潜っている東伊豆の富戸でも普通にいる魚であった。
出産シーンを見てみたいと思い、観察を始めた。

2 1999年から2005年の観察

・5月中旬・下旬頃

おなかの大きなメスの群れ(30尾くらい)が浅場を泳いでいる。



中には子どもの尾が体から出ているのもいる。


この群れをずっと追いかけてみたが、出産するものを見ることができなかった。
一定の距離からダイバーを近づけてくれず、神経質な感じがした。

・6月上旬頃
子どもが見られるようになる。



その翌週くらいには子どもの大群が見られるようになる。



メスの群れはおなかがぺちゃんこになっている。(出産の終了と思われた。)

どうやら出産の期間は2〜3週間くらい。
週末ダイバーはこの間に潜れるのは多くて6日。今年も見られませんでした・・・が何年も続く。

3 2006年の観察

オキタナゴの♀の群れが見られるのは今年も同じところ。
水深6メートル以浅の岸に近い岩場。地図のAエリア。オキタナゴygのいる場所もほぼ同じ場所。
Aエリアの岩場と砂地の境あたり。Bエリア(三つ岩の先)。Cエリア(エキジット口)Dエリア(右浅場)



今年出産を目撃したのはB,Cエリア。幼魚の群れの上であった。

オキタナゴ(yg)の群れの上部に♀がやってきて産んでいた。





出産は、1尾ないし、2尾が尾から産み出された。

生まれたこどもはすぐに泳ぎだしたが、泳ぎださなかったこどもはミノカサゴに捕食された。
産んだ♀はこどもの群れから離れた。
出産前の♀には一定の距離以上近づけなかった。
なお、観察にはライトは使用しなかった。

事務局より:動画がありますが、未だ、準備が出来ていません。後ほど。


4 具体化された疑問

(1)♀が群れで泳いでいるときと、実際に出産するときの間には、どのような行動があるのか。
(2)いったん出産した♀はどこに行くのか。そして、次はどれくらいの期間をおいて出産するのか。
(3)そもそも産み始めは幼魚の群れは存在しないわけだが、そのときはどこで産むのか。

5 まとめ

 今回、念願のオキタナゴの出産を偶然にも目撃することができた。しかし、これで観察が一区切りではないことを改めて感じた。出産を見たことで、わからなかったことが具体的になった。見たことは、ゴールではなくスタートなのだという思いを強くした。
 具体化された疑問を少しでも解明するためにも来年も観察したい。
 失敗しながらも少しずつなぞ解きができて、なぞ解きができたと思ったらまた新たな謎ができ、見たいものが出てくる。だから、ダイビングは楽しいな、やめられないんだなと思う。  

6 写真・映像提供
石田根吉さん
柴沼糧子さん

7 情報提供
 柴沼糧子さん
   
8 参考文献(ウミタナゴ及びオキタナゴに関するもの)

・「魚のおもしろ生態学 その生活と行動のなぜ」塚原博著 講談社ブルーバックス 1991年 p.210-212.
・海中記 DAY OF MARINE LIFE」小林安雅著 福音館書店 1995年 p.93
・「日本の海水魚」山と渓谷社 1997年 p. 433. 
・「生態観察ガイド 伊豆の海水魚」瓜生知史著 海游舎 2003年 p.122-125. 
 

9 2006年の観察記録(ログブックより)と目撃情報。A,B,C,Dはポイント。

○5月28日(日)
@9:04〜10:04 水温17.4℃
オキタナゴ(yg)クロホシイシモチ(yg)と群れている。(B)
オキタナゴ(♀)の大群いる。
口をパクパクして1尾でうろうろしている♀を目撃。
A13:14〜14:17 水温17.7℃
オキタナゴ(yg)エントリー付近にも群れている。(C)
左の岩場に1尾で泳ぐオキタナゴ(yg)いる。
テトラポットに♀2尾。

○6月3日(土)
@8:51〜10:00 水温16.8℃
オキタナゴ(yg)がどっと増えている。(B)
おなかがぺちゃんこの♀の群れ
A11:39〜12:56 水温17.5℃
♀の群れいる。おなかの大きいのがたくさん。子の尾が出ているのもいる。
しばらくすると尾を出している♀とおなかがぺちゃんこの♀の2尾が群れから離れ海藻あたりに下りてきた。(耳抜けず見失う)
B14:54〜16:15 18.4℃
♀の群れ。浅場、海藻の上等浅いところ(水深4から7m)泳ぎ回る。
○6月4日(日)
@ 9:01〜10:12 18.6℃
三つ岩の先(Bエリア)(10:00頃)
yg大群の上に数尾(5,6)の♀。
子の尾の先だけではなく、尾柄部が出ている。2尾出ているのもいる。
近づきすぎると離れてしまう。(寄せてくれない)
1尾まもなくもう1尾と2尾続けて産む。産み終わった後、次に産まれる子の尾びれの先が出ている。
1尾のみ産むのもいる。
生まれた(yg)はすぐに泳ぎ出し、群れにまぎれる。
♀は、1ないし2尾産むと群れから離れてどこかへ行ってしまう。
ミノカサゴがそばにいる。
A11:41〜13:08 18.7℃
三つ岩の先(Bエリア)
ygの群れを見に行くが、♀は居らず。(11:50頃)
エキジット口付近(Cエリア)
ygの群れに♀。
まもなく1尾産む。
生まれてすぐに動かない子あり。するとすかさずミノカサゴがやってきてぱくりと飲み込む。
その後潜水した知人も同じ場所で出産を目撃(13:30頃)

○6月5日(月)10時頃。目撃情報(写真・映像提供の柴沼さん)
エキジット口付近(Cエリア)で、3尾の♀の出産が見られた。
 「1尾のもの、同時に2尾のものがあった」とのこと。

○6月10日(土)
@ 8:56〜10:13 水温19.4℃
♀の群れ。数は減った(10尾くらい)おなかが小さくなった。尾を出しているのがまだいる。
右の群れ(Dエリア)
群れにおなかがぺっちゃんこの♀が入っていく。出産確認できず。
A 12:11〜13:12 水温19.4℃
ygのみ
B 15:17〜16:08 水温19.6℃
エキジット口
ygの群れで♀待つも来ず。
6月11日(日)
@ 8:50〜10:10 水温16.5℃
ygの群れ
♀の群れ10尾くらい。おなか大きいのと中くらい(尾が出ている)とぺちゃんこ。



事務局より:ウミタナゴ類の発育段階について問い合わせがありました。

> 余吾さんのかつてのウミタナゴのメスのお腹を開いたお話では「胎仔」
> と書いてあります。これはお腹の中に居る間はずっとこの呼び名でよい
> のでしょうか。

受精が孵化して、そこから胎仔と表現するのはちょっと無理かな?孵化したばかりはやはり仔魚でしょうね。

いま、調べていますが、わかったことは

恒星社厚生閣の「魚類学(上)」では

「ウミタナゴの受精卵は卵黄を吸収して孵化し、その後、子宮内で栄養を吸収しながら成長する。全長5、5から6(7)センチになると稚魚の状態まで発育して出産される。」 

 補注:出産サイズはかなり違います。

ここでは稚魚という表現です。しかし後期稚魚期は体節形質が成魚と同じ数に達するまでと規定されていますので、産まれる前から既に定数に達している場合は少し矛盾します。

岩波講座「生物学」の「魚類・円口類・頭索類」(内田恵太郎)では

胎生魚類の出産される発育段階によって使い分けており(さすがや)、ヨロイメバルなどでは仔魚として出産、ウミタナゴは幼魚として出産されると書いています。

しかし、仔魚期、稚魚期に比べ、後期稚魚期以降の呼び方には厳密な線引きが難しく、これに拘るのもどうかなと思えます。塚原先生はお人柄でしょうか、一般書という本の性格からでしょうか、「魚のおもしろ生態学」では、「子供」と表現しています。彼らしいです。

僕は、ここでは、「幼魚」、「産まれたての子ども」、あるいは「おちびちゃん」と言うくらいが良いのではないかと思います。

故水江先生の論文を探していますが、その内でてくるでしょう。また、調べてみます。詮議が決着を見ないのですが、あしからず。